東京から電車だけで行ける温泉街。峡谷沿いを走るトロッコ電車で秘湯にも。 2023年に開湯100年。富山・宇奈月温泉で楽しむ絶景とトロッコ電車の旅。 LEARN 2022.07.04

北陸・富山県黒部市にある宇奈月温泉は、2023年に開湯から100周年を迎えます。日本に数ある温泉地のなかで、100年と比較的新しいのは、黒部川上流にダムや発電所をつくる過程で開発されたから。開湯100年に向けてプレイベントも行われた宇奈月温泉にお邪魔しました。

音楽イベント『Sound of Selene』に安藤裕子さん、関口シンゴ with Hiro-a-key登場。

北陸・富山県東部の黒部市の山間部にある宇奈月温泉。東京駅から北陸新幹線で黒部宇奈月温泉駅まで行き、富山地方鉄道に乗り換えると最短2時間45分ほどで到着します。のんびりした雰囲気の富山地方鉄道に乗って宇奈月温泉駅に着くと、駅から徒歩圏内にほとんどの宿があるというアクセスのいい温泉地です。

宇奈月温泉は2023年に開湯100年の記念の年を迎えます。そのプレイベントとして6月18日に開かれたのが音楽イベント『Sound of Selene(サウンド・オブ・セレネ)』です。

出演したのは安藤裕子さんと関口シンゴ with Hiro-a-keyの2組。ステージと客席が近い会場では、先に登場した関口シンゴ with Hiro-a-keyによるグルーブ感のある歌声とギター、そして安藤裕子さんの迫力ある歌声に会場の観客も酔いしれました。

会場となった〈黒部市芸術創造センター セレネ〉は、1993年にできた文化・芸術の複合施設です。2階には〈セレネ美術館〉があります。開館前から、平山郁夫や手塚雄二といった現代日本画壇を代表する7名の画家に作品制作を依頼。

画家たちは切り立った断崖を歩き、山小屋に泊まったり、ヘリコプターを使ったりと、一般の人は足を踏み入れられない黒部峡谷のさまざまな場所で取材を行って、合計27点の作品ができあがったのだとか。今では残っていない歴史的な橋を描いた作品や渓谷の緑、黒部の水を美しく描いた絵画も並びます。

館内にはカフェも。大きな窓のそばの席では、春から夏にかけては山の緑、秋には紅葉、冬には雪景色を眺めながらコーヒータイムを過ごせる場所です。

〈黒部市芸術創造センター セレネ〉
■富山県黒部市宇奈月温泉6-3
■0765-62-2000
■9:00~17:30(入館は閉館の30分前まで)
■4~10月 無休、11~3月 火曜休

ダム建設がきっかけで生まれた温泉地。透き通った美肌の湯でツルツルに。

宇奈月温泉は日本一の透明度ともいわれ、肌にやさしい弱アルカリ性の単純温泉。つべつべ(富山の言葉でつるつる、すべすべの意味)になる美肌の湯と言われています。

黒部という地名を聞くと、黒部ダムを思い起こす人も多いでしょう。宇奈月温泉ができたのは1923年、黒部川の上流に水力発電のためのダムを作っていたときのことです。危険を伴う重労働に従事していた作業員の拠点になっていたこの場所には、全く娯楽がありませんでした。そこで7km上流に湧いている温泉を引いて、作業員たちが温泉を楽しめるようにしたことが宇奈月温泉の始まりです。

宿泊したのは〈ホテル黒部〉。1964年創業の和風温泉宿です。露天風呂からも内湯からも迫りくるような黒部峡谷の木々の緑が臨めます。

夕食は富山の海の幸、山の幸をふんだんに盛り込んだ和食。富山名物「鱒寿司」は一口サイズ、お造りは7種盛り、贅沢に1人1つ鮑を使った「鮑湯煙陶板焼」、そして富山で獲れた「ホタルイカの酢味噌かけ」、地元のブランド豚「黒部名水ポークの味噌鍋」とひと晩でその時期の富山の味を堪能できるラインナップです。

水のおいしい富山で忘れたくないのが日本酒。県内には19軒の酒蔵があります。〈ホテル黒部〉でも日本酒の飲み比べセットが複数用意されていました。

〈ホテル黒部〉
■富山県黒部市宇奈月温泉7
■0120-62-1334(受付時間 10:30〜20:00)

長い年月をかけて黒部川が削り作ったV字の峡谷に沿って走る〈黒部峡谷トロッコ電車〉。

宇奈月温泉は電源開発の過程で生まれましたが、ダムや発電所のためにつくられ、現在は観光客に楽しまれているものがもう1つあります。それが宇奈月温泉のシンボル的存在の〈黒部峡谷トロッコ電車〉です。

黒部峡谷で電源開発が始まったのは大正時代です。資材や作業をする人を運ぶためのトロッコが整備されました。

昭和の初めには、トロッコ電車から見える峡谷の美しい景色を見たいという要望が寄せられるように。現在の黒部峡谷鉄道として営業を始めたのは昭和46(1971)年とのことです。

トロッコ電車は起点となる宇奈月駅から終点の欅平駅まで全長約20km。観光客が乗降できる駅は全部で4つあり、今回目指したのは2つ目の黒薙駅です。

出発地の宇奈月駅からは片道25分ほどの乗車ですが、その間だけでもうなづき湖と湖面橋、新柳河原発電所など思わず写真を撮りたくなるスポットが次々と現れます。そして駆け抜けるトンネルの中は夏でもひんやり。眼下を流れる水の青さと合わせた涼やかさも峡谷を走るトロッコ電車の醍醐味です。

〈黒薙温泉旅館〉の建物は明治時代に建てられたものが改装されながら使われています。建物の中にも日帰り入浴できる温泉がありますが、外には混浴の露天風呂が! ダイナミックな景色を眺め、黒部川が流れや滝の音を聴きながら、温泉に入ることができます。もちろん〈黒薙温泉旅館〉では宿泊も可能です。

〈黒薙温泉旅館〉
■富山県黒部市宇奈月町浦山 黒薙
■0765-62-1802

満喫したい富山の海と山の幸、そして山のチーズケーキ。

旅行に欠かせない楽しみは、ご当地のおいしいもの。富山地鉄宇奈月温泉駅から約60mのところにある〈河鹿〉は釜飯のお店です。

店内でいただく「釜めし定食」は、注文が入ってからひとつひとつ炊き上げられます。「五目釜めし」や「ホタルイカ釜めし」があり、お味噌汁とお漬物付き。ホタルイカのプリとした食感や出汁が染み込んだお米、三つ葉の香りに食が進みます。

〈河鹿〉
■富山県黒部市宇奈月温泉330-19
■0765-62-1505
■11:00~14:00、17:00~24:00
■火休

「バイ貝ぎっしり炊き込み弁当」(左)と「海の幸たっぷりうま煮弁当」(右)各1,200円。
「バイ貝ぎっしり炊き込み弁当」(左)と「海の幸たっぷりうま煮弁当」(右)各1,200円。

トロッコ電車目当てに訪れる鉄道ファンも多い宇奈月。JR黒部宇奈月温泉駅のお土産販売店〈のわまーと〉で購入できるお弁当「バイ貝ぎっしり炊き込み弁当」と「海の幸たっぷりうま煮弁当」は、どちらも富山の味を詰め混んでいます。

「バイ貝ぎっしり炊き込み弁当」に入っているバイ貝は北陸でよく食べられる巻き貝で、コリコリとした食感が特徴。貝の旨味がお米にしっかり行き渡っています。「海の幸たっぷりうま煮弁当」は、ホタルイカ、かまぼこのほか、富山湾の宝石といわれる白エビが使われていて、ひとつで富山の海の幸をちょっとずつ食べられる満足感のあるお弁当です。

「幻のアルペンチーズケーキ」660円。コーヒーか紅茶とセットで880円。
「幻のアルペンチーズケーキ」660円。コーヒーか紅茶とセットで880円。

スイーツは新名物。宇奈月温泉駅内にあるチーズケーキ専門店〈ALPEN CHEESECAKE(アルペンチーズケーキ)〉では賞味期限が10分という「幻のアルペンチーズケーキ」が人気です。

地元・黒部にある牧場の牛乳をたっぷり使って、雪山をイメージした真っ白なチーズケーキはミルク感のあるやさしい味で、ふわふわの生地が口の中で粉雪のように溶けます。温度があがると溶けてしまうことから、イートイン限定。山間の温泉地、宇奈月に行かなければ食べられないスイーツです。

〈ALPEN CHEESECAKE〉
■黒部市宇奈月温泉260 地鉄宇奈月温泉駅1F
■0765-62-2055
■10:00~17:00(土日祝~18:00)
■水木休

駅周辺にも撮影スポットいろいろ。アウトドア感もアリ。

宇奈月温泉駅周辺を散策すると、緑と水の美しい黒部峡谷をトロッコ電車が駆け抜ける姿が見渡せる場所がいくつもあります。写真好きなら、時間が許す限りベストショットを狙ってみてもよさそう。

かつてトロッコ電車が走っていた山彦橋は大正時代に建てられた鉄道の橋としてかなり古いものです。その古い山彦橋から、現在トロッコが走る新山彦橋を撮影する人気の撮影スポットです。

山彦橋の先にはトンネルがあって、探検気分が味わえます。トンネルの先には宇奈月ダムを見渡せる展望台も。

富山県黒部市 宇奈月温泉

2023年の開湯100周年に向けて、さらに周年イベント計画も予定されている宇奈月温泉。絶景と美肌を求めて、訪ねてみてはいかがでしょうか?

〈黒部峡谷鉄道〉
■富山県黒部市黒部峡谷口11(宇奈月駅)
■0765-62-1011(お客さまセンター)
■運行期間~ 11月30日 、運休期間12月~4月中旬

〈黒部 宇奈月温泉観光局〉
公式サイト

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