人に寄り添うような魅力は、自らの辛い経験にあった! 〈テレビ朝日〉アナウンサー・大下容子さん、その不動の支持を誇るまでにフィーチャー! LEARN 2018.07.10

いつの時代も「働く女性の理想」を写している女性アナウンサー。不動の支持を誇る〈テレビ朝日〉・大下容子さんが、入社当時の努力から、幾度かのターニングポイント、そこから導き出した仕事観までを語ってくれました。Hanako創刊30周年特別企画『働くことと、生きること。46人の、転機と決断。』「時代とともにある、ひとつの理想。「女性アナウンサー」という仕事。」よりお届けします。

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大下容子/広島県出身。慶應義塾大学卒、1993年入社。現在『ワイド!スクランブル』(月~金曜10:25~)のメインキャスターや、『ビートたけしのスポーツ大将』などに出演している。スポーツ、特にサッカーが好き。

「私はのんびりした大学生だったんです。何になりたいとか、どこに就職したいとか、何も考えないまま3年生になってしまって。そんな中、なんとなくアナウンサーの試験を受けたというのが本当のところです。カメラテスト、原稿読み、とやらせていただく中で、〝こういうところで働けたら楽しいだろうな〞と思うようになり、徐々に〝アナウンサーになれたら〞という気持ちが大きくなりました。でも結局私、落ちまして…。悲しくて悔しくて、そのとき初めて、私はアナウンサーになれたら、ではなく、なりたかったんだ、ということに気がついた。その年はありがたいことにもう一回選考があり、再度挑みまして。最後の役員面接で、〝私は他局ではなく、テレビ朝日でアナウンサーになりたいんです〞と、強く主張したのを覚えています(笑)」

同期が羽ばたく中で、研鑽をひたすら積む日々。

入社後は、発声練習、広島弁のアクセントの矯正など、基礎的な技術を身につける日々。〝イントネーションが違いすぎる!〞と言われ、アクセント辞典を肌身離さず持ち歩く。そんな毎日だったそう。
「同期がどんどん番組に出ていく中、私はアナウンサーとしての仕事はほとんど与えられず。焦りがなかったと言えば嘘になりますが、でも今思えば、その日々があってよかった。何もなかった私が、何かを身につけるために、必要な時間だったんだと思ってます」

大きなターニングポイントになったのは、1998年。今も出演している『ワイド!スクランブル』への抜擢があった年だ。
「入社6年目、28歳のときです。その年の2月に長野オリンピックが開催され、リポートのために、ほぼ1カ月長野に行かせていただいたんです。オリンピックの取材は夢でもあったので、〝私はスポーツが好きなんだな、スポーツアナとして頑張っていきたいな…〞と思った矢先に、〝ワイドショーの司会をやってくれ〞と。まさに青天の霹靂。部長に〝それは相談ですか? 事後報告ですか?〞とか生意気なことを言った記憶があります(笑)。そんなとき先輩が、〝ワイドショーはスポーツを取り上げることもあるんだから、やってみたらおもしろいかもよ?〞と背中を押してくださって、そこからまさかの20年(笑)。こんなに続くということは、そのときには想像もしていませんでした」

自らの辛い経験が、人に寄り添う心を育てた。

実は大下さん、入社3年目に、住んでいた家が隣家への放火の延焼により火事になるという事件に遭遇している。
「突然自分が被害者になってしまったんです。そのときに報道番組のキャスターが心を寄せるコメントをしてくださって、一人テレビを見ながら涙があふれました。『ワイド!スクランブル』を担当して数年経った頃、ふと、あの辛い経験は私がこの仕事をするために与えられた試練だったのかな、と思いまして。事件を分析する人がいる一方で、私は被害者に心を向けたいと思っています。どんなことも、何が正しいのか本当のことは分からない。一方的に報じるのではなく、もっといろんな見方をしなければならないということは、アナウンサーとしてものすごく意識しますね。政治でも外交でも事件でも、なるべく多様な意見を引き出すことが大事だし、自分の役割は、そういうことなのではないかと思っています」

大切にしているのは、〝自分の目で見たもの〞を伝えるということ。

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「私は、アナウンサーはあくまで進行役であり、皆さんにお話をしていただくのが仕事だ、と教わってきた世代。でもここ数年、〝個人の意見〞を求められることが増えてきて、正直今、そこは非常に悩んでいる部分でもあります。今でも、自分の意見を口にするときは、やはり少したじろぎますし…。ただアナウンサーは取材者でもある。その観点から考えると、取材対象の、〝カメラには映らなかったけれど、私だけが見ることができた様子や表情〞を、自分の言葉で伝えることは、私ができるひとつの仕事なのかな、とも思うんです。私がこの目で見たことを、真摯に伝え続けていきたいです」

そんな大下さん、最近の悩みは?との問いに、深夜にパンを食べてしまう…、とお茶目な返事。どうしてそんなことに?
「朝食べようと思って買っておいたパンに、手が伸びてしまうんですよね…。健康診断でも〝いけませんよ〞と言われたのでやめたいんですが…。でも炭水化物が大好きなので、なかなかやめられないなぁ(笑)」

Q & A

Q.憧れのアナウンサーは?
A.久米宏さん。歯切れの良さ、圧倒的な技術、対応力、言葉のない場面での表現力などに、心底憧れます。

Q.理想とする女性像はありますか?
A.黒柳徹子さんの、常にみずみずしい存在感は、唯一無二。平和と愛に満ちた方です。

Q.子供の頃は何になりたかったですか?
A.恥ずかしながら医者に…。でも理数系が苦手になってしまい、あっという間に諦めました(笑)。

Q.10年後、どんな自分になっていると思いますか?
A.健康で、人様の役に立つことをしている自分でいたい。夢中になれる何かが持てていたらいいですね。

Hanako『46人の、転機と決断。』特集では、女性アナウンサーを多数ご紹介しています。

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(Hanako1159号掲載/photo : Hiromichi Uchida hair & make : Yuka Takamatsu text : Yuki Kono)

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