優しい気持ちを作る、理想の部屋づくり。 センスのいい人に学ぶ、心地よい部屋の工夫。|建築家・日高海渡『公園のように開かれた家。』 LEARN 2022.06.04

物件そのものの良さだけでなく、素敵な部屋には家主の持つさまざまな“工夫”がちりばめられています。実例をお手本に、センスアップのヒントを学びます。今回は、建築家・日高海渡さんのお部屋をご紹介します。5月27日(金)発売Hanako1209号「優しい気持ちを作る、理想の部屋づくり。」よりお届け。

玄関を入ってすぐのワークスペース。「家開き」のときは食堂になる。窓にクリップでとめただけのインドネシアのバティックとパキスタンの絨毯が、コンクリート打ち放しの無機質な空間に湿度のある彩りを添える。
玄関を入ってすぐのワークスペース。「家開き」のときは食堂になる。窓にクリップでとめただけのインドネシアのバティックとパキスタンの絨毯が、コンクリート打ち放しの無機質な空間に湿度のある彩りを添える。

建築家の日高海渡さんは、時々「家開き」をする。文字通り、オープンハウスである。一度に10人ほどを、仕事場も兼ねる自宅に招いて手料理をふるまう。友人はもとより、SNSを通してコンタクトしてきた初対面の人も歓迎する。「おかげで料理がうまくなりました」

【POINT 2】『布を飾ることで、窓辺や壁に表情を出す。』光に透けたときに柄の浮き出る布を窓に飾ったり、気に入った布をタペストリーのように壁に下げてみる。布を通したシルエットが時間によって表情を変え、使う布によっても部屋全体の雰囲気を手軽に変えることができる。
【POINT 2】『布を飾ることで、窓辺や壁に表情を出す。』光に透けたときに柄の浮き出る布を窓に飾ったり、気に入った布をタペストリーのように壁に下げてみる。布を通したシルエットが時間によって表情を変え、使う布によっても部屋全体の雰囲気を手軽に変えることができる。

ワークスペースの窓際に並ぶワインボトルの空き瓶が、おもてなしの数を物語る。その窓際の光を、ふんわりと和らげるように揺れるのはインドネシアのバティックの布。20代で東南アジアを旅したときに買ったものだ。

壁に掛けてあるのも同じくインドネシアのろうけつ染め。床には「実家から持ってきた」パキスタンの絨毯。隣の部屋の窓際に造り付けたデイベッドにも、パキスタンのクッションが並ぶ。「父親の仕事の関係で、3歳くらいまでパキスタンにいたんですよ。僕は覚えてないですけど」。そのため家では昔から、パキスタンの布や家具が普通に使われていた。その影響もあってか、日高さんはアジアンテイストな布や器が好きだ。

「いまはタイのものにはまっています」という。床壁天井、建築本体には色や柄は使わずに、そうした布や器でアクセントをつけている。しかし、アジアンテイストで統一してしまうと濃くなりすぎるので、〈無印良品〉のクッションを混ぜたり、テーブルは合板を重ねて、〈東急ハンズ〉で買った脚に載っけただけのシンプルなものにしたり、中和を心がける。「アンティークの椅子とかも好きなんですけど、それだけだと古民家カフェみたいになっちゃうので、スチールのものやデザイナーものも混ぜています」

もとは4LDKだったマンションは、祖父の代に購入して貸していた場所。100 m2 もあって一人で住むには広すぎると思い、最初から人を招く前提で改装した。ワークスペースは食堂であり、リビングは食後にデザートを食べる場所でもある。「家開き」のとき以外も、奥の個室と浴室以外は、パブリックスペースと思って過ごしているという。

東西に長い間取りで、どの部屋にも南向きの窓がある。改装にあたっては「窓とテーブル、窓とソファ、みたいに、窓辺をどうつくるかを考えました」。持っている布をどこに飾るかなどもあらかじめ考えておいた。「タペストリー風にこの布をこの壁に飾りたいとか、人の居場所だけでなく、ものの居場所も考えておくとインテリアが想像しやすい」という。新しいものも受け入れやすくなる。「人もものも、決まったメンバーで固定されちゃうとつまらないじゃないですか」と日高さん。「家開き」はもはや生活の一部になっている。

【DATA & PROFILE】

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【PROFILE】
日高海渡(ひだか・かいと)/建築設計事務所〈swarm〉代表取締役。ここでの暮らしは「ヨヨギノイエ/30代建築家の一人暮らし」としてインスタ配信。最近、仕事場「ヨヨギノハナレ」もつくった。

【DATA】
■人数:1人暮らし
■所在地:東京23区 駅徒歩10分
■築年数:約50年
■居住歴:5年

(Hanako1209号掲載/photo : Kenya Abe text : Yuka Sano)

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