「三谷幸喜さん」 | 山崎怜奈の「言葉のおすそわけ」第60回

「三谷幸喜さん」 | 山崎怜奈の「言葉のおすそわけ」第60回
「三谷幸喜さん」 | 山崎怜奈の「言葉のおすそわけ」第60回
LEARN 2024.09.20
乃木坂46を卒業し、ラジオパーソナリティ、タレント、そして、ひとりの大人として新たな一歩を踏み出した山崎怜奈さんが、心にあたためていた小さな気づきや、覚えておきたいこと、ラジオでは伝えきれなかったエピソードなどを自由に綴ります。
photo : Chihiro Tagata styling : Chie Hosonuma hair&make : Yasuyo Tanaka(cheek one)

「三谷幸喜さん」

 「三谷幸喜が山崎怜奈を案内!映画『スオミの話をしよう』セットツアー」というタイトルの動画が、YouTubeにあがっている。なぜこの組み合わせ、そう思った人が多かったのだろう。メディア向けの文章で関係性を説明したいのでご確認くださいと、どこかの記事から拾ったらしい情報が送られてきた。私は俳優ではないし、年齢も36歳差。疑問に思う気持ちも分かる。

 三谷さんとの初対面は、2021年某日、三谷さん作・演出のミュージカル『日本の歴史』の稽古場。もちろん私が出演するなんて話ではなく、公演パンフレットに収録される記事の対談相手として呼んでいただいた。オファーのきっかけは拙著『歴史のじかん』。大学を卒業した直後に頑張って書いた本が思わぬご縁を繋いでくれた。小学生の頃から大河ドラマを観て育った私にとって、三谷さんは『新選組!』と『真田丸』の人。最初は緊張していたが、歴史を好きな理由が2人とも「人が好きで、面白い人たちを知るのが楽しいから」だと知って安心した。そこからは、お互いが幼少期に観ていた大河ドラマの話や、好きな偉人の話で持ちきり。でも三谷さんからすると、無駄なく話すし(緊張のあまり)表情も硬い私に“学校の先生”みたいな印象を持ち、「嫌われたのでは」と思っていたらしい。

 誤解が解けたのはその翌年、『鎌倉殿の13人』の放送が始まったばかりのタイミング。脚本家として執筆で忙しいはずなのに「ほとんど家から出ていないからうれしい」と言って、私がMCを務めるラジオ番組(ダレハナ)に来てくださった。作品の話を中心に、鎌倉より前の奈良時代を描くことへの興味も、ユーモアたっぷりに語る三谷さん。ラジオへの愛があり、楽しませようというサービス精神にあふれている。どんどん聞き出したくなるのだが、私は本来めちゃくちゃゲラ。三谷さんと話していると文字通り腹がよじれて、生放送の進行どころじゃなくなってしまう。それからは毎週メールで“歴史好き・大河ファン”として『鎌倉殿〜』の感想や質問のやりとりをさせていただくようになり、淀みなく鋭いところを突いてしまう部分も、ただ穏やかに笑っている部分も、どっちも本当の山崎だと分かったと言われた。 

 そのラジオ番組に『鎌倉殿〜』の出演者が来てくださるとき、三谷さんにお知らせすると、必ずその俳優さんにまつわる嘘か誠か定かではない変な情報を提供してくれた。それをぶつけてみると皆さんの表情が柔らかくなるので、インタビュアーとしてこんなにありがたいタレコミはない。ドラマが最終回を迎えた翌日には再び三谷さんが来てくださり、興奮冷めやらぬ状態であれこれ聞いていたら、またしてもあっという間。作りながら変わっていった部分、視聴者の反応やSNS上の考察をどう受け止めていたかなど、何を聞いても茶目っ気たっぷりに教えてくださる。『鎌倉殿〜』はどんなにダークな登場人物でも魅力的に映る作品だったが、三谷さん自身がチャーミングだからこそ、些細な愛らしさや憎めなさも合わさった人間の多面性が表れていたのかもしれない。翌年も対談の機会をいただいたので、三谷さんの思う“可愛げ“を聞いてみたのだが、その回答はぜひ拙著『山崎怜奈の言葉のおすそわけ』の誌面でご確認ください。

 話を冒頭に戻す。今回のセット見学動画の撮影終了後、楽屋まで案内してくださったスタッフさんが「いろんな現場を経験してきたけれど、三谷組が一番楽しい」とおっしゃっていた。三谷さんが穏やかでコミュニケーションを取りながら作ろうとする方だから、周りも面白いことに浸りながら作っていけるらしい。長年活躍し続けている方がめちゃくちゃ良い人だとうれしくなっちゃうし、良い人だから長年活躍し続けているんだろうなとも思う。

 以前、三谷さんは私に「勝手に友達の気持ちでいる」と言ってくださった。私にとっても三谷さんは、趣味の話もオープンにできる貴重な存在。今週放送されたラジオ『TOKYO SPEAKEASY』でも、2人で1時間ノンストップでしゃべっている。職業も異なる謎の関係、文字で説明するとこんな感じ。雰囲気はぜひ先述の動画とラジオで。

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