心身の健康知識を手に入れる。 睡眠の質を上げるためには?快眠セラピストが教える“快眠のススメ” LEARN 2021.04.30

コロナ禍で生活リズムが変わり、なんだか調子が悪い…。そんな人にこそじっくりと読んでほしい、心と体に役立つこと。今回ご紹介するのは快眠のすすめ。健康の土台を作る睡眠。ぐっすり眠って、すっきり目覚める。これができれば毎日は輝きを増していきます。4月28日(水)発売 Hanako1196号「自分を高める、学びの教科書。」よりお届けします。

睡眠が日々の疲れを癒し、心身をメンテナンスする。

ノンレム睡眠からスタートして、約90分周期で「体の眠り」と「脳の眠り」をリズミカルに繰り返しながら目覚めに向かっていくのが良質な睡眠の条件。
ノンレム睡眠からスタートして、約90分周期で「体の眠り」と「脳の眠り」をリズミカルに繰り返しながら目覚めに向かっていくのが良質な睡眠の条件。

睡眠は人生の3分の1を占める重要なもの。ところが、現代人の多くは睡眠不足や不眠など、眠りに関する悩みを抱えているといわれる。まずは、知っているようで知らない睡眠のメカニズムや効用について学び、快眠への足掛かりにしよう。快眠セラピストとして、これまで1万人以上の眠りをサポートしてきた三橋美穂さんは、「睡眠は生命維持機能の根幹を支えるもの。睡眠が変われば、人生が変わります」と、きっぱり。

三橋さんによると、睡眠が果たす主な役割は「心身のメンテナンス」。「私たちの体は37兆個の細胞でできていますが、日中の活動で傷ついた細胞を修復するのが睡眠の一番の役割です。全身の細胞が修復されると疲労が解消され、免疫機能も高まります。さらに脳機能も改善されるため、心身が正常に働くうえで欠かせない自律神経のバランスもしっかり整えられます」睡眠不足が慢性的になるとこれらの効用は得られない。体が重だるい状態になるほか、脳の認知機能を司る前頭葉の血流が滞ることで集中力や判断力が下がって仕事のミスが増えたり、気持ちがネガティブになったり、周囲の人との衝突が増えることもあるという。

「肌が荒れる、太りやすくなるなど美容面での影響も出てきます。また、アメリカの研究では、睡眠不足になるほど風邪をひきやすくなるという報告も。睡眠は生活に関わるすべての面とつながっているのです」快眠のためには十分に睡眠をとることが大切だが、単純に「長く眠る=快眠」ではなく、深度のバランスも重要と、三橋さんは言う。睡眠には体の眠りの「レム睡眠」と脳の眠りの「ノンレム睡眠」があり、両者が定期的に切り替わりながら、レム睡眠の時に記憶を整理、定着させ、ノンレム睡眠の時に成長ホルモンが分泌されて細胞の修復や疲労回復を促す活動をしている。「例えば、たっぷり寝たのに疲れがとれない、寝た気がしないという場合は、おそらく深いノンレム睡眠が不足して熟睡感が得られていないのでしょう。

一方、寝不足続きで深い睡眠だけがずっと続くケースも快眠とは程遠い。適度な睡眠時間のなかに、浅い眠りも深い眠りもバランスよくある。これが目指すべき良質な睡眠です」質の高い睡眠がとれていれば、すっきり目覚められ、日中は体が軽く頭もよく働くように。日中の心身の状態に目を向けることで睡眠の質がチェックできるのと同様に、自分の最適な睡眠時間を見つける時の指標にもなる。「睡眠時間は7〜8時間がもっとも健康リスクが少ないとされますが、体質や年齢などで変わります。自分のベストの睡眠時間を知るには、寝床にいる床上時間と日中のパフォーマンスを照らし合わせる方法がおすすめです」

睡眠の質を上げるために取り入れたい習慣。

現状、いい睡眠がとれていないという人も大丈夫。睡眠は毎日の小さな心がけで大きく改善できるという。「人は体内時計の働きで夜になると自然と眠くなりますが、朝に太陽光を浴びて体内時計を一度リセットさせることで睡眠と覚醒のリズムが整います。そして日中は活動的に過ごして、眠気のもとになる睡眠物質を脳にためていき、帰宅したら明るすぎない照明のもとでリラックスして過ごすこと。また、睡眠中に体温が下がると熟睡感が得られるので、夕方の運動や就寝前の入浴で体温を上げておくのも効果的です」

ベッド周りの環境づくりも、すぐに実践できる快眠への一歩。意識したいのは、寝返りのうちやすさ。睡眠中にスムーズに寝返りを繰り返すことで血液やリンパの流れが促進され、寝床の温湿度を快適に保つことができるそう。「寝具は専門店で体に合うものを見立ててもらうのもいいですが、今使っているものをバスタオルで調整することもできます。パジャマは汗をよく吸う締め付けのないものを選びましょう。どれもささいなことですが、快眠に近づく方法です。いろいろ試しながら、いい睡眠の形を見つけてほしいです」

快眠が心身の健康に役立つのは…

1.日中に傷ついた細胞を修復するため

睡眠中に分泌される成長ホルモンが、ダメージを受けた細胞を修復し、メンテナンス。各臓器の機能が正常に戻り、疲れも解消される。

2.脳機能を回復させるため

ノンレム睡眠の時に脳は休息し、レム睡眠の時に記憶を整理して定着させる。この繰り返しにより脳機能が回復して、心も整う。

3.免疫力をアップさせるため

新しい血液が作られるのも睡眠中。横になり、体が重力から解放されることで血液が生成されやすくなり、免疫力もアップする。

Teacher…三橋美穂(みはし・みほ)

快眠セラピスト、睡眠環境プランナー。講演や執筆活動のほか、寝具のプロデュース、ホテルの客室コーディネートも手がける。著書に『眠トレ!』(三笠書房)など。

(Hanako1196号掲載/illustration : Ema Mori text : Asami Kumasaka, Emi Suzuki, Moe Tokai)

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