街を盛り上げる次世代たち。 街づくりで活躍する新世代が見据える“未来の銀座”とは?「大都市だけれど、個人商店から百貨店まで、結束力のある土地。」 LEARN 2020.11.15

老舗の名店が立ち並ぶ大銀座の中で、新世代の活躍だって見逃せない。古き良き街の魅力を理解しながら、新たな風を吹き込んでいる、〈黒田陶苑〉黒田瑠美さん、〈銀座もとじ〉泉二啓太さん、〈銀座松﨑煎餅〉松㟢宗平さんにお話を伺いました。新型コロナウイルス流行の影響で街ゆく人々の姿は大きく変わったが、銀座の人々が街を思う気持ちはより一層強くなっている様子。明るく楽しくそして現実的に、未来を見据える3人の目は輝いています。

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街の人出の減少が大きく報じられた銀座だけれど、「銀座玉手箱」など銀座で商売をする人々の情熱も注目を集めた。自宅にいながら街を訪れたときのワクワクを体感できるような商品を厳選して詰め合わせた「銀座玉手箱」は、発売と同時に注文が殺到。

同プロジェクトのメンバーでもある〈松崎煎餅〉の8代目・松﨑宗平さん、〈黒田陶苑〉の黒田瑠美さん、〈銀座もとじ〉2代目の泉二啓太さんは、未曾有の事態を迎えたこの街で柔軟に、希望を持って未来と向き合っている。

松﨑宗平さん(以下、松崎):やっぱり、今銀座を語る上で、新型コロナウイルス流行の影響は避けて通れません。我々もすぐ「何かできないか」と身近な人々に声をかけてオンラインミーティングを開きました。
泉二啓太さん(以下、泉二):人が街を訪れられない状態で「街として何が提供できるんだろう」と考えて、すぐに動き出したんですよね。最初は8店舗+1名が協力してくれて、商品の発送なども全部自分たちで。
黒田瑠美さん(以下、黒田):社長たちがみんな手作業で梱包して…。老舗が多いエリアだけれど、店主が街のことを考えてフットワーク軽く動く、象徴的な出来事だったなと思います。
泉ニ:最近ではありがたいことに、お菓子を詰め合わせた玉手箱が販売当日に即完売しました。今はまだイベントなども大々的にできない状態で、毎夏開催していた「ゆかたで銀ぶら」も中止しましたが、できることを探してやっていきたいですね。
松﨑:イベントができなくなってしまったのは残念だよね。黒田また状況が良くなったら、「クリスマスマーケット」とかやっていきたいですね。昔はパレードもやっていましたから。
泉ニ:確かに夜のイベントもまたやっていきたいですね。銀座通りには可能性があるので構想が膨らみます。
松﨑:ネットを使って街歩きができるような「バーチャル銀座」みたいなものも銀座らしい形でできたらいいな、と。
泉ニ:ワクワクしますね!
松﨑:近年の銀座は「ドレスアップして出かける街」だったけれど、2、 3年前に〈PLUS TOKYO〉や〈ハイ アットセントリック ギンザ〉〈Sony Park〉ができて少しドレスダウンす るのも似合う街になってきた気がし ます。そうして新しい人の流れが定着してきた頃に、この事態が起きたんだよね。
黒田:〈UNIQLO銀座店〉や〈Dover Street Market Ginza〉ができた当初は衝撃的でしたが、旗艦店が置かれることからもやはり世界から認識 される文化の発信地なんだなと思いました。弊店に訪れるお客様も「銀座ならではの買い物がしたい」とおっしゃる方が多いんですよ。今は特に、海外からの来訪者が少ない分、 国内のお客様がゆっくり銀座を楽しめるチャンスでもあると思います。

〈森岡書店〉
〈森岡書店〉

松﨑:ハイブランドや百貨店もあるけれど、個性豊かな専門店も元気な街だからね。〈森岡書店〉もそう。文化的な面も、大切な“銀座らしさ”だよね。僕が今日着ている〈WEWILL GINZA〉のように、もの づくりにこだわった日本のファッシ ョンブランドが、銀座に旗艦店を持ってくれるのはうれしい。

〈Ambar GINZA〉
〈Ambar GINZA〉

黒田:レディースのお店もできたらいいな。今年の夏にオープンした「GINZA STEPS」というガラス張りのスタイリッシュなビルは、全フロア様々なタイプの飲食店なのですが、2階の〈Ambar GINZA〉は、イタリアで修業を積んだ25歳のシェフが始めたお店で良かったですよ。
泉ニ:銀座で飲食店を営むのはまだまだハードルが高いと思われているので、若い方がレストランを始めるのはとても楽しみですね。そういう店がもっと増えるといいな。
松﨑:銀座の食に関しては、SNSで「#銀座エール飯」というハッシュタグを要チェック。そしてぜひ、実際に銀座で食事をしたりテイクアウトしたりして投稿してみてください。
黒田:あのタグはついつい見ちゃいます。やっぱりおいしいものにあふれている街だなと思います。
泉ニ:銀座は大都市だけれど、我々のような個人商店から百貨店まで、一丸となって、熱い思いで街を盛り上げることができる結束力のある土地だと思います。

今回登場したお店は…

1.〈松㟢煎餅 本店〉
創業は1804年、銀座に店を構えて155年の老舗煎餅店。職人が一枚一枚絵付けした看板商品の瓦煎餅「大江戸松﨑三味胴」や、カカオニブを使った「大江戸松﨑黒格子」などが人気だ。
■東京都中央区銀座5-6-9
■03-6264-6703
■11:00〜19:00 無休

2.〈銀座 黒田陶苑(ぎんざ くろだとうえん)〉
今年で創業85年を迎えた現代陶芸美術の専門店。日常使いできる若手人気作家の器から、人間国宝による作品までそろえる。2階の展示室では週替わりで企画展を開催。最近はWeb展覧会が好評。
■東京都中央区銀座7-8-6
■03-3571-3223
■11:00〜19:00 月休

3.〈銀座もとじ 和織・和染〉
銀座に2店舗を構えるうち、こちらは女性向けの織りと染めの専門店。種類豊富な反物や和装小物をそろえ、コーディネートの相談に乗ってくれるほか、着付けや手入れの無料講座も。
■東京都中央区銀座4-8-12
■03-3538-7878
■11:00〜19:00 第2・4火休

4.〈森岡書店〉
「一冊の本を売る」をコンセプトに、店主・森岡督行さんが厳選した一冊の本から派生した作品などを展示し、展示会を行いながら販売。茅場町の1号店では古書を取り扱っていた。
■東京都中央区銀座1-28-15 鈴木ビル 1F
■03-3535-5020
■13:00〜20:00 月休

5.〈Ambar GINZA〉
25歳のオーナーシェフ、糸井壮志さんによる、日本のだしのエッセンスを感じるイタリア郷土料理。
■東京都中央区銀座7-7-12 GINZA STEPS 2F
■03-4500-2359
■12:00〜14:30(14:00LO、土日祝のみ)、17:00〜23:00(22:00LO)月休
■8席/禁煙

Navigators…

今年、創業41年を迎えた〈銀座もとじ〉に集まった3人。「銀座玉手箱」の取り組みもあり、オンラインでもオフラインでもよく顔を合わせている。

・黒田瑠美(くろだ・るみ)/1992年、神奈川県生まれ。1935年に創業し、現在は厳選した日本の陶芸作品を扱う器専門店〈黒田陶苑〉に勤める。
・ 泉二啓太(もとじ・けいた)/1984年、東京都生まれ。高校卒業後、ロンドンの大学でファッションを専攻。帰国後、呉服店〈銀座もとじ〉の2代目に。
・松㟢宗平(まつざき・そうへい)/1978年、東京都生まれ。創業1804年の老舗〈銀座松﨑煎餅〉8代目。バンド「SOUR」のベーシストとしても活躍。

(Hanako1189号掲載/photo:Naoto Date text & edit:Rio Hirai)

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