「 食べるラー油 ぷるぷるネギ鶏 」 児玉雨子のきょうも何かを刻みたくて|Menu #4 FOOD 2023.03.11

「生きること」とは「食べること」。うれしいときも、落ち込んだときも、いそがしい日も、なにもない日も、人間、お腹だけは空くのです。そしてあり合わせのものでちゃっちゃと作ったごはんのほうがなぜか心に染みわたる。作詞家であり作家の児玉雨子さんが書く日々のできごととズボラ飯のこと。

ネギダレは、長ネギの白い部分、大葉、生姜、みょうがを細かく刻む。それにしょうゆ、お酢、砂糖を2:2:1で混ぜる。今回はさらに食べるラー油を混ぜているが、ごま油にすればマイルドなタレになる。
ネギダレは、長ネギの白い部分、大葉、生姜、みょうがを細かく刻む。それにしょうゆ、お酢、砂糖を2:2:1で混ぜる。今回はさらに食べるラー油を混ぜているが、ごま油にすればマイルドなタレになる。

かつて推せなかった推しを今、推せ!

今さら「食べるラー油」にはまってしまった。そのきっかけは新居の近くに〈ドン・キホーテ〉があること。入り浸るのは高校時代以来なのだが、かつてと違うのは、化粧品ではなく食品コーナーばかりを物色している点だ。
 
さらに、ドンキには実はプライベートブランド(ドンキでは「ピープルブランド」と呼んでいる)がある。正直あまり期待せずに焼肉のタレを買ってみたら、案外おいしかったのだ。以降、ドンキのPB商品を色々買ってみて、個人的に傑作だったのが、食べるラー油。255g538円の大容量サイズだ。
 
数年前、いやもう10年近く前の食べるラー油ブームの時は、あまのじゃくな逆張り精神が炸裂して頑として食べなかったので、周回遅れで今、かつて多くの方が感動した感覚を噛み締めている。以前は納豆ごはんばかり食べていたのだが、ここ最近はラー油ごはんが続いている。
 
そしてごはんだけでは飽き足らず、とにかくいろんなものにかけまくっている。特に合っていたのが、水晶鶏。片栗粉をまぶした鶏胸肉を茹でたもので、パサパサしやすい胸肉がしっとり仕上がる。そこに、自家製ネギダレと混ぜた食べるラー油のザクザクした食感が合わさる。ずっと食べていたい……。
 
ただ、味わうたびに「なんでこんなにおいしいものを、もっと早く食べなかったんだ……」と昔の自分を悔いてしまうので複雑でもある。
 
こういう、そのときどきの流行に乗らずにちょっと遅れてハマってしまうのは初めてではない。活動休止後にKARAの楽曲が好きになって、YouTubeで今のものよりやや低画質のMVを見て「これを〝低画質〟と感じない時に見ていればなぁ……」とさみしくなったのを強く覚えている。
 
けれど、当時ハマっていたミュージシャンの平沢進が、平沢を布教したいという自身のファンに「それぞれ、作品と出会う時期は違う(から、無理に布教するな)」といったことを何かで発言していたのを思い出す。アイドル界隈では「推しは推せる時に推せ」という標語のようなものがある。「今を見逃すな」という意味だが、私もそこで仕事をしているので、今ハマって!今認めて!という強迫めいた気持ちも否定できない。でも同時に、こうして時の熱狂に乗り切れなかった当時を経た受け取り方もあるよなぁ、と、周回遅れの食べるラー油を咀嚼しながら考えていた。

photo & text : Ameko Kodama edit : Izumi Karashima

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