平成最後に昭和を探す…〈みつわベーカリー〉と〈木村屋〉
2019.04.15

花井悠希の朝パン日誌 vol.44 平成最後に昭和を探す…〈みつわベーカリー〉と〈木村屋〉

新元号「令和」が発表されましたね。朝パン日誌も今回がいよいよ平成最後の更新となります。「平成」に生まれ育った(正確には昭和63年生まれですが…)私が、平成の終わりに昔懐かしい昭和風情の残るパン屋さんを訪ねました。昔懐かしのという意味で使っているこの“昭和風情”や“昭和レトロ”という言葉も、ゆくゆくは形を変えていくのでしょうか(平成風情?)。昭和から時を刻み平成を超え、何代にも渡って今に続くパン屋さん。その店に通ってきたそれぞれの世代で懐かしいと感じる時代はずれていても、その感じる気持ちは同じなはず。令和の時代になってもいつだってあの頃を思い出させてくれる心の実家として続いてほしいと願って、平成の最後に贈ります。

花井 悠希 / ヴァイオリニスト

「三重県出身。三重県四日市市観光大使。3歳よりヴァイオリンを始める。 2010年4月21日コロムビアよりデビュー。〈1966カルテット〉メンバー。http://columbia.jp/hanaiyuki/

花井 悠希
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いつでもそこに…〈みつわベーカリー〉

店頭のコック服の人形からして老舗感がビシビシ伝わってくるこちらのお店、なんと営業時間は朝8時から深夜2時まで。

西池袋の歓楽街の外れでぽっと夜遅くまで明かりを灯し続けてくれているパン屋さんです。

「シャノンブレッド」

ちょっとトーストすると美味しいと聞いたのでバルミューダで焼いたら、この姿ですよ(またやってしまった)。この子、真っ白に薄黄色の渦がとても綺麗な子だったのです(説得力なし)。一口ガブリといくとジュワッと滲み出てくるジューシーなバター感。デニッシュパンのようなそれとカスタードがぐるりと大きな渦を巻いた構造は、重みによって底の方はさらにそのジューシーさと甘みが溜まっていて禁断の味。そう、カロリーは美味しいねの味。

ふかふかした生地はどっしりと恰幅がよく詰まっていて甘みを感じます。でもこういうのにありがちな生地が甘ったるいタイプかと思いきや、いい意味で期待を裏切り塩気もほのかにあって、一口食べてさらにまた一口。なんだかクセになります。あとちょっとだけ甘やかされたい、、、意外とさらっとドライな味わいなんです。冷たくされたらさらに気になっちゃう!的に食べちゃうパン。そのピュアな見た目に騙されてはなりませんよ(←見事に騙された人)。

「ストローゼルカスタード」

見た目は古い商店に売っていそうなマドレーヌ。ラップに包まれ【¥190】と札を貼られたその子はほっこりするパンのラインナップの中でも一際目をひく存在でした。でも名前は、店で1番見慣れないカタカナ名(ストローゼルって何なんだー!?)。そのギャップもまた気になってしまった一因です。幼い頃おばあちゃんがオヤツで出してくれたような紙のカップで焼かれたこの子は、食べたってそりゃあ懐かしさが詰まっていますとも。おばあちゃんに焼き芋は焼いてもらったことはあっても焼き菓子なんて作ってもらったことは無い私の記憶もねつ造されそうな程に(焼き芋大好きだったけど)。

しっとりと柔らかいケーキ生地の中にはカスタードクリームがたっぷりと。ネトっと舌に絡みつく重めのとろみは“日本のカスタードクリーム”ズバリそのもの。たい焼きや大判焼きのカスタードのまさしくそれです!餡子が苦手だった子供時代はこのカスタードばっかり選んでいたっけ。甘いケーキ生地にカスタードだからしっかり甘いのだけど、この甘さこそ昔ながらのオヤツの甘さですよね。

「メープルナッツ」

上に沢山のったナッツに目がいって、お?ゴツゴツしたのが来るのか!?来るのかい!?と構えていた我が口は、意表をつかれたのであります。確かにナッツはコリっと歯応えが愉快なのですが、この生地とってもしっとりなんです。

しっとしとでふわふわ!その柔らかな生地にメープルが折り交ぜられ、一口一口に行き渡るメープルが止まりません。そこへ周りにかけられた砂糖のグレーズドが溶けると口内はさらに甘く豊かな味わいに。濃厚で甘い時間を約束してくれますよ。

入れてくれるビニール袋はレトロ可愛くて、キュンときます。

懐かしき購買の味?…〈木村屋〉

まずね、ほとんどのパン達が100円代で買えるのですよ。ここ表参道で、ここ青山で、この2019年に。それだけでも拍手を送りたい。子供が帰り道にお小遣いで買える値段。大人だってそりゃあ嬉しい!

「デニッシュパン(ザラメ入り)」

表面に振られたガツンと甘いざらめがジャリジャリと甘さ爆弾を繰り出してくる。よし、一つ残らずこの身で(この舌で)全て受け止めようではないか。デニッシュ生地は、大きな気泡が入りこれぞデニッシュという堂々たるもの。少しトーストするとふわっと軽く、その間を縫ってバターの香りとしっかりした甘さがほわんほわんと立ち上がります。そこへザラメです。あぁ、幸せなあまい攻撃。(重症)繊細とか、複雑とか、そういうのから距離をおいた大らかさにホッとします。つべこべ言わずこの攻撃、受けて立つべし!

「テリヤキチキン&ゴボウサラダ」

ベースのパンはしっとりとしたデニッシュ生地のような甘みとバター感があり、そこにテリヤキチキンとゴボウサラダときたもんだ。照り焼きチキンにシャキシャキしたゴボウサラダのマヨが加わるだなんて、“美味しい”のスタンダードでしょ!

そこに柔らかいデニッシュ生地がほふほふと全てをくるんで抱きしめてくれる。パンの母性がすごい!日本のお総菜パンってこれだよね。きっと世界のどこを探してもこんなパンは日本にしかないはず。おじいちゃんおばあちゃんから孫まで、少し疲れた大人にも、みんなに優しくみんなが笑顔になるお惣菜パンは日本の誇り、昭和の誇りですね。

「チョコチップメロン」

上に被るクッキー生地はお家で焼いたチョコチップクッキーのような親しい味がします。所々その厚みもまばらで、クッキーがしっかりわかる所と薄い所があり、その下のパン生地はクッキー生地の質感を継ぐドライさもありながらも細やかな口溶けが嬉しい。

何よりお伝えしたいのが、この中に入っているチョコクリームとホイップクリーム!断面の、外からの見た目からは想像出来ないクリームの綺麗な二層っぷりにまずは驚きが隠せないのですが、チョコクリームの内側にホイップクリームが包まれています。だから、最初に舌に届くのはチョコクリーム。その後ホイップクリームがガツンとしたチョコ味をふわーあと和ませていきます。そしてね、このチョコクリーム。購買で食べたチョコクリームの味がするーーー!!と1人で目を見開いてしまいました!走馬灯のようのように、あの正午を過ごした日々が頭を駆け巡ります。4時間目の授業終了の挨拶が終わるや否や財布だけ持って走った購買への廊下。急いだ割にさらに早い強者ばかりでもうすでに人だかりの購買、悩んでる隙にどんどん無くなるからその時一瞬の感覚で選ぶが勝ち!スタイル。戦いを経て、お弁当を食べてからオヤツで食べるそのパンの美味しいことよ(すごい食欲だな…)。

思えば、私のパンに対する愛情はここから来ていたのかもしれません。言い方を変えればパンへの執着心とも言える愛情。思いがけず平成の記憶を辿る回となりました。

令和となって新しい扉が開く時代にも、沢山の人の記憶の1ページを刻んできたパン屋さんがずっとこれからもそこにいてくれますように。願わずにはいられません。次回は令和元年にてお会いしましょう!

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花井 悠希

平成を代表したパンって何かな?

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