伝えたかった、言葉たち。 山崎怜奈の「言葉のおすそわけ」第53回
乃木坂46を卒業し、ラジオパーソナリティ、タレント、そして、ひとりの大人として新たな一歩を踏み出した山崎怜奈さんが、心にあたためていた小さな気づきや、覚えておきたいこと、ラジオでは伝えきれなかったエピソードなどを自由に綴ります。
photo : Chihiro Tagata styling : Satomi Urata hair&make : Hitomi Akiyama「人間関係」
あっという間に年が明けた。元日のお昼も「いつもと変わらない月曜日」としてラジオ番組の生放送を担当していたが、帰って数分後から震災の速報がテレビで報道され始め、翌日の生放送をどのようにお送りしようかと考えながら現実を受け止める、そんな年始だった。不安は見ないようにすると余計に増幅するので、人に少しだけ分けて持ってもらうつもりで友人とLINEで情報を共有しながら視聴を続けているうちに、心の重さがちょっとだけ和らいだ。その友人とも支え合いながら乗り越えた昨年を振り返ると、私は本音と建前を上手に使いこなせるほど器用ではない自分にようやく諦めがつき、あまり人の目が気にならなくなったし、自分を良く見せようと思わなくなった、そんな一年だった。
私はひとりでも楽しく快適に過ごせるタイプに見られやすい。実際、いわゆる「ひとり〇〇」のほとんどは抵抗なく実行に移せる。ひとりが平気だし、他人といるのも平気。でも、ひとりだと主観しかないから何かと記憶に残りづらいけど、誰かといるとお互いの記憶が残る。自分が誰かの記憶にいるのはうれしい。そういえば、近い業種の友人が限りなく少なかったけれど、思えば昨年からぐっと距離が縮まった人が何人かいる。お互いに尊敬し合えたり意見を聞けたり、時には盃を交わしながら愚痴をこぼしたり……という友人は非常に貴重。
人を知る・人に知ってもらうには、時間と体力と気力のコストがかかる。傷つけるつもりがなくても相手の受け取り方や心の強度次第で傷つけてしまうことや、相手の感情を先回りして想像してもそれが間違っていることは大いにありうる。「自分はこう思われたくないな、じゃあこういうことは言わない方がいいかな」みたいな自己完結は、相手にとっての「実際どう思うかは私だけが知るんだから勝手に決めつけんな!」案件である。同時に、どんなに分からなくても目の前の相手に関心を持ち続けるのは簡単ではない。誰にでも気長に向き合えるほど人生は長くない。一緒にいても孤独を感じる人からは潔く去った方が早いっちゃ早いし、諸々決めつけて終わらせて生きていった方が楽ではある。だが人間の想像の範疇(はんちゅう)なんてたかが知れている。
相手に対してどう思うかではなくて、自分と相手の間にある空気感を双方向から作るように人間関係を築いていけたらいいのになと思う。“レシピのないお菓子作り”みたいな感じで、目分量でベーキングパウダーを入れすぎて破裂したり、砂糖を減らしてパサパサになってしまったり、火力が強すぎて焦げてしまったり。お互いの材料と感覚を駆使して、何度か失敗して、そのうちなんとなく「さじ加減」が掴めるようになってくると、おいしくする方法も分かってくる。そんな感じで、「失敗したらどうしよう」と考えるのではなく「これまでも失敗してきているのだから、もう1個失敗しても大して変わらないよね」と思える関係がいい。片方だけが無理に作ろうとしたり、相手に任せてさぼったりすると、何も共有できないまま崩れていく気がする。
色々言ってみたが、要は「あなたのやってることなら協力する」って言ってもらえる人間でありたいし、切羽詰まったときは健やかな方向へ軌道修正するために手を差し伸べ合える互助会員の皆様のおかげで、昨年もどうにか乗り越えられました。今年も何卒、よろしくお願いいたします!
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