「美術館巡りに目覚めて、日常の楽しみが拡大。」 アートテラー・とに〜さんが語る、美術館の楽しみ方とは?旅行も兼ねて楽しめる全国おすすめ美術館も。 LEARN 2019.11.20

ジャンルはなんでも、それを心から好きな人におすすめされると俄然興味が湧いてくる。未知との遭遇はいつだってワクワクするもの。アートテラー・とに〜さんの「偏愛」を、とくとお楽しみください。

美術館巡りに目覚めたら、日常の楽しみが拡大した。

アートテラー・とに〜/お笑い芸人としてデビュー後、世界で唯一の職業「アートテラー」として活動開始。コンビ解消後、アートテラーに専念し「美術を楽しく、もっと身近に」をテーマにトークイベントやアートツアーを開催している。
アートテラー・とに〜/お笑い芸人としてデビュー後、世界で唯一の職業「アートテラー」として活動開始。コンビ解消後、アートテラーに専念し「美術を楽しく、もっと身近に」をテーマにトークイベントやアートツアーを開催している。

美術をおもしろく、わかりやすく解説する〝アートテラー〞として活動するようになったのは24歳のとき。その2年くらい前に、当時お笑いコンビを組んでいた相方に誘われてフェルメールを観に行ったのがきっかけで美術に興味を持ったんです。とにかく相方が絵画を観てボケるんですよ、勝手にセリフあてたりして。美術ってつまんないと思ってたけど、そうやっておもしろいところを見つければ楽しいんだって。当時は映画も好きで、レビューを書いていたので、そのノリで展覧会の感想を書くようになりました。映画と違ってネタバレの危険もないし、解釈だって人それぞれだから、〝自由に書けるぞ〞って。それで、僕はなんておもしろいものを見つけたんだと夢中になりました。都内の美術館を巡るようになって気づいたんですが、東京だけでも100以上のアートスポットがあって、しかも毎週のように世界中から名作が届く珍しい国なんです。今年だけでもクリムト、ゴッホ、バスキア、ミュシャと錚々そうたる作品が来ている。観に行かないともったいない。美術館巡りが趣味になると楽しみがすごく増えます。僕は仕事柄、年間700〜800くらいの展覧会に行くけどそれでも観きれないぐらいですから。

「美術鑑賞時に単眼鏡を使うと肉眼では気づかなかった繊細な表現に気づいておもしろい」。Vixen アートスコープ(とに~モデル) 12,000円。
「美術鑑賞時に単眼鏡を使うと肉眼では気づかなかった繊細な表現に気づいておもしろい」。Vixen アートスコープ(とに~モデル) 12,000円。

さっき、僕は美術をおもしろく伝える仕事だと言いましたけど、結局、永遠の前座なんです。本番は展覧会を観ること。解説や見どころは話すけど、本番をどう楽しむかはその人次第。だから大事なのは、自由に観ることです。つまんないと思ったら〝つまんない〞でいい。わかろうとしなきゃいけないという思い込みを捨ててください。極論を言うと、作品をノーヒントで観てわかるなんて、ほとんどないですよ。作られた時代背景や作者の人となりを知らないと、この作品がどれだけすごいのかわからない。事前に情報を仕入れておくと深く楽しめます。あとは、誰かと一緒に行くこと。感想を共有することで新たな発見がある。仮につまんない展覧会だったとしても、誰かと一緒だったら思い出になります。「笑っちゃうくらいつまんなかったね」って。特にカップルには美術館デートを勧めます。作品を前にしてつまんない話しかできない男はダメですよ(笑)。僕は10年くらい、10〜15人ほどのグループを組みアートツアーをやってるんですが、今までここで出会ったカップルが十数組結婚しています。お互いの価値観だったり、違う意見を認め合えるかどうかがわかるんじゃないですかね。あとは観光を兼ねて行くのもいい。福島は絶景の紅葉スポットがあり、熱海は温泉も入れる。軽井沢は食も買い物も楽しめますから。

旅行も兼ねて楽しめるおすすめ美術館
〈MOA美術館〉驚くほど長~いエスカレーターが話題。

MOA美術館全景画像

日本美術を中心に所蔵する私立美術館。2017年に日本の伝統的な素材を使って生まれ変わった。「長さ約200mもある長いエスカレーターにビックリ。展示室には光の反射がほとんどないガラスを使用していて、作品の迫力をダイレクトに堪能できます」(とに~さん、以下同)。

〈MOA美術館〉
■静岡県熱海市桃山町26-2 

〈諸橋近代美術館〉美しい紅葉とダリの彫刻を堪能!

gaikan

紅葉で有名な五色沼湖沼群の近くに位置する美術館。諸橋廷蔵氏が蒐集したサルバドール・ダリのコレクションを中心に展示する。「ダリの彫刻作品点数は世界屈指。アリのマグカップなどシュールなダリグッズもある。中世の馬小屋をイメージした建物にも注目」。

〈諸橋近代美術館〉
■福島県耶麻郡北塩原村大字桧原字剣ガ峯1093-23 

〈軽井沢千住博美術館〉自然や地形と一体化した不思議な空間。

撮影:阿野太一 ©軽井沢千住博美術館
撮影:阿野太一 ©軽井沢千住博美術館

NYを拠点に活動し、幅広い人気を誇る日本画家・千住博の初期から近作約50点を中心に展示。建物の設計は西沢立衛(りゅうえ)。「美術館の中に庭があったり、土地の傾斜を生かして床が斜めになっていたり。屋内と軽井沢の自然が見事に融合した美術館です」。

〈軽井沢千住博美術館〉
■長野県北佐久郡軽井沢町長倉815 

(Hanako1178号掲載/photo : Natsumi Kakuto text : Mariko Uramoto)

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