由緒正しき神社と民芸を巡る旅へ。 “民芸”を体験する旅へ!【島根】出雲の暮らしをたのしめるおでかけスポット。 TRAVEL 2021.01.23

日本には長い歴史に彩られた神社が数多くあるが、その成り立ちを知れば感慨深さもひとしお。土地の伝統を肌で感じられる宿に泊まり、温もりのある民芸品に触れるのも旅の楽しみに。

出雲で受け継がれてきたものづくりの精神がここに。

日本を代表する版画家として知られる棟方志功の原画も。
日本を代表する版画家として知られる棟方志功の原画も。

昔から工芸の文化が大切に育まれてきた出雲。民芸の創始者といわれる柳宗悦(やなぎむねよし)や河合寛次郎、濱田庄司、イギリス出身の陶芸家バーナード・リーチなど、日本の民芸を愛する人々が1926年に始めた民藝運動に影響を受けた窯元が多く残り、その魅力をいまに伝えている。

出雲に伝わる民芸品の特徴は、日々の暮らしに自然ととけこむ素朴さと、使う人の心をなごませる温かさ。そもそも民芸とは“民衆的工芸”の略で、美は生活のなかにこそ宿るという思想のもとにあるもの。その土地で暮らす人々の生活に寄りそう“用の美”を探求した民芸品をつくり続けるひとりが、松江の湯町窯の3代目、福間琇士(しゅうじ)さんだ。かのバーナード・リーチが工房を訪れた際、「カップはくちびるが喜ぶように、その持ち手は枝が生えるように」という教えを受け、化粧土で装飾する「スリップウェア」の手法も学んだ。

代表作のエッグベーカーを手に取ると、まるいフォルムが醸し出す温かさに心がなごむ。器に卵を入れ、直火や電子レンジで調理をすれば、とろりとおいしい半熟玉子を簡単に作ることができる。暮らしになじみ、使う人の気持ちを豊かにする出雲民芸のかたちそのものだ。

〈湯町窯(ゆまちがま)〉

1922年に創業した、島根を代表する窯元。ぼてぼて茶碗のような布志名焼の流れを汲む伝統的な器からスリップウェアの技法を使った大皿、カップなど、日常に寄りそう食器がそろう。
■島根県松江市玉湯町湯町965
■0852-62-0726
■8:00(土日祝9:00)~17:00 無休

出雲の暮らしのそばにあった陶磁器や木工品を多く展示。

民芸を通して島根一帯の昔の暮らしぶりを垣間見るなら、豪農屋敷に数々の展示品を収めた〈出雲民藝館〉へ。華美ではないが、先人の知恵が生きた民芸品からは、この土地の大らかな空気感が伝わってくる。

〈出雲民藝館(いずもみんげいかん)〉

出雲地方の豪農として栄えた山本家の邸宅を一部改修。かつて3,000俵もの米俵が収蔵されていた本館と、木材蔵を改修した西館の2棟に民芸品を展示。売店では地元の窯元の民芸品も扱う。
■島根県出雲市知井宮町628
■0853-22-6397
■10:00~17:00 火休(祝の場合は翌休)

(Hanako1192号掲載/photo : Kenya Abe text : Keiko Kodera)

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