あなたはどう思う? 精神科医・星野概念のあまから恋わずらい No.10 「ギフトと恋」 FOOD 2018.12.23

Hanako本誌で連載中の精神科医・星野概念さん「あまから恋わずらい」を掲載。今回は、1167号「全国、いま絶対に行きたい店」特集よりお届けします。

今回のテーマは、「ギフト」と恋

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今回のHanakoの第二特集は「ギフト」。高校生の時、一度だけ恋愛をしました。友人に紹介された人でしたが、学校も住む県も違いなかなか会えず、3カ月後の初デートは原宿でした。彼女には、歩いていると突然走り出すという珍しい癖があって、10メートル程走った後に笑顔で戻ってきますが、そんな人、僕はほかに知りません。そんな風に走ったり戻ったりするうち、キャットストリートでフィギュアの露店を見つけました。当時フィギュア集めに凝っていた僕はふと思いついて露店に寄り、アメリカの菓子会社のマスコット「ドーボーイ」のフィギュアを購入しました。そして、彼女がその謎加減とかわいさを気に入ると確信して、即興の贈り物をしたのです。今でも「粋だね!」と褒めたくなる自分の振る舞い。しかしなんと彼女は「キモい」と一言残し、走り出しました。え、こいつのどこがキモいの?ドーボーイを握って立ちつくす僕。その時の彼女は走ったまま戻ってきませんでした。まだ携帯電話を持たない時代。帰ってから彼女に電話すると、同じ学校の人が好きなので別れたいと言われました。「ごめん変な贈り物して」「あいつは関係ないの。もうダメなの」。あいつじゃなくて、ドーボ……。ていうか、キモいのは僕だったのか。それ以来、ギフトの正解を見失い、やたらと色々贈ったり、何も贈らなかったりと、ギフト迷子です。

星野概念 ほしの・がいねん/精神科医として総合病院に勤務。雑誌・webでの執筆業や、音楽活動も行う。いとうせいこう氏との共著『ラブという薬』が発売中。

(Hanako1166号掲載/illustration : Misaki Tanaka text : Gainen Hoshino)

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