伝えたかった、言葉たち。 山崎怜奈の「言葉のおすそわけ」第37回
乃木坂46を卒業し、ラジオパーソナリティ、タレント、そして、ひとりの大人として新たな一歩を踏み出した山崎怜奈さんが、心にあたためていた小さな気づきや、覚えておきたいこと、ラジオでは伝えきれなかったエピソードなどを自由に綴ります。
photo : Chihiro Tagata styling : Chie Hosonuma hair&make : Ayumi Nakaitsu「大人になってからの友達」
大人になってよかったなぁと思うことのひとつは、年齢にかかわらず人と友達になりやすくなったことだと思う。考えてみてほしい。学校ではまず「学年」という大きな壁がある。一学年離れたら「先輩後輩」なので、この時点で「友人候補」は大きく狭まる。とくに小学校なんて“生まれ育った地域が偶然近かった”というだけの理由で集まってきているわけで、みんな仲良くだなんてそんな簡単な話ではない。しかしクラスに一人知り合いがいるかいないかだけで心細さが大きく異なるので、やっぱり気の合う人を見つけられるかがすごく大事になってくる。学生の頃はある種の不自由の固まりみたいな側面もあったからこそ、「何の深刻さもなく表面的な話だけで時間を過ごせる相手」としての「知り合い以上、友達未満」な存在はかなり重要。駄菓子屋のおじさんだったり、駐車場のおばさんだったり、お団子屋のお兄さんだったり、元気がない時にふらっと会いに行っても何も聞かずにただ楽しく話してくれる相手が必要だったのだ。
これらはただの言い訳で、実際は他者との違いを楽しむ余裕がなかったり、意見を相手に合わせないと受け入れてもらえないと思っていて自信がなかったからかもしれない。でも大人になると、学生時代よりも自分の居場所が広がっていく。コミュニティへの参加が強制ではなく、それぞれが勝手にやるようになる。もちろん自分の手で関係を解消していくこともできるので、知らない人と交わるハードルが下がった。バーの常連さん同士のコミュニケーションはその最たるものだし、SNSにも少なからずそういう部分があるのかもしれない。「知らない」ということは救いになりうる。先入観なしに自分を見てもらえるし、同じような苦しみを持っている人同士で友達になっていくことだってあるから。
さて先日、最近できた友人から突然「明日の夕方空いてない?」というお誘いの連絡が来た。でもファッションモデルをしている彼女が行きたがっていた「マリー・クワント展」は数日前に閉幕しており、「DIOR展」も当日券が午前中に売り切れてしまうほどの大盛況。残念ながら希望を叶えることはできなかった。しかしせっかく誘ってくれたのだ。一緒に行って楽しそうなところ、写真を撮って映えそうなところ……その類いに全く詳しくない私が頭をひねって代替案として提案したのは、なぜか咄嗟に思いついた〈浅草花やしき〉だった。……いや花やしき……いいところだけど、なぜ……? 突然の香ばしい響きに「笑」と送られてくるかと思いきや、「ありー!」と軽い返信が届いたではないか! 衝撃である。東京の下町出身のこちらからすれば、花やしきは近場で手頃に楽しめる日本最古の遊園地としてなじみ深く、もう何十年ぶりでしょうかと懐かしい記憶が蘇る場所だ。敷地もコンパクトで回りやすく、今でも現役バリバリの乗り物がたくさんあって面白い。彼女は福岡出身だが、雑誌の撮影で何度か訪れているのだろうか。それにしても服とかブランドの変遷とかを見たいテンションだったはずなのに、花やしきも守備範囲なんですね。何て素敵な子なの……。
日付が変わり寝る前にLINEを見返すと、彼女のアイコンに三角帽がついていた。誕生日の印である。おいおいおいこんなに可愛い子を誕生日に連れ回す場所が浅草でいいのかと、私の眠気は一瞬で吹っ飛んだ。1年前の今頃はたまに収録で一緒になる程度の関係だったし、年齢が近いのは分かっていたものの誕生日までは知らなかったので驚いた。でも急遽空いた時間とはいえ、大事な日にお声がかかったのはすごく光栄なことである。誕生日を迎えた人に当日会えると「縁起がいいなあ」と思うし、お祝いするとこっちまでうれしい気持ちになる。一緒に過ごさせてもらうからには、なるべく楽しい時間を過ごしてもらいたい。会うまであと16時間、どうする山崎。
ショート丈アウター 36,300円、シャツ 24,200円(共にユートリーク|ユートリーク■03-6438-9007)/パンツ 30,800円(フミエタナカ|ドール■03-4361-8240)/シューズ 36,300円(セレナテラ|ホールバイセレネテラ■03-6419-7732)