真似したくなる、選び方、使い方。 「お茶の器」×ブランディングディレクター・福田春美さん/“器上手”のテーブルから学ぶ。 LEARN 2021.03.06

おいしいものを食べるとき、お茶を飲んでほっとするとき。お気に入りの器があるとうれしい。でも、どんなものを選べばいい?その秘密を知りたくて、器上手の方々のテーブルを拝見しに伺いました。2月26日(金)発売 Hanako1194号「ハナコの防災ガイドブック」よりお届け。

プロダクトからショップ、ホテルまで、ブランディングディレクターとして実に幅広く活躍する福田春美さんは、おもてなし上手としても業界で有名。ひとりでも、友人たちを招いても、家で過ごす時間を楽しむことができるのは、ひとつひとつ吟味して選んだ愛用の台所道具やたくさんの器があってこそ。福田さんに、とくに今ハマっているというお茶の器について話を伺った。

昨年〈コズミックワンダー〉で購入したという茶人・市川孝さんの茶器。「旅に持って行ける茶器です。入れ子になっているからコンパクトにスタッキングできるんです」。
昨年〈コズミックワンダー〉で購入したという茶人・市川孝さんの茶器。「旅に持って行ける茶器です。入れ子になっているからコンパクトにスタッキングできるんです」。

「ここ2、3年で夢中になっているのが中国工夫茶の世界。日本の茶道と違い、中国茶芸はとても自由なんです。飲むお茶の種類が、烏龍茶でも紅茶でもいい。茶の席だって、室内に限らず森の中でも、砂浜でもいい。奔放でありながら、心地いい空間や時間を共有する、もてなしの原点がそこにあるような気がします」茶の席に必要な道具をそろえるのも楽しいと言う。

「お茶を飲む小さな茶杯や茶壺、茶海、茶盤などテーブルの上に道具が並ぶ様にまずわくわくとときめきます。その景色が見たくてあれこれそろえているようなもの(笑)。道具を並べて、ゆっくりとお茶を淹れる。気に入った道具や器に触って、お茶を五感で味わう。家にいて、もっとも心が落ち着く時間です」茶器は中国のものにこだわることはなく、日本の作家のものも自由に気に入ったものを取り入れている。

「香りの高い発酵茶などは素焼きより匂いを吸収しにくい磁器のものを使うなどしていますが、基本的には好きなものを自由に組み合わせています。有田で中国茶器を作陶されている豊増(とよます)一雄さんや、土作りからこだわりを持つ清水志郎さん、若い作家ですが手びねりのプリミティブな作風の河合和美さんなど個性的な作家さんが好み。こちらから作家さんに依頼して、茶器を作っていただいたこともあります。伝統的なものもいいですが、さまざまな作家の個性あふれる作品を自分なりの見立てで、自由にそろえられるのも中国茶の世界の魅力かもしれません」

お茶のお供に簡単なおやつを作ることも。この日は中華風蒸しパンのマーラーカオを手作り。きび砂糖と隠し味のお醤油で懐かしく温かな味。
お茶のお供に簡単なおやつを作ることも。この日は中華風蒸しパンのマーラーカオを手作り。きび砂糖と隠し味のお醤油で懐かしく温かな味。

はじめてなら中国茶専門店〈LEAFMANIA(リーフマニア)〉など、セレクトが確かなショップを参考に目を養うのもおすすめと福田さん。それは、中国茶に限らず、あらゆる器選びに通じる考え方とも。「父はかなり熱心な器コレクターで、民芸の名作なども実家にたくさん並んでいました。それを素敵だな、すごいなと見ていたからこそ、自分はこういう器が好き、こういうものをそろえたいと自分の中で明確になっていったのだと思います」

そして、まずは1枚好きなものを買うことが大事、とも。「1枚いいものを買ったら、次はこれに合う取り皿を買おうとか、次は大皿が欲しいとか考えるようになるはず。シンプルな器もいいけれど、たまに自分ぽくないものを取り入れるとテーブルに新しいリズムができる。料理を盛って、気持ちいいと思えるものを選ぶこと。まずはそこからかな、と思います」

【FOR BEGINNERS】

【1】はじめてなら、まず白系の器を選べば失敗しない、と福田さん。自身も20歳のころツェツェ・アソシエの白いボウルを買ったのが器に凝るきっかけに。

【2】「白の器はアスティエ・ド・ヴィラットも集めています。欠けても金継ぎをしながら大事に使っていますね」

Profile…福田春美(ふくだ・はるみ)

『まずは白の器を選ぶと失敗しなくていいと思います』
『まずは白の器を選ぶと失敗しなくていいと思います』

ブランディングディレクター。プロダクトほかカフェギャラリー〈JINNAN HOUSE〉などのショップ、ホテル等のディレクションも手がける。

(Hanako1194号掲載/photo : Norio Kidera, Kiyoko Eto text & edit : Kana Umehara)

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