〈Otis〉のサラミ
2021.05.08

美味しいは生き方、未来にもつながる 東京・墨田区で作る〈Otis〉の本格サラミ。/フードディレクター・野村友里さんが信頼する美味しさと、生産者たち。

フードディレクター・野村友里さんのおすすめ食材を紹介する、3月29日(月)発売『会いたくて、食べたくて 私が信頼する101の美味しさとその生産者たち』より、〈Otis〉のサラミをご紹介します。

〈Otis〉のサラミ

〈Otis〉のサラミ

表面に白カビ、内部を野生酵母で発酵させたSumidaホワイト1本550~600円。イチジクやレーズンを入れたものなども。
■東京都墨田区東向島3-32-4
■03-6657-1384
■11:30~19:00(土~18:00)日月休

〈Otis〉のサラミ

ワインのインポーターとして19年働いている間に、イタリアやフランスのワイナリーへと買い付けに出かけると、たびたび農家さんから自家製の生ハムやサラミが出されたと言う大登重克さん。こんな簡単に作っているのかと興味を惹かれ、発酵が進みすぎない冬限定で、自分でも作ってみることに。まさしく趣味が高じて自分の店〈Otis〉を出すことになった大登さんは、サラミが発酵食品であることを伝えたいと言います。

「いわゆるサラミは、培養した乳酸菌をひき肉に混ぜて発酵させます。僕は、果樹などの酵母と乳酸菌を使ったどぶろくのようなものを造ってひき肉に混ぜている。いわば肉を醸造しているようなイメージですね。単一の菌ではなく、複数の菌が互いに関係して、群れの共生が大事だと思っているんですね。どの菌がリーダーになっていくのかは、素材によって変わる。それが、味の奥行きを生み出すと思っているんです」

ブルーチーズやイチジクを混ぜ込んだものなど、素材が変われば、活躍する菌が変わる。その環境を用意するのが、大登さんの仕事。では、主な素材たる豚肉はどんなものを使っているのかといえば、脂の滑らかな岩いわちゅう中豚。「できるだけ新鮮な肉を使いたいんですね。なので、岩手で育てられて、東京で処理された豚を仲卸さんに届けてもらってます。東京で店を開くからには、東京で加工された豚を使いたかったんです」

生ハムやサラミを扱うには免許が必要となるため、新規参入するのはなかなか難しい業種です。大登さんもインポーターを辞めた後に3年間、ハム工場で働いて、受験資格を得ました。市場でも関係性を構築するのが難しいと聞きます。それでも「せっかくの人生だから」と店を開いた快活な人柄が、生ハムやサラミがぶら下がる工房兼店舗から溢れているよう。「墨田区って、新旧入り交じって、カオスなところなんですよ」と笑う大登さん。かつて訪れていたヨーロッパの農村のように、生ハムやサラミがより身近な存在として、下町に根付き始めている。その楽しみな風景が、やっぱり東京って面白いと思わせてくれるんです。

Profile…野村友里(のむら・ゆり)

eatrip 主宰・料理人。長年おもてなし教室を開いていた母の影響で料理の道へ。ケータリングの演出、イベントの企画・プロデュースなどの傍ら、雑誌の連載、ラジオのパーソナリティなどの分野で活躍。2009 年にはドキュメンタリー映画『eatrip 』を監督。著書に『Tokyo Eatrip』(講談社)。12年、原宿に〈restaurant eatrip〉を、19年には表参道にグローサリー〈eatrip soil〉をオープン。

(『会いたくて、食べたくて 私が信頼する101の美味しさとその生産者たち』掲載/photo:Yurie Nagashima text:Toshiya Muraoka styling:Yuri Nomura)

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