小谷実由の『趣味がなかなか見つからなくて。』 /中国茶道を学んで、豊かな時間を過ごそう。
2019.11.17

一生モノの趣味を見つけよう! 小谷実由の『趣味がなかなか見つからなくて。』 /中国茶道を学んで、豊かな時間を過ごそう。

ファッションモデルから執筆活動まで、分野を超えて軽やかに行き来する小谷実由さん(通称:おみゆ)。意外にも、趣味らしい趣味がないのだとか。夢中になれる、一生モノの趣味と出会うべくしてはじまったのがこちらの連載。7回目は、「留白 ru haku」主宰の茶人・Peruさんを先生に、中国茶の淹れ方を教わりました。

小谷実由 / ファッションモデル

「モデル。1991年、東京生まれ。愛称”おみゆ”でおなじみ。喫茶店巡りはライフワーク。」

小谷実由
  • Facebookでシェア
  • Twitterでシェア
  • LINEでシェア

まずは、中国茶の種類を教わる。

台湾で初めておいしさに触れてから、おみゆさんが興味を持っていた中国茶。今回はこの奥深き道を「留白 ru haku」主宰の茶人・Peruさんに教えていただきます。

小谷実由さん(以下、おみゆ)「台湾・九份のお茶屋さんでお店のおばちゃんたちに呼び寄せられて凍頂烏龍茶をいただいたのが初めての中国茶体験。飲んだらまたすぐ淹れてくれて、わんこそば状態でした(笑)。それまで、お茶と言えば緑茶か紅茶が身近だったけれど、その時、凍頂烏龍茶のおいしさに目覚めたんです」

Peruさん(以下、Peru)「中国茶にはたくさんの種類がありますが、茶葉を選ぶときは香りをゆっくりと吟味し、体が心地よいと感じるものを選んでください。今日は小谷さんも馴染みのある凍頂烏龍茶を3種用意しました。2016年、2019年に仕上がったもの、そして1998年から21年間寝かしたものあります」

おみゆ「えー、21年間も! どうやって寝かせたんですか?」

Peru「製茶後に1年寝かせて、その後炭火焙煎をしてまた1年寝かせて…という製法であったり、鉄桶や陶器の中で一度も封を開けずに寝かしたものもあります。茶葉自体は同じでも、人と同じように年を重ねると違った香りや深みが出てくるんです。ただ置けばいいのではなく、無駄な湿度や外の空間の匂いを吸わないように正しく寝かせることが大切です」

おみゆ「お茶にもいい年の重ね方があるんですね。寝かせている間、気になって見たくなっちゃいそうだな…」

Peru「我慢も大事ですね。寝かしたお茶は老茶と呼びますが、飲むと癒されますよ。台湾では年配の方が好んで飲んでいます。香りは強いけど、ポリフェノールの性質が変化して柔らかくなっているので、寝る前に飲んでも大丈夫です」

左から凍頂烏龍茶(1998年物、2016年物、2019年物)、拉拉山紅水(2019年物)
Peruさんが師匠から譲り受けた、福建省で製茶された白茶の老白牡丹(2015年物)。

奥深い茶文化を育んできた中国では、一般的にお茶は、緑茶、白茶、青茶、紅茶、黒茶など発酵の度合いによって分類されるのだとか。今回、Peru先生が用意してくれたのは、半発酵まで進めた青茶の部類にあたる凍頂烏龍茶(2016年物、2019年物、1998年物)、拉拉山紅水(2019年物)、少しだけ発酵させた白茶の老白牡丹(2015年物)。年代も産地もさまざまなお茶を家庭でおいしく淹れる方法を伺いました。

Peru「まず始めに、拉拉山紅水を飲んでみましょう。拉拉山は台湾の北部にある高山です。このお茶は日本が開発したギャバ製法という特殊製法で成分を高めていて、自律神経を整える効能があります。同じ烏龍茶でも産地が変わると茶葉の香りが変わりますよ。ほかの凍頂烏龍と比べてみてください」

おみゆ「ほんとだ、茶葉によって香りが違う。香りは気候と関係があるんですか?」

Peru「お茶の香りは、周りの生態系すべての影響を受けます。雨量が少ないと茶葉の香りが濃密になり、雨量の多い年はハズレ年と言われて香りが薄くなります。お茶は、3煎めで香りが落ちてきたときにおいしく感じられるものを選ぶのが正解。1〜2煎めは香りがいいけれど、3煎め以降に本質が出てくるので、お茶屋さんで試飲をする際は、できれば3煎めまで飲ませてもらいましょう」

中国茶、基本の淹れ方。
Step 1. 湯を沸かし、茶壺(ちゃこ)と茶杯を温める。

Peru「まずは火を育て、お湯を育てます。急いで電気で沸かしたお湯は冷めやすいうえ、刺々しく感じることがありますが、火でゆっくりと沸騰させたお湯は粒子が細かくて人の心をほぐす力があります。何も入っていない茶壺を温める時は、低い位置から湯を注ぎましょう。次に、焙烙(ほうろく)に茶葉を入れ、炙ります。炙ることができないときは、蒸気を当てて温めてもいいです」

おみゆ「焙烙からいい〜香りがしてきました。もうこれだけで、飲んだ(笑)。湯を注いだ茶壺や茶杯も、なんだか雰囲気が変わったように見えます」

Peru「茶壺は土からできていますよね。温めることで、眠っていた本質が目覚めてきます」

おみゆ「どれくらいの時間、温めればいいですか?」

Peru「火もお湯もその日の湿度や気候で変わるので、時間ではなく、観察して見極めてみましょう。何度も淹れるうちに、自然とわかるようになります。茶壺と茶杯がしっかり温まったら、湯は建水に捨てましょう。大地に戻すという意味で、私はその湯が冷めてから植物にあげるようにしています。お水は特にこだわらず、その時手に入りやすい水をありがたくいただくのがいいでしょう」

Step 2. 茶葉を茶壺に移し、湯を注ぐ。

Peru「茶壺の底が埋まる程度の茶葉を入れ、土とお茶を出合わせます。大地に春が戻ってくるイメージです。湯はまっすぐ、雨が降るように、高い位置から落とします。これが自然の水の動きですよね。“力を使って注ぐ”のは、人間の意志なので、そうならないように気をつけましょう」

おみゆ「うわぁ、心地よい音がしますね」

Peru「抽出の時間は、幸福な気持ちでお茶を待ちます。楽しい出来事を思い出してみてください」

Step 3. 茶杯にお茶を注ぐ。

Peru「茶壺から茶杯へ均等にお茶を注ぎます。透明の茶壺を見るとわかりますが、表面はいちばん淡いので、その部分は自分の茶杯に注ぐようにします。一煎目だけでなく、二煎目を重ねても問題ないです。お茶を差し出すときは、相手の目を見て、『いっぷくどうぞ』と丁寧に手渡してください。では、小谷さん。いっぷくどうぞ」

おみゆ「わあ、ありがとうございます」

Peru「お茶をいただくときは目を閉じてみてください。こんな小さな茶杯がとても大きく感じられますよね?」

おみゆ「はい。とても喉越しがよくておいしいです。香りがあるけれど、味わいはさっぱりしていますね。身体に染みわたっていく感覚です」

Peru「おいしいお茶には4つの大事な要素があると言われています。それは、香り・甘み・滑らかさ・深みです。この4つが一杯の中に含まれていたら、そのお茶は人の心に触れる、おいしいお茶。飲み終えると、香りが波のようにどんどん押し寄せてきますが、これが深みです」

Step4. 中国茶を実際に淹れてみよう。

Peru先生に淹れていただいたお茶で身体が温まったところで、お次はおみゆさんが凍頂烏龍を淹れることに。まずは道具選びから。

おみゆ「はっ、ついにこの時が。先生の茶具コレクション、どれも素敵なので迷っちゃいます。茶杯はぽってりとしたものにしてみようかな」

Peru「この茶杯、貫入が入っていいですよね。宋の時代の器を再現したものです」

おみゆ「この茶壺、牛がいますね。かわいい〜」

Peru「牛は働き者の象徴ですよ」

おみゆ「でもやっぱり、この茶壺にします!」

Peru「これは藍泥。焼くと青くなる土でできた器です。釉薬ではなく、自然の色が美しいですよね。茶壺を持つ時は、蘭花指という持ち方がいちばん正しいとされています。親指、中指、薬指、この3本でコントロールできます」

おみゆ「む、難しい…」

Peru「では、早速茶壺と茶杯を温めましょう」

おみゆ「鉄瓶が…おおお、重い。先生はなぜあんな軽々持っていたのかな」

Peru「ゆっくりと、呼吸を整えながら持ってみてください。大事なのは道具を大切に使おうとする心。特にやってはいけないことはないので、重かったら両手を使ってもいいですよ」

茶葉は茶壺の底が見えなくなるくらいが適量。
徐々に茶具の使い方が板についてきた、おみゆさん。
凍頂烏龍茶は2019年物を淹れた後、1998年物の老茶と飲みくらべ。

Peru「新茶は若い子と同じでキャピキャピしているので、夜寝る前に飲むと目が覚めちゃいます。でも、この21年物の凍頂烏龍茶老茶を飲むと、うとうとしてきますね? お茶自体がたくさんの経験を含んでいるので、包容力があります。このお茶を飲む時は、口に含んで2〜3秒転がした後、ごくんと飲んでください」

おみゆ「濃いわけではなく、深みがある。そして、少し苦味がありますね。でも、すーっと柔らかくなって、口の中から消えていく。飲んだ後、お寺に行った時のように心が静まります」

Peru「口の中で氷のようにすっとなくなって甘みに変化する。そういった苦味は良い苦味です。農薬を使っているお茶の苦味は、苦さが残って胸焼けしてしまうんです」

野生のお茶から学ぶこと。

Peru「最後に、老白牡丹を淹れましょう。これは自然生態茶。この白茶は私にとって特別なお茶です。製茶した人の主張が前に出てくるお茶ではなく、お茶への愛情や温もりを感じられるから。〈留白 ru haku〉は、おいしいだけでなく、人の心に触れる“何か”が感じられるお茶をいつも探求しています」

Peru「大きな茶壺でも、空間を残します。余白があると、味ののびがよくなるからです。教室の名前もそういった思いから〈留白 ru haku〉=(中国語で〈余白〉の意味)と名付けました」

おみゆ「本当に素敵な名前ですね。私も日頃から余白を大事にしたいと思っているので、シンパシーを感じました。ものを作ったり、文章を書く仕事をしているけど、いつも受け手側に自分の思いが100パーセント伝わらなくていいと思っていて。なぜなら、感じ方はそれぞれだし、そこを楽しんでもらいたいから。ものごとの過程を大切にしながら、余白や余裕を持って行動したいです」

・茶是寫在水面裡的文章(茶は水面に書く文章)
・聴不見的音楽(聞くことのできない音楽)
・看不見的山水(見ることのできない山水画)

これはPeruさんが台湾にいるお茶の師匠から教わった言葉。すべてはこの瞬間。だから、お茶を手にとったときに目を閉じて感じることが大切です。お茶から生まれてきたメッセージ、その場の縁で生まれる言葉も今回の取材で学ぶことができました。

自家製タピオカミルクティーとアフタートーク。

おみゆ「先生の自家製タピオカミルクティーがいただけるなんて最高すぎます。ところで、最近の日本のタピオカブームはどう思いますか?」

Peru「家の近くにできたお店で飲んでみたら、台湾にあるものとそっくりだったので、アッパレ!て思いました。お茶のレベルが高かったのが、単純に嬉しかったですね」

今回、お教えてくれたのは?

家長がお茶好きという一般的な台湾の家庭で生まれ、日本で育った茶人・Peruさん。大学卒業後、中国茶の道へ。北鎌倉、京都、川崎などを拠点に教室「留白 ru haku」を主宰。生活や人生においての“道”を学びながら、豊かな時間を過ごすための稽古や茶席を開催しています。

「留白 ru haku」
https://www.ru-haku.com

小谷実由

次回は着付けを体験予定です。お楽しみに!

  • Facebookでシェア
  • Twitterでシェア
  • LINEでシェア
yokoyoko_sidebar
TOPに戻る