察してくれない相手のせいにしてしまいがちでは? 悩める女子が尼さんに人生相談!「日本人は気持ちを伝えるのが極端に下手。」 LEARN 2020.01.15

恋愛、仕事、お金、人間関係…尽きることない悩みの数々。ひとりで考えるのもいいですが、人の助言に耳を傾けることも大事。そこで、女性としての目線に仏教の教えをプラスした人生のヒントを、尼さんに聞きました。

Q.好きな人も彼氏もおらず、結婚する未来が見えません。帰省のたび「結婚しなさい」と両親から言われる時のうまい返し方を教えてください。(食品関係30歳)

A.まず、ご自身がどうしたいのかをはっきりさせることが大切ですね。結婚したいのか、したくないのか、今はまだわからないのか。あなたの結婚に対するスタンスを明確にした上でそれをしっかり相手に伝えないと、ご両親からの言葉は今後も続いてしまうでしょう。「結婚しろと言われるのは傷つくからやめてほしいし、私のことを思うんだったらそっとしておいて」と。相手は良かれと思って言葉をかけているはず。日本人は自分の気持ちを伝えるのが極端に下手なので、自分の努力で環境が改善できることも、察してくれない相手のせいにしてしまいがちです。自分の意思を面と向かって伝える勇気を持っていただきたいです。

加えて、曹洞宗の開祖である道元禅師の教えの一つである「愛語」について。「愛語」とは文字通り「愛のある言葉を口にする」こと。まずは相手の健康や近況を尋ねてみたりと、相手への気遣いを意識してみてください。そしてさらに言えば、私たちの潜在意識の深い場所では、実は自他の区別がありません。相手にかける言葉はそのまま自分に返ってきます。なので、相手に乱暴な言葉を使っていると、気づかないうちに、自分を攻撃していることになります。大切な人には、愛のある美しい言葉を伝えるように心がけてください。

Q.老いや死を意識するととても怖くなってしまいます。そのたびに強制的に考えることをやめるのですが、死をどのように捉えたらいいでしょう。(専業主婦29歳)

A.お釈迦様と同じお悩みをお抱えなのですね。「生老病死」こそがお釈迦様の最大の苦しみであり、それを逃れるために出家されたと伝えられています。解決策としては、まず、なぜ死が怖いのかを考えてみてください。誰しもに平等に与えられているものなのに、なぜ恐怖を感じるのか。自問自答してみましょう。歳を重ね、老いたり病になったり、いつか死んでいくことを想像すると確かに不安になると思います。しかし、頭の中で描いた自分というのはどこにもいません。人間の一生というものは、実際は何歳になっても自分は自分なのです。「莫妄想」という禅語があります。妄想すること莫なかれ。しっかりと目を開いて見つめてみたら、今ここにいる自分しかいないことに気づくはずです。死があるからこそ、生きていることを尊く感じるもの。別れがあるから、共に過ごす時間が尊いのですね。お金や病気など、物理的な心配であるならそれに備えればよいのです。備えあれば憂いなしです。

本日の教訓

一.自分の意思を相手に伝える。

二.相手には愛のある言葉をかける。

三.死があるから人生が尊いと感じる。

〈曹洞宗芳谷山 梅翁院〉(長野県長野市)香有さん「自分の意思は相手に真摯に伝え、常に相手を気遣う言葉も大切に」

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【PROFILE】
2009年 曹洞宗 新潟県吉蔵寺で得度
2011年 曹洞宗総合研究センター入所
2014年 曹洞宗宗務庁に勤務
2016年 ヨガインストラクター資格取得
2019年 米サンフランシスコへ移住

高校生で仏教に興味を持ち、曹洞宗が設立した大学で仏教を専攻する。卒業後に新潟県の吉蔵寺で得度。その後、〈愛知専門尼僧堂〉で修行を積む。2011年に曹洞宗総合研究センターに入所し、坐禅会やワークショップなどを行う。14年から2年間、曹洞宗宗務庁に勤務。結婚後、曹洞宗の僧侶を続けながらサンフランシスコに移住。19年に第一子を出産。現在は曹洞宗国際センターに勤務。今後は現地で坐禅、クンダリーニヨガのレッスンを開催予定。

(Hanako1180号掲載/photo : Maruo Kono illustration : Chiiko Hoshino text : Satoko Muroga, Rio Hirai)

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