人と自然が紡ぐサークル、本当の豊かさを求めて。 【千葉】自然との一体感を楽しめる〈クルックフィールズ〉。『泊まる、食べる、持ち帰る』を大解剖! FOOD 2021.05.20

稀代のヒットメーカー、小林武史さんが真の豊かさを求めて行き着いた自然と人が共生できる場所。〈クルックフィールズ〉。自己のファーム&パークで目指す「理想的な循環」とは?SDGsに設定された17の目標の多くは“食”と密接につながる。食べることは学ぶこと。話題のファームで、レストランで、さらにさまざまな取り組みを知り、食のつながりを感じたい。

【STAY】1.〈KURKKU FIELDS TINY HOUSE VILLAGE〉

朝、昼、夜と移り変わる景色を眺めながらゆっくり過ごしたいときは宿泊して癒しの時間を満喫しよう。

トレーラーを改装したタイニーハウス(冷暖房完備)。5棟のハウスはすべて異なる内装で、最大で大人5名が宿泊できるタイプも。古材やアンティークの家具を生かした室内はシンプルでミニマルなつくり。可能な限り自然素材を取り入れたサステナブルな空間だ。宿泊ゲスト限定の体験プランもあり、〈クルックフィールズ〉での時間を気ままに満喫することができる。宿泊料は1泊1棟1人15,300円〜。営業日はHPで確認を。

【EAT】2.〈KURKKU FIELDS DINING〉と〈KURKKU FIELDS CENTER HOUSE〉

施設内で育まれたオーガニック食材を堪能できるレストランやカフェも。味わい豊かな料理に心が満ちる。

食と命のつながりをおいしく体感。新鮮な食材がたっぷりのプレートのほか、マルゲリータなどの窯焼きピザ、シャルキュトリーの盛り合わせも人気。ダイニングには生ゴミを堆肥化させるコンポストを設置し、畑の飼料として循環させている。右・自家製ハーブコーディアル(ローズマリー)660円、アイスクリーム400円。左・本日のランチプレート1,600円(税込・価格変更あり)。サラダや自家製ソーセージなどがセットに。

【TAKEOUT】3.〈KURKKU FIELDS BAKERY〉

ここでしか買うことができないおいしいお土産を見つけるのもお楽しみのひとつ。パンや旬のオーガニック野菜も人気。

〈クルックフィールズ〉には、畑で採れたての野菜やストレスの少ない環境で育った鶏の卵、自家製の天然酵母を使って焼き上げるパン、シフォンケーキなどおいしいお土産が盛りだくさん。ベーカリーで人気なのは平飼い卵を使用したクリームパンなど。木更津市と共同運営する〈ORGANIC BRIDGE〉で加工されたソーセージやベーコンを販売するシャルキュトリーショップもある。

〈KURKKU FIELDS〉

〈クルックフィールズ〉KURKKU FIELDS

都心から車で約1時間。自然豊かな木更津に昨年開業したサステナブルなファーム&パーク。施設内には畑や牛舎に鶏舎、チーズ工場、ダイニング、宿泊施設などを備える。屋外イベント「KURKKU FIELDS ハーベスト」も定期的に開催。
■千葉県木更津市矢那2503
■0438-53-8776
■祝を除く火・水休

持続可能な取り組みにゴールも正解もない。

〈クルックフィールズ〉内はテーマ別に6つのエリアに分けられている。
〈クルックフィールズ〉内はテーマ別に6つのエリアに分けられている。

サステナブルという言葉が定着する前から地球環境や社会問題と向き合ってきた小林武史さん。2003年には、環境問題に取り組む非営利団体「ap bank」を立ち上げ、2006年には“快適で環境に良い未来に向けた暮らし”をテーマとし、レストランやフードストアを展開する「kurkku」のプロジェクトも始動させた。その集大成ともいえるのが、自然と人、農業と食、そして音楽とアートの融合を体験できる自然共生施設〈クルックフィールズ〉だ。

「活動の根底にずっとあるのは、人間も間違いなく自然の一部であるという思い。サステナブルが持続可能をあらわす言葉であるように、この取り組みにゴールはないし、これが正解、という確固たる答えもありません。世界中で大規模な自然災害が頻発し、当たり前だった価値観が根本的な部分から変わりつつある今は、自然と人とのつながりを見つめ直す重要なターニングポイント。

〈クルックフィールズ〉は農や食、音楽やアートというコンテンツを通して自然界の営みをそれぞれの感じ方で体感してもらえる場所であれたらいいなと思っています」と小林さん。“みんなにとって心地のいいサステナビリティ”を実践するために、敷地内では、種まきから収穫まで季節ごとの農作業を体験したり、自然の中を歩くフィールズツアーも。ここを訪れた人は、思い思いにプレイフルな時間を過ごすことができるのだ。

「懇々とオーガニックや環境保全を語る場ではなく、ほどよい距離感で自然とつながれるコミュニティを目指したいです」と話す小林さんに、サステナブルな暮らしを実践するきっかけづくりについて尋ねてみると、「有機農法に取り組んでいる生産者の方やサステナビリティに対しての意識を持っている料理人を見つけてみるのもいいと思います。今はSNSなどでもそういう思いを持った人の活動をチェックすることができますよね。そうすると視野がすごく広がるし、工夫して生きることの楽しさを感じることができるはず」。堅苦しいことは抜きにして、まず自分が楽しい、心地よいと感じられることから始めてみる。〈クルックフィールズ〉を訪れることも、そのきっかけづくりになるはずだ。

堅苦しさは抜きで自然との一体感を楽しむ。

〈クルックフィールズ〉での過ごし方、楽しみ方は人それぞれ。自然の営みやアートを間近に感じられる広大な敷地をゆっくり散策したり、新鮮なオーガニック食材を使った料理をレストランで味わったり、日では時間が足りない、というときはお洒落なタイニーハウスに宿泊することもできる。酪農エリアで可愛らしい動物たちに癒され、オーガニックファームで農業体験をするなど、自然との一体感がありながら、誰もが自由にのびのびと過ごせる要素であふれている。

小林さんが「オーバーナイトで体験してもらうことで自然が織りなす景色や“命”を垣間見ることができる」と言うように、宿泊ゲストにはハーブの収穫や牛の搾乳を見学し、採れたて食材を使ったオープンサンドイッチをつくる体験プランも用意。朝日に照らされた田畑の美しさや、景色をオレンジ色に染める夕焼け、星降る夜など、都会では見ることのできない尊い風景がここにはすべてある。そして、それらを未来へつなぐための工夫が、自然や人にとって無理のないように形づくられている。

豊かな自然のもとに五感を刺激する現代アートも多数展示されており、なかには〈クルックフィールズ〉のために草間彌生が制作した作品も。食好きは、搾りたてのミルクでつくられるチーズや自家製のシャルキュトリー、天然酵母を使ったパンなど、おいしいお買い物にも心が弾む。「いのちのてざわり」を感じながら、自然のパワーに満たされる。そのかけがえのない時間に、本当の心地よさ、豊かさの意味を知るはずだ。

Navigator…小林武史(こばやし・たけし)

〈クルックフィールズ〉KURKKU FIELDS

ミュージシャン。1959年山形県生まれ。サザンオールスターズやMr.Childrenなど、これまでに多くのアーティストの楽曲プロデュースを手がけてきた。2003年には「apbank」を、2006年には「クルック」を立ち上げ、環境や社会問題に取り組み続けている。

(Hanako1190号掲載/photo : Shinnosuke Yoshimori, Jun Hasegawa, Yoichiro Kikuchi text : Keiko Kodera, Ayumi Shirasaka edit : Kana Umehara)

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