「アトラクションだと思って乗ってみて」 女子鉄旅のパイオニアが対談!週末プチトリップにおすすめ「女子鉄道旅行」の楽しみ方。 LEARN 2019.02.23

観光列車が続々と誕生したり、地方のローカル線が再注目されたりと、話題が続く鉄道界。鉄道女子の先輩、エッセイストの酒井順子さんとイラストレーターのなかだえりさんに、その楽しみを教えてもらいました。

乗るだけで非日常体験!ローカル線で地元に触れる。

右・酒井順子さん、左・なかだえりさん。
右・酒井順子さん、左・なかだえりさん。

鉄道好きというとマニアックにも聞こえ、少し前までは女子には珍しい趣味だったかもしれない。それがいま近い存在になったのには、酒井順子さんや、なかだえりさんの影響が大きい。二人はなぜ鉄道好きになったのか。その魅力を聞いてみた。

酒井:私は、とにかく〝乗っている〞という行為が好き。切符を買って乗ってしまえば、必ず終着駅に連れて行ってくれる安心感、身を委ねている感覚が好きなんです。そのせいかよく寝てしまうんですが、男性の鉄道ファンには「あり得ない!」って怒られますね(笑)。でも、私にとっては鉄道の中で過ごすこと自体が特別なので。

なかだ:私は古いものが好き。街並み研究のために全国各地の建築を見に行くのに鉄道を使っていたら、駅舎や車体の魅力に気づいて、鉄道も趣味になりました。鉄道は移動手段であるだけでなく、快適で楽しい時間。非日常を味わえます。

編集部:鉄道旅は食べ物も楽しみですが、お二人は何を食べますか?

酒井:いつもは滅多に行かない駅そばやラーメン屋さんには、旅先だとなぜか入りたくなります。

なかだ:駅弁も楽しいですよ。停車時間にパッと買えるので、車窓とセットで味わえば途中下車しなくてもその町の風土がわかります。例えば〈アベ鳥取堂〉の「とっとりの居酒屋」のように、名物の入ったお弁当を選ぶのがコツです。

酒井:鳥取といえば、私は〈たくみ割烹店〉で買えるお弁当が好きです。やっぱり鉄道プラス何かがあるといい。単に乗るだけじゃなくて、「おいしいものを食べたい」「近くにカフェがあったらうれしいな」と思うのが女子ですから。

鉄道地図帳は本当に便利。

編集部:おすすめの鉄道は?

なかだ:大井川鐵道や小湊鐵道のようなローカル線は、風景や沿線を含めて好きです。

酒井:旅の醍醐味って、その土地の人と会ったり話したりすること。ローカル線に乗ると、隣に地元の高校生カップルが座っていたりする。彼らを見るだけでも楽しいものです。

なかだ:ローカル線は、走る速度もちょうどよくて、景色が目線の高さに広がるのがいい。その土地の素の部分に触れられるような気がして。

地域別に分冊になった『日本鉄道旅行地図帳』(新潮社)は、正縮尺で想像しやすい。「なるべく日焼けしない、眺望のいい席を考えておきます」(酒井さん)
地域別に分冊になった『日本鉄道旅行地図帳』(新潮社)は、正縮尺で想像しやすい。「なるべく日焼けしない、眺望のいい席を考えておきます」(酒井さん)

酒井:途中下車すると、より地元を感じられます。ただ、考えなく降りてしまうと大変。本数が少ない場合もあるので、多少の準備が必要です。時刻表は旅程の部分だけ切り離して持ち歩くのがオススメ。さらに私は、鉄道の地図帳で眺望のよさそうな席だけは確認しておきます。

なかだ:その二つは定番!それ以外は普段の荷物と同じです。歩きやすいように、コンパクトな荷物が鉄則。鉄道はそれほど気軽に乗れて、簡単に旅気分にさせてくれるもの。

酒井:毎年、JR米坂線のような雪見列車を楽しみにしています。寒さを感じず快適な空間で雪を眺められるって、アトラクションのようじゃないですか。雪に限らず、夏の海や地方の風景などを、かなり長い時間堪能できる。ぜひ乗ってほしいのは三陸鉄道ですね。今の東北を車窓から見られますから。鉄道は、ひとり旅初心者に最適なのでは?

乗車の記念に限定物をゲット。

「夫も鉄道ファンで、よくグッズを買ってきます。コレクターでなくても、その駅でしか手に入らないバッジなどは心をくすぐられますよね」(なかださん)
「夫も鉄道ファンで、よくグッズを買ってきます。コレクターでなくても、その駅でしか手に入らないバッジなどは心をくすぐられますよね」(なかださん)

今回話してくれたのは…

酒井順子
エッセイスト。東京出身。ベストセラー『負け犬の遠吠え』で話題を集め、2006年には『女子と鉄道』(光文社)で、独特の“鉄”観を書き記した。最新刊は『百年の女』(中央公論新社)。

なかだえり
イラストレーター。岩手出身。大学で設計を、大学院で都市史を学んだ。研究で全国をめぐるうちに、鉄道の虜に。著書に『駅弁女子』(淡交社)、『大人女子よくばり週末旅手帖』(エクスナレッジ)など。

鉄道旅に出たくなったら…

(Hanako1160号掲載/photo : Hiromi Kurokawa text :Kahoko Nishimura edit : Chiyo Sagae)

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