世界が注目する、小豆島生まれの木桶仕込みの醤油
2020.04.06

おいしいお醤油が食べたい 世界が注目する、小豆島生まれの木桶仕込みの醤油

瀬戸内海の浮かぶ小豆島は醤油の町。昔ながらの“木桶仕込み”の醤油造りが今なお続いています。伝統の醤油作りに情熱を注ぐ〈ヤマロク醤油〉の山本康夫さんが主催する「木桶による発酵文化サミット」に参加し、おいしい醤油に出会いました(そして買い込みました)。
道玄坂 まりこ
道玄坂 まりこ / フリーライター

「雑誌Hanakoでイベント情報ページを担当。おもしろそうなことには積極的に首、足、手、その他なんでも突っ込んでいきたいアラサーライター。」

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なぜ、小豆島は醤油の生産が盛ん?

小豆島は醤油の町として有名です。「小豆島=オリーブオイル=速水もこみち」くらいの連想しかできなかった私ですが、その歴史は約400年も前に遡るそう。小豆島を訪れた大阪の人たちによって、紀州で行われていた醤油作りが伝達。小豆島の温暖な気候は発酵に適していたため、醤油造りを発展させていったそうです。明治時代には400軒もの醤油蔵があったとか。現在は22軒にガクンと減ってしまいましたが、それでも香川県の醤油の生産量は全国5位。その半数以上が小豆島産なんだそうです。しかも、その多くで現在も木桶を使った伝統的な醤油造りが行われています。

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約6000リットルの木桶が並ぶもろみ蔵

“本物の醤油”が食べられなくなる!?

江戸時代までは、醤油に限らず味噌、酢、みりん、酒などの発酵調味料はすべて木桶で醸造されていました。これが本来の造り方。ですが、日本にプラスティック容器が流通し、“コストがかかる”“手入れが大変”といった理由で木桶による醸造がどんどん少なくなりました。この木桶、大人2、3人くらいすっぽり入れそうなくらい巨大なので、作るのも運ぶのもメンテナンスするのも大変。しかも、材料は天然の杉や竹を使うからその手配も大変。ではなぜ、小豆島の人たちはわざわざ木桶で醤油を造るのか?その理由を〈ヤマロク醤油〉の山本康夫さんはこう語ります。「おいしい醤油は人間がではなく、微生物が造っているんですよ。木桶は醤油のおいしさを引き出す乳酸菌や酵母菌などの微生物が生きるのに最適な環境を作ります。醤油職人の仕事はその環境作りを手伝うこと。だから、微生物が暮らしやすい木桶を使い続ける。これしかないんです」

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ヤマロク醤油五代目の山本康夫さん

とはいえ、木桶を使い続けたくても、木桶仕込みの天然醸造の醤油や味噌などの調味料の生産量減少に伴い、桶屋も比例して減少。2009年には、醸造用のサイズを作れる桶屋が全国で1社のみに。木桶の消滅は伝統的な醸造文化の消滅を意味します。一般的に木桶の寿命は100〜150年くらいと言われており、戦前に作られた多くの木桶は約50年後にはほとんどが使えなくなると言われていました。「この木桶がなくなれば、僕たちの子や孫の世代が“本物の醤油”を食べられなくなる。それはどうしても避けたかった」という山本さん。小豆島に暮らす大工さんとともに、なんと桶屋さんに弟子入り。木桶作りを一から学んだのです。そうやって継承した桶作りの技術を元に「木桶職人復活プロジェクト」を発足し、自分たちで桶を製造・メンテナンスを行い、さらに木桶を使う醸造家や食品メーカーや料理人、大工さんたちへ木桶作りの技術を共有しています。現在、木桶による醸造はなんとたったの1%ほど。それを2%、3%…と少しずつ増やしていき、木桶による発酵文化を残していきたい、というのがこのプロジェクトの目標なんだそうです。

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全国から人が集まる“木桶フェス”

私が訪れたのは、新桶作り真っ最中の〈ヤマロク醤油〉。全国から集まった食品メーカーや醸造家、料理人、醤油ファンみんなで木桶作りをしていました。みんなワイワイ楽しそう。なんかこの高揚感、フェスっぽい!!!いるだけでテンションが上がります。
木桶作りはまず、木肌の美しい吉野杉にカンナを掛けるところから。細長い杉の側板を組み立てながら木桶の形に。そこに長〜い真竹で編んだ竹箍をかけ、底板を打ち込みます。そして、桶の周りをハンマーで叩き続ける組み上げ作業を経て完成。釘も接着剤も使わない伝統技法は緻密な調整と合わせて、重たいものを運ぶかなりの体力も必要。数人がかりで何日も時間をかけて作っていきます。

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木桶作りに忙しい山本さんにお願いして、もろみ蔵の中も案内してもらいました。〈ヤマロク醤油〉の蔵には約80本もの木桶が暮らしています。木桶の表面には無数の小さな穴があり、微生物がその小さな穴から空気を通したり、水分を溜め込んだりしながら独自の生態系を作って、おいしい醤油を生み出します。これが“木桶は呼吸している”といわれている理由です。〈ヤマロク醤油〉では毎年、木桶を増加しているため、新しいもろみ蔵を増設。「”借金抱えてまで蔵を作るなんてアホか”と言われました」と笑う山本さん。人から見えればクレイジーとも思える木桶への情熱ですが、彼のような醸造家がいて、日本の木桶の文化が守られているのです!

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約40個の樽が並ぶ、もろみ蔵。

桶に住み着く微生物は、蔵特有の生態系を作っています。同じ微生物をほかの醤油蔵に移動させたとしても同じ醤油の味にはならない。長年かけて棲み着いた微生物によって、その蔵元独自の味が生まれるんですね。人間の手が及ばない微生物の世界ってなんだか神秘的です。

桶仕込みの醤油は天然醸造。季節の温度変化に応じて発酵させています。最低でも1年。長いものだと3年かけます。“先月の原稿料、翌月には振り込んで!お願い!”みたいな私からしてみれば、気の遠くなるような時間です。

でも、この時間がとっても重要で、旨み成分のグルタミン酸の量がじわじわと増えていくのだそうです。山本さんは「微生物は目に見えないけど、きちんと人をわかってんですよ」と言います。女性の見学客が多いと微生物が喜ぶのか(!?)木桶の中でぽこぽこぽこと動く音が聞こえるそう。「作る人に似るんですね」と山本さん。

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〈ヤマロク醤油〉では、このように山本さんの楽しいトーク付きの蔵見学が年中できます。その理由に「醤油作りに休みはないから!」と山本さんはきっぱり。小豆島を訪れる際はぜひ事前に連絡をして、愉快な木桶話と微生物たちが仲良く暮らすファンタスティックな蔵を見学してみてください。醤油をちらりと垂らして食べるバニラアイスやお餅セットもありますよ。

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私が訪れた木桶フェスではトークショーも開催。発酵デザイナーの小倉ヒラクさん、イタリアのクラフトビールブームを牽引する〈BALADIN(バラデン)〉のテオ・ムッソさん、〈MITOSAYA〉の江口宏志さん、料理家の後藤しおりさん、職人醤油の高橋万太郎さんなど豪華なメンバーが登壇し、それぞれの木桶ストーリーを教えてくれました。

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木桶でビールを製造しているバラデン社のテオさん。

では、ここで私が購入した〈ヤマロク醤油〉の商品を紹介します。

まずは、看板商品の「鶴醤」。2年がかりで作った醤油を再度仕込んで造ったもので、歳月も原材料も通常の2倍。旨み成分がたっぷりで濃厚でまろやかな醤油。焼き魚や肉料理、お刺身や豆腐のかけ醤油としてバッチリ。バニラアイスにちょっぴり垂らすとキャラメルのような風味になるそう!

国産丹波黒豆と国産小麦で造られた「菊醤」は鶴醤に比べてあっさりとした味。後味にほのかな甘みも感じます。端麗な色なので煮物料理に最適です。

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天然醸造醤油を使って造った「ぽん酢」や、菊醤を使った「菊つゆ」も。料理にまったく自信がない私でも、〈ヤマロク醤油〉の調味料を入れるとビシッと味が決まるのですごく重宝しています。

なかなか小豆島にいけないという方も大丈夫。ヤマロク醤油ではオンラインで取り寄せができるのでぜひお試しを(HPは下記に記載)。とくに小瓶タイプセットは手軽に試せるのでおすすめですよ。

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地ビールもおいしい小豆島

全国のビール好きのみなさん、お待たせしました!小豆島には島の素材を使った地ビールもあります!瀬戸内海を望む高台のブルワリー〈まめまめびーる〉は副原料に小豆島の素材を使用した地ビールが飲めるんです。

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醤油のもろみを使った黒ビール「くろまめまめ」や、島で採れたハーブが入った「しろまめまめ」、島の柑橘類(季節によって中身を変更)を使う「あかまめまめ」、島で収穫した米を使った「きんまめまめ」などどれも個性的。しかも、おいしい。私、ふだんお酒をあまりいただかないのですが、おいしすぎてゴクゴクいけました。

醸造所に併設した店舗ではタップから注ぎたてのビールがいただけます。ちょっとしたおつまみもあるので、少し時間に余裕を持って、ゆっくりグラスを傾けてください。

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オーナーの中田雅也さんは「今後は主原料の麦芽やホップも小豆島産のものを使いたい」といい、ホップの栽培にも乗り出しています。そう遠くない将来、小豆島産100%の材料のビールが飲める日がくるはず!

今回紹介した〈ヤマロク醤油〉も〈まめまめびーる〉もオンラインで購入ができます。
お家時間が増えた今こそ!おいしい調味料で新しいレシピに挑戦してみたり(時間がめちゃかかる煮物なんて作り放題です)、おいしいビールでパァ〜っとストレス解消してみてはいかがでしょうか。

■ヤマロク醤油
住所:香川県小豆島郡小豆島町安田甲1607
電話:0879-82-0666
yama-roku.net

■まめまめびーる
住所:香川県小豆島郡小豆島町坂手甲769
電話:0879-62-8670
https://www.mamemamebeer-shodoshima.com

Photo:©Sohei Oya/Nacása & Partners Inc.

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