新しい働き方に注目。 本業と副業を両立しながら働く女性3人のライフスタイルとは?彼女たちの「パラレルワーカー」という生き方。 LEARN 2020.04.19

最近よく耳にするフリーランスという働き方を実践し、副業だけに留まらず、いくつもの仕事を掛け持ちして働く「パラレルワーカー」が増えています。そこで今回はパラレルワーカーとして働く女性3人にインタビューしました。

1.飲食店経営など3つの仕事を掛け持ちするパラレルワーカー・荒井詢子さん

最近よく耳にする「フリーランス」という働き方を実践し、飲食店経営など3つの仕事を掛け持ちしている荒井詢子さん。「仕事をいくつか掛け持ちすることで、自分のやりたいことにどんどん挑戦できる」と話します。1年ちょっと前までは会社員だった彼女が、どのようにパラレルワーカーになったのか。また、複数の仕事をするためのヒントを教えてもらいました。

パラレルワーカー・荒井詢子さん

■3つの仕事の内容について教えてください。
「ウェブ広告の営業をフリーランスでやっているのと、飲食店の経営、日中間の語学留学のサポートの3つです。ウェブ広告の営業の仕事では、複数の企業と契約していまして、週に2〜3日はその企業のオフィスを行っています。あとの時間で残りのふたつの仕事をしています」

■3つも仕事をしていると、こんがらがったりしないですか?
「最初のころはやや戸惑いましたけど、今では慣れてしまいました(笑)。ただ、2週間先まで予定をしっかり立てていますし、TO DOリストも作ってやるべきことを明確にしています。あとは、予定を詰め過ぎず余力を残すことも大切です」

■会社員時代と変わった点はありますか?
「日ごとに自分の時間をコントロールできるのは、フリーランスになって変わったところです。いまやっている仕事はリモートでも作業はできるので、自由に時間を使いやすくはなっています」
「また、会社員時代は思ったように仕事を進められないもどかしさがありました。今は責任も大きいですが、自分で裁量権を持って物事を進められます。また、業種を限らずに働いているとをしていると、『これやってみない?』とまったく新しい分野から仕事が舞い込んでくるのが面白いですね」

パラレルワーカー・荒井詢子さん

■兼業することのメリットは?
「視野がとても広がったなと思います。前職では身の回りは業界の話題ばかりでしたが、社会全体のニュースに目が向くようになりました。社会的流れを見てどこにビジネスチャンスがあるかを考えられるようになりました。それに、これからは自分がやりたいことをやっていく社会になっていくと思うんです。ひとつの仕事だけだと可能性が狭まってしまう。仕事をいくつか掛け持ちすることで、自分のやりたいことにどんどん挑戦できるんです。思ったように仕事ができるので、ストレスフリーに働けています」

■会社員の時と比べて収入は上がりました?
「報酬額という意味では上がりましたが、出ていくお金も多いです(笑)。フリーランスって自分の強みとかスキルとかを活かした仕事なので自分の価値を自分で決められるんです。お取引を開始する前に、相手先が求めていること、それに対して私が提供できることを明確にさせて、ミスマッチが発生しないようにしています。その上で自分で対価を決定します。」

パラレルワーカー・荒井詢子さん

■これからの目標はありますか?
「世界中のどこにいてもお仕事ができる環境でいたいと思っている。ウェブ広告の営業とかも完全にリモートで作業できるくらいの、企業様から信頼を頂けるようになりたいですね。将来的には海外で仕事をしたいと思っています」

(edit:yuma tsujino text:osamu sasaki)

2.大学院研究員や、欧米の教育団体に所属。複数のコミュニティ所属で個性を磨く、世羅侑未さん

世羅侑未さん

■世羅さんのお仕事の詳細を教えてください。
「プロノイア・グループ株式会社にて、企業のカルチャー改革や未来創造に携わるCCO兼コンサルタントとして働いています。また、慶應大学大学院にて研究員として人のパフォーマンスが最大限に発揮される“フロー状態”の研究もしています。今年3月に、大学院の研究で得た成果とコンサルタントとしての実践経験を掛け合わせて『3倍のパフォーマンスを実現するフロー状態魔法の集中術』を出版しました。他にも、欧米の教育団体である“アクションインクワイアリーアソシエイツ(AIA))”の所属を通じた成人発達理論の実践や、南アフリカへの年に1回の研修企画を行っています」

世羅侑未さん

■それだけの仕事をこなすためのコツはありますか?
「”それだけの仕事”という感覚は、いまではあまりないんです。最初は確かに、量が溢れかえってどれも100%やりきれていないもどかしさを感じたこともありました。そんなとき、プロノイアの社長からこう言われたんです。『それぞれを別々に分けてやるのではなくて、全部を掛け合わせてやってみたら?』と」

「このアドバイスを受けてからは、”複数の仕事をやる”のではなく、”複数を掛け合わせて1つの仕事をする”ということを心がけるようになりました。それを続けると、いまではあまりこれが”本業”これが”副業”という感覚がなく、自分の関わる複数のコミュニティやプロジェクトのリソースを全部活かしながら世羅侑未として一貫した仕事をしていく、という働き方をしていると思っています」

世羅侑未さん

■本業の会社からの理解はありますか?
「副業と呼べる規模のものやそうでもない小さなプロジェクトもありますが、社長やメンバーには全部をオープンに共有するようにしています。たとえば、その日会社の外で得た機会や仕事、知識やインスピレーションは、その日のうちにコンサルの仕事や戦略に取り込んでいき、パートナー(クライアントのこと)にも会話や資料を通して提供していく。メンバーにもパートナーにも、できるだけ想像もしなかったような文脈からプロジェクトのヒントをもたらすことで、相手に価値や面白さを感じてもらえるよう努力しています」

■副業することのメリットは?
「複数のコミュニティに常に所属しておくことの目的は、ずっとお話ししてきた、相乗効果で各組織のパフォーマンスを高めることの他に、自分を変え続ける目的もあります。コミュニティが違うと、文化や成功の定義、アプローチが全然違います。一方の組織で歓迎される行為が、他方の組織では絶対にタブーなんてことはよくあります。混乱しますよね。この混乱が、私にいい緊張感や謙虚さを与えてくれるんです。自分がいま見えていることや知っていることだけを当たり前と思わない。価値観も選択肢も、いつも”360度広がっている”ということを忘れないでいさせてくれます」

■これから副業する人へのアドバイスはありますか?
「副業をする目的は、大きく2パターンあると思います。①今やっていることが“本当にやりたいこと”なのかわからないから、新しい好きなことを探すため②やりたいことは明確なので、別の強みを足すことでそれを加速させていくため。あるいは、最初の目的はもっと単純にお金稼ぎだったとしても、せっかく同じ時間と労力を投じるのであれば、新しい自分を作るチャンスに変えていって欲しいですね。そこに副業の楽しさがあると思います」

(edit:yuma tsujino text:osamu sasaki)

3.大手電機メーカーに勤めながら“社長”&“大学の先生”!?正能茉優さん

大手電機メーカーに勤めつつも、“社長”そして“大学院の特任助教”としても働く、正能茉優さん。そんな彼女に副業の魅力について聞くと、「副業は、普通の人でも自分の好きなことにチャレンジできる働き方だと思います。好きなことだけを仕事にして生きていくって、なかなか勇気のいること。だから普通の人はできないんです。でも、好きなこと“も”仕事にする副業なら、そんなに構えずに好きなことに挑戦できると私は考えています」という答えが返ってきました。正能さんが複数の職を持つパラレルワーカーになった経緯や、副業についての考え方を教えてもらいましたよ。

正能茉優さん

■3つの仕事の内容について教えてください。
「勤めている会社は、正社員として、週5日勤務で働いています。と同時に、学生時代に立ち上げた〈ハピキラFACTORY〉という会社の代表取締役を務めています。このお仕事は、平日の夜や、週末にしている感じです。また、去年の4月から慶應義塾大学大学院特任助教として、長野県小布施町で学生たちと新事業創造プログラムも始めました」

■社長を務めながら、本業を続けている理由は?
「兼業という道を選んだ理由は、オンリーワンの存在を目指したかったから。私たちミレニアル世代って、仕事も、家族も、友達も、自分の時間も、全部大事にしたい世代なんですだから人生のすべてを仕事に使わずに、いろいろなことに時間を使いたい。
でも、日常のちょっとしたことで我慢はしたくないんです。大金持ちになりたいという気持ちはないけれど、紅茶を飲む時はロイヤルミルクティーを飲みたい(笑)。そうすると、他の人より短い時間しか働けないのに、1.3倍くらいお金がかかる人生なんですよね。だから、1時間当たりの自分の価値を最大化するにはどうするかを考えて、オンリーワンの存在になろうと思いました」

■3つ目の仕事である、大学院の特任助教の内容について教えてください。
「2018年の4月から慶應義塾大学大学院にて特任助教をしています。学生たちと取り組んでいるのは『長野県小布施町での新事業創造プログラム』です。学生たちの好きなことや得意なことを小布施という町で活かして、仕事にしていくというプログラムになります。私自身の経験を考えた時、自分の手で仕事をつくるという経験、自分のやったことがお金になるという成功体験をすることは、人生の選択肢を増やすことにつながると考えています。
その選択肢をもったうえで就職したら副業という働き方になりますし、それ1本でいくとなると起業という選択肢にもつながってきます。私はこのプログラムで、そういった活動をしたい学生たちの相談と一緒に、事業のアドバイスをしたり、人を紹介したりする係りです。今年は、学生たちの取り組む全6プロジェクトを事業化していこうとしています」

正能茉優さん

■副業の魅力はどんなところにありますか?
「副業であれば、好きなこと“も”仕事にできることですかね。最近よく『好きなことで生きていく』なんて言われていますが、それって普通の人にとってはなかなかハードルが高い。『もし失敗したらどうしよう』と思っているうちに、やりたい気持ちも減ってきて、時間ばかりがたってしまうっていう人がほとんどだと思います。ただ副業なら、失敗しても戻る場所がある。中長期的に成功を目指せばいいし。好きなこともやりたいなって思ったら、両方やったらいいじゃないかなと思います」

■副業の収入面のメリットはありますか?
「結果論ではありますが、そこももちろんあると思います。私はいまのところ、会社員、社長、特任助教、と3つの収入源があるのですが、どれかがうまくいかなくなっても食べていけるからそこはありがたいですね。ただ、かといって、もっとお金持ちになりたいわけではないんです。ラーメンには煮卵つけたいチャーシューつけたいとか、ちょっとした贅沢を迷わないくらいのお金があればうれしいです」

正能茉優さん

■副業をするうえで注意することはありますか?
「今やっている仕事が好きなことじゃない場合、お金を稼ぐことだけを目的に副業する“売れない芸人さんのバイト”モデルの副業は、あまりおすすめしないです。お金が第一義にくるのであれば、本業でお金をもっともらえる方法を考えた方がいい。
だって、アドオンの考え方で収入を増やすとなると、両方やりたいわけじゃないのに、ずっとその働き方をすることになってしまいますから。私のおすすめは、まずはお金をとりあえずおいて、好きなことをやってみること。それが結果として収入アップにつながったり、その仕事だけで食べていけるようになったりしたら幸せかなと思います。」

(edit:yuma tsujino text:osamu sasaki)

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