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2019.11.01

「趣味を続けられないのは、飽きていないフリをしないから。」 「マイブーム」で新語・流行語大賞受賞。みうらじゅんさんに聞く、“偏愛”のススメ。

ゆるキャラ、いやげもの、バカ映画など、自身の「好き」を楽しみながら、自由に仕事をしている人。一見ムダに思えても“気になったこと”には首を突っ込んでみると意外な「好き」に巡り合えたりするのかもしれない。Hanako『自分を高める学びの場へ』「爆発する知識欲!」よりお届け。

入り口が“打ち出” だったのに、還暦やダイソンのドライヤーみたいな違う出口が見つかる。

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田舎の家とかによく、打ち出の小槌ってありますよね。赤い座布団にのせられて床の間に飾られていたりするやつです。あの〝打ち出〞が1年半くらい前から気になり始めてね。欲しくなったというより、〝いらないな〞と強く感じたんですよ(笑)。それで、じゃあわざと買ってみるしかないなと思ったわけです。

そのとき買ったのは九谷焼の小さな打ち出なんだけど、2万円くらいしてね。でも、とりあえず、いらないものは最初は高いものを買わなきゃダメでしょ。ハマるためには出だしの出費が多ければ多いほどいいわけでね。お金をそんなモノに使ってしまうと人間って、どうにかして元を取ろうとするもんですから(笑)。

ネットでそれを買うときに名前を聞かれたんです。するとね、届いたら打ち出と一緒になぜか「還暦祝みうらじゅん様」って書かれた木のプレートが入ってたんですよ(笑)。それを見て、打ち出って一般的には還暦祝いとして贈るものなんだと思いましたね。

引越し業者のおばちゃんが入れたままの状態が保たれた本棚。秩序のない並び順が味わい深い。
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そのことをきっかけに、今度は還暦についても興味が出てきて。還暦を迎えた人って例の赤いちゃんちゃんこを着て頭巾を被ったりするけど、あんなのフツーは着たくないじゃないですか。でも誰かにやらされるぐらいだったら志願した方がいいのではと思って、自分で買ってみたんですよ。それらを身に着けてラジオに出るとか、人に会うとかを1年続けているうちに、このコスプレってどう考えても大黒天だなと気づいた。大黒天といえば打ち出じゃないですか。還暦の人は本来、打ち出も持たされていたんじゃないかと思うんですよね。

それからはまた打ち出のことばっかり考えてました。大黒天の元とされているインドの神様「マハーカーラ」について調べたり、秋葉原で見つけた「打ち出のにゃん小槌」っていうガチャポンのシリーズを〈中野ブロードウェイ〉で大人買いしたりしてね(笑)。

そうこうしてるうちに、ウルトラマンキングにたどり着いた。ウルトラマンキングって赤いマントを着けて打ち出を持ってる回があるんですよ。「そうか、きっとウルトラマンキングはその年、還暦だったんだ」ってね。キングって年配者のイメージがあったけれども、なんだ年下じゃねえかって(笑)。

それから、だんだん打ち出ノイローゼになってきましてね。あるとき地下鉄に乗っていたら、打ち出が自分を呼んでるような気がしたんです。ふと見上げたらそこには中吊り広告があり、赤いドライヤーがどーんと写ってたんです。〝あっ! 打ち出だ〞と(笑)。

その足で早速、〈ビックロ〉に行ってね。いろいろ商品を見てみたら、打ち出にいちばん近いのはダイソン製ということがわかって。ほかのドライヤーはちょっと偏ったところに持ち手があるんだけどダイソンだけは真ん中なんです。買うならこれだと思ったんだけど、5〜6万円とかする。だからダイソンの商品説明をしているお姉さんを遠巻きに見てることしかできなくて。ほら、そばに行くと説明されちゃうから。しばらくしてお姉さんが売り場を離れたときに「今だ!」とダイソンに近づき、打ち出風に持って自撮りしたんですよ。さすがに、打ち出に似てるってだけでそのドライヤーは買えなかった。ノイローゼもまだまだ未熟だなと思いました(笑)。

まだ打ち出の考察は続いてるんですが、ここまできたらまずサクセスですね。入り口が打ち出だったのに、違う出口が見つかると俄然おもしろくなってきますから。

まあ偏愛といっても、きっと僕のは世間から見たら「変」な方の愛だから。「変愛」ですね( 笑)。

小学生のときに始めた仏像スクラップ。丁寧な解説、イラスト、俳句など充実の内容ながら、モテないことに気づき中2で第一期仏像ブーム終了。
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まあ、もちろんいつかは飽きが来ますよ。ほかのマイブームも今じゃ、ほぼ飽きてますけどね。でも、あたかも昨日今日に興味を持ち始めたかのごとく自分を洗脳して熱く語ってるとね、飽きを忘れるというか(笑)。大概の人が趣味を持ってもなかなか続けられないのは、飽きていないフリをしないからですね。飽きないフリを数カ月続けていると人間って、フリをしていたことも忘れるものなんです。ずっと好きだったような気がしてきてね。人間の特徴である「忘れる」ということをうまく利用して脳に錯覚を起こさせるのが、興味を持続させるためには大事だと思います。

「わいせつ物陳列罪にあたるから」、唯一世に出ていないマイブーム「エロスクラップ」。すでに607冊目。
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そもそも僕のマイブームの場合、対象がすごく好きで始めたわけでもなく、それらについてずっと考えているうちに、なんらかの化学変化が起きる可能性にワクワクしているだけなんですよね。

マイブーム、っていう言葉が流行語大賞に選ばれた頃はね、どこに行っても「今のマイブームはなんですか」って聞かれてたもんです。それに答えないと許してくれないような雰囲気がありましたから、しょうがなく適当に「ゴムヘビ」って言っちゃって、後から必死で好きになる努力をしました(笑)。そこからゴムヘビを集め始め、最終的には台湾や中国にまで本場のゴムヘビの買い付けに出かけるようになりました。いま120種類以上あるのかな。数って意外と大事で。一個一個は「なんだこれ?」というようなものだとしても、膨大な量があればみんな「あっ!!」と言いますから(笑)。

同じことが、期間の長さにもいえて。「またやってる」が「まだやってる」に変わったとき、人ってちょっと認めてくれたりするもんですよ。

まあ偏愛といっても、きっと僕の場合は世間から見たら「変」な方の愛だから。「変愛」ですね、きっと。

Teacher みうらじゅんさん

イラストレーターなど。1997年に「マイブーム」で新語・流行語大賞受賞。仏像、とんまつり、ゆるキャラなど、たくさんのマイブームを持つ。note.にて、いとうせいこうさんと自主ラジオ『ラジオご歓談!』を配信中。

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Hanako 自分を高める学びの場へ

(Hanako1178号掲載/photo : Masami Hiroe text : U-zhaan)

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