【精神的自立編】 元AV女優・現社会学者×尼さんが、女子の悩み相談!「実家を出てみるべき?」「占いとの上手な付き合い方は?」 LEARN 2020.01.07

仏教の教えを伝え、人々を導いてきた尼僧・掬池友絢さんのお話を、あまたの女性の悩みに斬り込んできた作家の鈴木涼美さんが聞きました。Hanako読者のお悩みと向き合った、ふたりの答えとは。

Q.今まで一度も実家を離れたことがありません。30歳になるこの機会に思い切って一人暮らしを始めたほうがいいのか、悩んでいます。(食品関係PR30歳)

掬池:迷っているくらいなら、やってみればいいと思いますよ。きっと気付くことは多いでしょう。

鈴木:そうですね。イギリスの小説家であるヴァージニア・ウルフも「女性が小説を書こうと思うなら、お金と自分ひとりの部屋を持たねばならない」と言っているくらいです。私も一人暮らしが長いので、1人だと自分で自分を律し、己と向き合わざるを得なくなることはよく知っています。でもこの方がもしも「世間知らず」や「自分に逸脱した経験がないこと」を悩んでいるならば、それは空虚です。私は「何かを経験するための経験」はわざわざするものでないと思う。何もしなかった人だって「何もしなかった」という経験を得ているわけだし、ずっと実家にいた人にしか知り得ないことがあります。どんな環境かということよりも、自分が置かれた環境で、いかに自分について向き合えるかが重要です。

掬池:仏教的にも、内省することはとても大切。仏様の言葉で〝人は繋がりのなかで生かされている〟ということを表す「因縁」という言葉があります。人生とは苦しいもので、求めるのは自分だけの幸せではなく、「周りの人と一緒により善くあること」「周りの人たちの力になること」。そのために己を省みるのが内省です。親元を離れて1人で暮らすのは、自分が人によって生かされていることを改めて感じるのにとても良い経験だと思いますよ。

Q.占いが好きです。刺激が欲しい時など何かと理由をつけて占いに行ってしまうのですが、結局それだけじゃ運命は変わらないですよね。(アパレル26歳)

掬池:仏教には、「運命」という考えはないんです。「諸行無常」というように、全てのことは定まらずに変わっていくもので、原因があるから結果がある。未来を予測するよりも、「与えられた時を一生懸命生きていきましょう」ということです。

鈴木:占いが好きな人は、決定権を外に委ねたいという思いがあるのかもしれないですね。選択肢が全くないのは不自由だけど、選択肢が豊富に用意されている現代で、常に選択を迫られることに疲弊する気持ちもわかります。占いや宗教といった〝何か大いなるもの〟に「こうしなさい」と言ってもらうのが楽なことってありますよね。

掬池:占いは行動の指針を示してくれるものですよね。仏教には、「戒かい」という生活の指針になる決まりがあります。宗派によって厳しさも様々ですが、「戒」が多い宗派で〝たくさんの「戒」に守られている〟という考えの人もいるようです。あとは、日々良い行いをして「徳を積む」という考え方がありますね。決定権を外に委ねて運命に懸けるのではなく、「戒」を心得て、徳を積むことで幸せを掴むという考え方もあります。

浄土宗蓮馨寺副住職・掬池友絢さん「おごることなく、自分自身を見つめると答えが見えてきますよ」

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【PROFILE】
1975年 静岡県生まれ
1997年 大学卒業後、僧籍取得
2000年 サンフランシスコへ留学
2012年 住職塾で寺院MBAプログラムを学ぶ
2015年 仏教機関の国際部に勤務

浄土宗蓮馨寺副住職。大学卒業と同時に僧籍を取得、その後生家である蓮馨寺を手伝いながらアメリカへ留学。現在は仏教組織で国際関連の業務を担当する。仏教の良さを伝え広めるべく様々な活動に取り組んでいる。蓮馨寺で「お念仏の会」や「お寺BBQ」といったコミュニティ活動を行うほか、2カ月に1回、寺子屋ブッダの「友絢さんとお茶を飲む日」で女性向けお話し会の講師も務めている。著書に『泣きたいときには泣いていい』(講談社)がある。

社会学者、作家・鈴木涼美さん「仏教の教えと同じで内省すること。あと、知識にも助けられます」

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1983年、東京都生まれ。大学在学中にAVデビュー。東京大学大学院修士課程修了後、日本経済新聞社を経て現在は執筆活動などを行う。近著は『すべてを手に入れたってしあわせなわけじゃない』(マガジンハウス)。

(Hanako1180号掲載/photo : Maruo Kono illustration : Chiiko Hoshino text : Satoko Muroga, Rio Hirai)

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