優しい気持ちを作る、理想の部屋づくり。 センスのいい人に学ぶ、心地よい部屋の工夫。|ギャラリーオーナー/デザイナー・野口アヤ『自然の光が美しく映える家。』 LEARN 2022.06.16

物件そのものの良さだけでなく、素敵な部屋には家主の持つさまざまな“工夫”がちりばめられています。実例をお手本に、センスアップのヒントを学びます。今回は、ギャラリーオーナー/デザイナー・野口アヤさんのお部屋をご紹介します。

「この家の全部が好きですけど、なかでも好きなのは、きれいな天井とでっかい窓」と野口アヤさん。晴れた日も曇った日も、朝も夕も、南に向いた一枚ガラスの窓から入るやわらかな光が、白い天井をめぐって美しい。夫と二人暮らしのこの家に、春から2匹の保護猫もやってきた。

ファッションデザイナーとして長年活躍している野口さん。家に新たなものを購入する際には、夫でクリエイティブディレクターのチダコウイチさんと、「家庭内プレゼン」をして検討するという。家具も食器もテキスタイルも、なんでも。この空間に合うかどうか、が重要だ。メゾネットタイプの集合住宅で、1階が広いワンルームのLDK。玄関から入って廊下の奥にダイニングスペースがあり、広い窓のあるリビングを見下ろすように段差がついている。建築家・吉村順三の設計で1979年に竣工した。リビングの床に張られた煉瓦色のタイルや暖炉などは当時のまま。実は20年近く前、同じ建物の別の部屋に賃貸で住んだことがあり、とても気に入っていた。仕事場も兼ねていたので手狭になり泣く泣く離れたが、縁あって7年前にいまの部屋を購入。懐かしい場所に帰ってきた気持ちだったという。この建物本来の空間が好きなので、前の住人が改装した部分は、竣工当時の状態に近づけるように直した。

『アートはサイズを合わせて飾る。』暖炉をはさんで飾っている2点の絵画は、どちらも米国のサックス奏者で画家のジョン・ルーリーのもの。ひとつの空間に複数の絵を飾る場合は、同じ作家、同じ大きさのもので揃えると統一感が出る。ダイニングに飾っているのも同じサイズのもの。
『アートはサイズを合わせて飾る。』暖炉をはさんで飾っている2点の絵画は、どちらも米国のサックス奏者で画家のジョン・ルーリーのもの。ひとつの空間に複数の絵を飾る場合は、同じ作家、同じ大きさのもので揃えると統一感が出る。ダイニングに飾っているのも同じサイズのもの。

一般的な集合住宅と違って、ここには天井に照明がない。「窓が大きいので、昼間は日差しが真っ白な天井に反射して明るいですし、夜はダイニングのフロアスタンドの間接照明と、窓際のデスクランプと行灯(あんどん)だけで十分。この家ならではの、心地いい明るさと暗さです」家具やテキスタイルは、広い面積を占めるリビングの床との相性を考えて置いている。「柄ものやヴィヴィッドな色は避けています。植物があるのでグリーン系は相性がいい。ピンクもくすんだトーンなら似合うかなと思って、クッションやソファに取り入れています」。

木製フレームのスピーカーと本棚など木のものは、色だけでなくツヤ感も統一。同居を始めた猫たちのペット用品も、色に統一感が出るように選ぶなど気を配る。ほかにも、まとまりをつくるポイントとして「複数の絵を飾るなら、同じ作家の同じ大きさの絵にするといいですよ」という。野口さんが旅先で買ってくる「好きだけど全部飾るのは難しいもの」については、場所を決めて、点数を絞って飾っている。気づいたら、その手前にチダさんが酒瓶を置いていたなどという攻防はあるものの、それもまた絵になっている。

【DATA & PROFILE】

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【PROFILE】
のぐち・あや/〈SISON GALLERy〉オーナー、〈ayanoguchiaya〉デザイナー。「服を着る喜びの記憶を大切にしたい」をテーマに、サステナブルな大人のおしゃれを提案する。

【DATA】
■人数:2人暮らし
■所在地:東京23区 駅徒歩10分
■築年数:43年
■居住歴:7年

(Hanako1209号掲載/photo : Keisuke Fukamizu text : Yuka Sano)

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