グルメエッセイ『京都ごはん日記』作家・いしいしんじさんが選ぶ。京都で好きなお店とは?
2019.09.15

本の中の京都。 グルメエッセイ『京都ごはん日記』作家・いしいしんじさんが選ぶ。京都で好きなお店とは?

京都に暮らし始めてちょうど10年が経った作家のいしいしんじさん。人生に欠かせない店、何度も足を運びたくなる店を教えてもらいました。

編集部 / Hanako編集部

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1.僕の「おへそ」〈おおきに屋〉

2009年2月18日。いしいしんじさんが妻の園子さんと一緒に、松本から京都へ引っ越したその日から始まる「京都ごはん日記」。食べたものはもちろん、日々の暮らしがリズミカルな文章で書かれた日記は、いしいさんの身体を通り抜けて出てきた、けっして真似できない京都ガイドでもある。「ごはん日記は2001年から始まって今も続けてます。そもそも最初はまったく食べることに興味がなくて、コロッケパン、冷麺、冷麺、パンみたいな毎日で。あまりにもひどかったから日記書いてと頼まれて」。やがて始まる神奈川・三崎での自炊生活や園子さんとの結婚、松本での暮らしなどを経て、いしいさんの食への関心は劇的に変化を遂げた。

子供が拗ねちゃうから今日は内緒でといしいさん。

「お金がなくて自分で料理を作るようになって、ヨソで食べる時も大事に食べるようになりました。京都に来ても失敗したくないから〈おおきに屋〉さん以外には行かなかった」。そう振り返るいしいさんと〈おおきに屋〉との付き合いは、大学時代まで遡る。「ここは僕にとってのおへそ。10代20 代の勢いのよさはここで生まれたので、店主のもっちゃんとの会話も料理も含めて、自分がまっさらになる特別な場所なんです。だからといって昔からおいしいものが大好きで色々食べてたわけじゃないんだけど」

お品書きの字から漂う、おいしそうな気配。
店主の望月正樹さん。
琵琶湖の鮎は成長してもこのサイズ。こあゆ塩焼 400円、もずくジュレ 300円。

京都では3人暮らし。来客が多い分、外食も多いという。「東京の編集者とは〈おおきに屋〉さん。子供の友達の家族同士なら、座敷ですっぽんが食べられる〈ツバクロ〉。京都らしい店と言われたら〈神馬〉」といしいさん。日本の様々な地で暮らしてきたいしいさんにとって、京都はどう見えるのだろう。「食材的にはあまり恵まれてないからお店が工夫しないといけなくて、料理の技が発達するんですよ。お店ってもんのレベルがすごい高い。店にいる時間を堪能させてくれて、出た時にああよかったと思う経験をさせてくれる、仕掛けとしてのお店は世界で一番発達してるんじゃないかな」

〈おおきに屋〉
和洋中からエスニックまでオリジナリティある料理がそろい、遠方からのファンも多い。ランチが人気。
■京都府京都市左京区北白川瀬の内町27-6 
■075-701-5413 
■11:30~14:00、17:30~24:00 木、日祝の昼休 
■33席/禁煙

2.園子さん理想の〈スマート珈琲店〉のプリン

自家製プリンセット 1,000円(税込)

《〈スマート珈琲〉へ。ここのプリンは園子さんの理想のプリンやった」「園子さんは念願のホットケーキ、でかくあけた口に茶色い三角形が次々と投げ込まれる》と、日記に登場する〈スマート珈琲店〉はいつも甘いものと共にあるようだ。昔ながらのレシピで作られるプリンは、蒸し焼きならではのプリッとした弾力が魅力。たっぷりのカラメルが卵の優しい生地を引き立てている。かつて子役時代の美空ひばりが大好きだったというエピソードがあるホットケーキも、当時から変わらないレシピで作られている。

〈スマート珈琲店〉
創業は昭和7年。ほかにフレンチトーストや、ふわふわのタマゴサンドウィッチなど卵を使ったメニューが充実。
■京都府京都市中京区寺町通三条上ル天性寺前町537 
■075-231-6547 
■8:00~19:00 無休 
■38席/喫煙

3.近くの最優秀料理店〈料理処 はな〉

炭火焼 鴨ロース(ブルゴーニュ)爽やかな柚子胡椒と 1,800円、味噌漬け豆腐 550円

《こういうときはからだが求めているものを出してくれる料理屋〈はな〉へいき、そらまめの白和え、揚げ稚鮎の南蛮漬け風酢の物、和風コロッケ、豆腐の味噌漬け、はなサラダ、牛すじときのことたけのこの炊き合わせ、を食べた。どれもこれも、もちろん味は違うのに一貫して、野菜や肉や魚が『こんな風に料理してくれて、オオキニ、どうもオオキニ』と厨房と食べる人ににこやかにいってる感じがする》。小学生以下は入店不可のためお子さんが中学生になるまで我慢中。

〈料理処 はな〉
和食とイタリアンの両方が楽しめる料理店。予約がベター。
■京都府京都市左京区川端二条上ル新生洲町104 リヴァク鴨川Ⅱ2F 
■075-751-5757 
■17:00~23:00(22:30LO) 日休(月が祝の場合、日営業、月休) 
■20席/禁煙 

4.家族みたいなもんです〈100000t アローントコ〉

2冊の本に掲載されている2011年1月31日以降も日記は欠かさず書かれていて、登場する京都の店々は増え続けている。

「〈100000t アローントコ〉〈ホホホ座〉〈ハイファイカフェ〉〈誠光社〉はお店というより日常の延長。子供の頃からとにかくずっと本が読めて、いいレコードをずっと聞けて、そしたらほかには何もいらんわって小学校くらいから思ってたんですね。だからああいうお店が日常の延長としてあってくれることのありがたみは、本当に感じますね。しかも京都っていうのは、なんとレコード屋さんと新刊書店が増えてる街なんですよ」

〈100000t アローントコ〉
「京都レコード祭り」の仕掛け人のひとり、加地猛さんが店主。中古レコードとCD、古本のショップ。
■京都府京都市中京区寺町御池上ル上本能寺前町485 モーリスビル2F 
■090-9877-7384 
■12:00~20:00 ほぼ無休 

Navigator いしいしんじさん

1966年大阪府生まれ。京都大学文学部仏文学科卒業。2009年からは二十数年ぶりの京都暮らし。2003年『麦ふみクーツェ』で坪田譲治文学賞、2012年『ある一日』で織田作之助賞、2016年『悪声』で河合隼雄物語賞を受賞。最新刊に『悪声』(文春文庫)がある。

いしいしんじ『京都ごはん日記/ある一年 京都ごはん日記2』

『京都ごはん日記』には2009年2月18日から2010年1月31日まで、『ある一年~』には2010年2月1日~2011年1月31日までを収録。

登場人物や店の索引、「いしいしんじの京都地図」が付いたハードカバー。河出書房新社刊。

(Hanako1176号掲載/photo : Natsumi Kakuto, Noriko Yoshimura, Yoshiko Watanabe text : Kahoko Nishimura, Mako Yamato, Atsuko Suzuki)

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