【かき氷の歴史と科学】待ちに待ったシーズン到来!“おいしさの秘密”を専門家が徹底解説。
2019.05.26

今さら聞けない!最近のかき氷がキーンとしないのは何故? 【かき氷の歴史と科学】待ちに待ったシーズン到来!“おいしさの秘密”を専門家が徹底解説。

かき氷は高貴な食べ物だった!? どうして今のかき氷はキーンとしない?知ってるだけで、かき氷がおいしくなる歴史&科学のミニ知識をQ&Aスタイルでご紹介。今さら聞けない素朴な疑問も解決!

編集部 / Hanako編集部

「東銀座にある編集部からお届けします!」

編集部
  • Facebookでシェア
  • Twitterでシェア
  • LINEでシェア

【歴史編】

古の女流作家から将軍、名だたる文豪まで虜にしてきたかき氷。その熱狂ぶりがうかがえるエピソードを集めました。

Q1.かき氷って、いつ頃から日本にあるの?
A.平安時代から人気でした。

氷+シロップという、今のかき氷に近いものが最初に登場するのは1,000年以上も前。清少納言は『枕草子』で、「削った氷に甘づらをかけ、金属の器に入れたもの」を、「水晶や藤の花と並ぶ上品なもの」とつづっています。甘づらは当時の代表的な甘味料で、氷と並んで貴重だったため、平安時代のかき氷は超高級スイーツだったといえそう。ちなみに近代では、石川啄木が、ある新聞連載で「氷を食べて暑さをやわらげようとするのは『自然に対して反逆してゐる』」と辛辣に述べています。ところが日記には、たびたび氷を食べていた記述が…。隠しきれない“かき氷愛”が伝わりますね。

参考文献:『和菓子を愛した人たち』(虎屋文庫/山川出版社)

Q2.江戸時代はお殿様が食べていたって本当?
A.はい。加賀藩から氷が献上されていました。

多くの逸話のなかでも、加賀藩(現在の石川県)が雪氷を献上していたエピソードが有名。宮中で氷を食す、旧暦の6月1日(現在の7月1日)の「氷の朔日(ついたち)」に合わせ、選び抜かれた“お氷”飛脚たちが金沢城から本郷の加賀藩上屋敷まで雪氷を猛スピードで運び、江戸城へ献上されたと伝えられています。この“御雪献上”の風習を再現しようと、数年前に石川県の高校生らが、東京まで自転車で雪氷を運ぶことに成功して話題に!また、金沢市湯涌温泉では、毎年6月30日に開かれる「氷室開き」で雪氷を取り出し、加賀藩と縁のある東京都板橋区と目黒区に贈呈しています。

取材協力:金沢市経済局営業戦略部観光政策課

Q3.初めてのかき氷屋さんは、いつできたの?
A.今から148年前の明治2年(1869年)です。

町田房造が、横浜の馬車道に開いた氷水店が最初のかき氷屋といわれています。わざわざ函館から氷を運んでいたそう。1887年には、村上半三郎が氷削機を発明し特許を取得。また、1891年刊の画集『東京芸者の一日』には氷水店で涼を取る女性が描かれ、この頃にはかき氷屋がおしゃれスポットになっていたことが見てとれます。さらに、日光市では1877年頃に〈三ツ星氷室〉、1894年に〈松月氷室〉が、秩父地方では1890年に〈阿左美冷蔵〉と、東京近郊で天然氷屋さんが次々に創業。これらから、明治後期の1900年頃には、かき氷が庶民に親しまれていたと考えられそうです。

参考文献:『横浜もののはじめ考 第3版』(横浜開港資料館編)

Q4.氷室ってなんですか?
A.自然環境を利用した〝天然の冷蔵庫〟です。

氷室は、洞窟内や夏でも涼しい山中の地面を掘って作られ、冬にできた氷を茅やおがくずで覆い、夏まで保管するのに使われていました。その最古の記録が発見されたのは1988年。奈良時代の権力者だった長屋王邸跡から、当時の氷室の規模や氷塊が運ばれた日付など、王族による氷室利用を記した木の札が出土したのです。氷室があったとされる奈良県天理市福住町では、町おこしを兼ねて氷室を復元。毎年2月に氷を収め、海の日に開かれる「福住氷まつり」で取り出します。3トン中、夏まで残るのは最近では数%。以前はかき氷として振る舞われていたこともあるので、復活を期待!

取材協力:天理市観光協会

【科学編】

最近のかき氷がおいしいのは、きちんとした理由があった!〝おいしさの秘密〟を、科学的に徹底解説します。

Q5.溶けかけの氷を削るとおいしいって本当?
A.本当です。

一口に氷といっても、温度によって状態が異なります。マイナス1~2度、表面がうっすらと濡れているような氷は、やわらかい状態。刃を当てると、かつお節のようにすーっと薄いスライス状に削ることができるので、おいしさの必須条件ともいえる、ふんわりとした食感の氷を作ることができます。一方、冷凍庫(マイナス20度くらい)から出したての氷は硬く、削っても粉々になってしまい、じゃりじゃりとした食感になりがちです。ふんわり氷は温度が決め手。そのため、かき氷店では、しばらく氷を出したままにして温度を調整している様子がよく見られるのです。

Q6.今さらですが、最近のかき氷がキーンとしないのはなぜ?
A.〝ふわっと軽やか〟な氷だから。

キーンという痛みは、口の中へ想定以上に冷たいものが入ったことによるもの。冷たい刺激が強すぎて、誤って“痛み”として脳に伝わると考えられています。ところが、ふんわりと削った最近のかき氷は、同じ一杯でも昔と比べて氷の質量が少なく軽い。一度に口に入る量も少なく、ふんわりした食感なので口溶けも速い。だから、口の中が冷たくなりすぎず、キーンともなりにくいのです。また、Q5の解説どおり、フワフワの氷は、氷としては温度が高めというのも冷えすぎないポイント。とはいえ、一気に口に入れず、ゆるりと味わうと、よりおいしくいただけます。

Q7.天然氷や純氷のかき氷って、どうしておいしいの?
A.不純物のない透明な氷は、きれいに削れるから。

水が氷になるときは、水分子が規則正しく並んで細かい氷の結晶ができ、その結晶がつながって大きな塊となっていきます。このとき、結晶の間に空気などの不純物が挟まった状態で固まると不透明に、不純物がない場合は、天然氷や純氷のような透明な氷ができます。透明な氷は見た目どおり、硬さや品質も均一なので、かき氷器が均等に氷を削ることができ、ふんわりとしたおいしいかき氷になるのです。一方、不透明な氷は、途中に凹凸があったり、一部だけ早く溶けたりと硬さも状態も一定ではないことが多いため、ふんわりと削ることは難しく、かき氷には適していないといえます。

Q8.透明な氷はどうしたらできるの?
A.きれいな水をゆっくりと凍らせましょう。

まずは水選びから。不純物が比較的少ないといわれる軟水や沸騰させた湯冷ましの水がよいでしょう。さらに、ゆっくりと凍らせることが重要です。急激に冷やして先に表面が凍ったりすると、水に含まれる不純物が押し出されないままの白い氷が出来上がってしまいます。天然氷は、あの厚みにするまで2週間ほどかかるといわれていますし、結氷後も毎日のように表面の掃除を欠かしません。これは、表面の汚れと同時に押し出された不純物を取り除くため。また、製氷器の氷も、表面を水で洗い流して不純物を除去しながら凍らせるため、結氷まで48時間前後かかるのが一般的です。

今回教えてくれたのは…鈴木 徹(科学編)

東京海洋大学学術研究院 食品生産科学部門教授。専門は食品の冷凍・解凍学。最新監修書は『解凍テクがおいしさのコツ!冷凍保存レシピBOOK』(朝日新聞出版)。

(Hanako1138号掲載/illustration : Manako Kuroneko text : Eri Tomoi)

編集部

今年こそかき氷食べたい!

  • Facebookでシェア
  • Twitterでシェア
  • LINEでシェア
TOPに戻る