カルチャー発ソーシャル行 Meet #3/
Essential わたしの#stayhome日記 2021-2022+物語のように (Like A Fable) CULTURE 2023.03.04

映画、小説、音楽、ドキュメンタリー…あらゆるカルチャーにはその時代の空気や変化が反映されています。そんな「社会の写し鏡」ともいえる、秀逸な作品を編集部Sが紹介。

観るたび、聴くたび、新しい手触りをくれる、永遠のヘビロテ。 

人は忘れる動物だというが、ここまで記憶がない一年は初めてかもしれない。2021年はそんな年だった。4年に一度の祭典も、海や山のにぎわいも、夜の街の嬌声も何も覚えていない。東京は無人と無声の街で、実体というか手触りがなくなってしまった。
 
そんな2021年、街で見かけた光景を絵にしてSNSにアップしていた漫画家・今日マチ子さんのイラスト日記が『Essential わたしの#stayhome日記 2021-2022』として発売された。
上野公園で校外学習をする小学生、マスクをした三越ライオン象の前で待ち合わせをする女性、打ち水をする五輪スタッフ……その数、163点。コロナ禍の制限の中でも人はしっかりと自らの営みを重ねていた。無味乾燥な東京が鮮やかに色を帯び、本を開くたびに「東京ってこんな街だったんだ」という発見がある。

『Essential わたしの#stayhome日記 2021-2022』今日マチ子・著/コロナが発生した2020年のイラスト日記をまとめた『Distance わたしの#stayhome日記』の続刊。(rn press/1,650円)公式サイト

何度も手に取りたくなる、という意味ではミュージシャン坂本慎太郎のニューアルバム『物語のように(Like A Fable)』もそう。彼の音楽は聴くたびにまるで違う新曲のように聞こえて、形をとどめない。なんというか、アカペラで口ずさめないのだ。覚えられないし、そもそも彼の歌を一字一句覚えることに意味がないような気がする。何度触れても、違う手触りがある。たぶん、これから、何度も聴き続ける。そういう作品に出逢えることは幸せだと思う。

『物語のように(Like A Fable)』坂本慎太郎/約6年ぶりのアルバム。コロナ禍の中、緊急事態とそれがなかったことのように進む日常を綴った10曲。(zelone records/2,860円)公式サイト

[今月の担当]編集部S/ドキュメンタリー好き。NHKオンデマンド『ヴェルヴェットの奇跡 革命家とロックシンガー』、嘘のような本当の話に驚く。Twitter:@bakatono72

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