次世代の職人たちに聞いた、「京都で和菓子をつくる」ということ。 旬のフルーツやハーブを使った ストーリー性のある和菓子。堀川五条〈菓子屋のな〉の名主川千恵さん FOOD 2022.10.08

老舗の和菓子店がひしめく京都で、新風を起こしている若い職人たち。王道で勝負する〈まるに抱き柏〉と、旬の果物やハーブを使い、ストーリーを大切にする〈菓子屋のな〉のふたりに聞いた、京都と和菓子について。

抽象的に表現する京菓子に、菓銘で広がりをもたせたい。

森鷗外翻訳のアンデルセン小説をモチーフにした代表作「アントニオとララ」など、文学や歌から着想を得た物語性のある和菓子を創作する名主川千恵さん。きっかけは、長年勤めた老舗和菓子店〈長久堂〉でのこと。当時の工場長が高齢ながら好奇心旺盛で多趣味。つける菓銘が素敵だったり、見た目も斬新で、大きな刺激を受けたそう。「秋の風を指す『色なき風』という季節の言葉を知って、自分でも調べるようになりました。京都の生菓子は抽象的な表現で、菓銘から思いをめぐらせられる。だから菓銘が大事なんだと思います」
 

名主川さんの和菓子は、材料に旬のフルーツやハーブ、洋酒などが使われているのが特徴。それは、一緒に店を営む、イタリア料理のシェフである夫の影響が大きいそう。「色、香り、食感など、季節の食材の特徴をどう生かすか。見た目と味わい、ストーリーを丸ごと楽しんでほしいです」。あまり和菓子に使われない材料を使うことも多いため、試行錯誤の毎日。気をつけているのは、てらいのない食材の生かし方、見た目と味のバランス、季節に合ったストーリーかどうか。

名主川さんのつくる新たな和菓子の世界をきっかけに、和菓子に興味を持つ人は確実に増えている。喫茶コースやイベントなど、今後の展開も楽しみだ。

お店は堀川五条の交差点からすぐ。
お店は堀川五条の交差点からすぐ。

2020年にオープンした、名主川千恵さんが夫婦で営むお店。旬の果物やハーブ、洋酒を使った独創的な和菓子が評判。

京都府京都市下京区篠屋町75 
12:00~18:00(売り切れ次第終了)
日月休

photo : Makiko Takemura text : Natsuko Konagaya

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