本読みのプロおすすめ!怪奇にホラー、サスペンス…背筋が凍る本7選
2018.10.12

秋の夜長に読みたい! 本読みのプロおすすめ!怪奇にホラー、サスペンス…背筋が凍る本7選

怪奇にホラー、サスペンス…本読みのプロがおすすめする、背筋が凍る本とは?瀧井朝世さん、青野賢一さん、豊嵜由美さん、トミヤマユキコさんをナビゲーターにお迎えしてお届け!

編集部 / Hanako編集部

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1.最東対地『夜葬』

想像したら負けるほどのえぐい描写が続く、ノンストップオカルトホラー。スマホ、コンビニ本などポップな小道具を使って畳み掛けてくる《どんぶりさん》からもう逃げられない!(角川ホラー文庫/600円)

グロテスクな要素てんこ盛りなのがこの第23回日本ホラー小説大賞読者賞受賞作。山間の村に伝わる、死者から顔をくりぬいて地蔵にはめこむ《どんぶりさん》という風習、突然勝手に発動して恐ろしいものを呼び寄せるスマホのナビゲーションなど、怖さのツボをよく分かっている設定が巧み。とにもかくにも心の中で「キャーキャー」叫びたくなる恐怖を味わいたい人はぜひ。(瀧井朝世)

2.E.T.A.ホフマン『砂男/クレスペル顧問官』

眠らない子どもの目に砂を投げ込む《砂男》の忌まわしい記憶を抱えた男の物語は、サイコ・ホラーの原点とも称される名作。「大晦日の夜の冒険」と3作を収録。(大島かおり・訳/光文社古典新訳文庫/880円)

「くるみ割り人形」を筆頭に、バレエ作品の下敷きになっている小説も多いホフマンの代表作を収めた一冊。砂男の言い伝えに支配された青年が、どんどん狂気を帯びていく「砂男」は、レンズ、自動人形、窃視といった、江戸川乱歩が好みそうなモチーフが頻出するサイコ・ホラーの傑作だ。ほか2 編にも共通しているのは、音楽家を目指していたホフマンの音楽愛である。(青野賢一)

3.ブライアン・エヴンソン『ウインドアイ』

外からは見えるけど中からは見えない。《彼》は覚えているけれど、誰も妹の存在を知らない。25の短編が、読者の実存までも揺るがせにやってくる。(柴田元幸・訳/新潮クレスト・ブックス/2,000円)

慣れ親しんでいるはずの家の、外からは見えるのに、中に入ると存在しない窓に気づいてしまった幼い兄妹。その身にふりかかる出来事を描いて、じわじわと恐ろしい表題作など、収録作すべてが、それまで盤石と信じていた現実を気味の悪いゼリーのような何かに変えてしまう。何もかもが新しく、何もかもが不可思議で蠱惑的で危険で、背筋が凍る25作品なのだ。(豊嵜由美)

4.舞城王太郎『淵の王』

闇に、グルニエに、穴に怯えながら《光の道》を歩もうともがく登場人物たち。見えなくても見えても恐ろしい強敵に挑む背中から目が離せなくなり、一瞬で物語の内側に連れて行かれる。(新潮社/1,500円)

デビュー以来、悪しき何かに敢然と立ち向かう誰かを描き続けてきた舞城が、今回ターゲットにしているのは《闇より暗い深黒の、何でも無い、形も無い暗黒の穴》。基本、「もう一生、屋根裏部屋や納戸には行きません!」となるほど怖い話なんだけど、最終的には泣けてきちゃうのがキモ。凝った語りの構造ながら、感情レベルで読者をぐいぐい引きこんでいく新感覚ホラーだ。(豊嵜由美)

5.ハン・ガン『菜食主義者』

《夢を見たの》と言って肉を食べることをやめた主婦・ヨンヘ。刻々と変わり続ける彼女を見つめる家族の視点にゾクリ。3 つの連作が流れるように続く、韓国文学の最先端。(きむふな・訳/クオン/2,200円)

突如としてベジタリアンになってしまった妻のヨンヘ。戸惑う夫が何を訊ねても、返ってくるのは要領を得ない言葉ばかり。親類縁者みんなで彼女を治そうとするのですが、完全に焼け石に水。その一方で、狂気のヨンヘに言いようのない魅力を感じる人もいて……。静かに、しかし確実に壊れていく人間をただ見ているしかない、この救いのなさが、本当に恐ろしい!(トミヤマユキコ)

6.倉橋由美子『大人のための怪奇掌篇』

純文学作家ならではの美しい言葉の連なりは、クラシカルな怪奇的世界を魅力的に見せてなお恐ろしい。食人あり吸血あり、異形もエロスも狂気も入った20の掌篇は、まさに大人仕様。(宝島社文庫/476円)

耽美的なムードが漂う吸血鬼もの「ヴァンピールの会」、ろくろ首の翻案「首の飛ぶ女」、変身譚「獣の夢」、食人についての対話がユーモラスな「カニバリスト夫妻」など、じわりと背筋が寒くなる作品集。ちょっとした日常生活とのズレが生む闇を覗き込んでいるような怖さがありつつ、絶妙に社会のタブーに触れているあたりはさすがだ。通底するモダンな雰囲気もいい。(青野賢一)

7.澤村伊智『ぼぎわんが、来る』

《ぼぎわん》は標的に狙いを定める。《ぼぎわん》は間違えない。家を訪ね、電話をかけ、名前を呼んで追ってくる。オカルトホラーな設定も怖いが、4 つの平仮名がトラウマ級に怖い!(KADOKAWA/1,600円)

最終選考の前段階にあたる予備選考会で全員がAをつけ(おそらく史上初)、最終選考会では全選考委員が絶賛したという第22回日本ホラー小説大賞受賞の注目作。得体のしれぬ訪問者《ぼぎわん》は想像力を掻き立てる怖さ。その恐怖にさらされるイクメン夫を中心とした一家の物語と思いきや、第一章の最後で「なぬ!」という展開に。構成のうまさにも唸らされる一冊。(瀧井朝世)

瀧井朝世(たきい・あさよ)/ライター。TBS系『王様のブランチ』本コーナーのブレーンを務める。WEB本の雑誌「作家の読書道」など連載のほか、作家インタビューや書評の寄稿も多い。

青野賢一(あおの・けんいち)/〈ビームス創造研究所〉クリエイティブディレクターとして、主に社外のクライアントワークを行う。『ミセス』『CREA』などの女性誌でも連載を持つ。

豊嵜由美(とよざき・ゆみ)/書評家。文芸誌から女性誌まで多数の連載を持つ。著書に『ニッポンの書評』『まるでダメ男じゃん!「トホホ男子」で読む、百年ちょっとの名作23選』など。

トミヤマユキコ(とみやま・ゆきこ)/ライター、研究者。少女漫画、文芸、サブカルにまつわる執筆や連載を抱える。著書に『パンケーキ・ノート─ おいしいパンケーキ案内100』がある。

(Hanako1127号掲載/text:Hikari Torisawa)

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