花井悠希の朝パン日誌 vol.38 パンを片手に帰り道…〈ジュウニブンベーカリー〉と〈満〉 LEARN 2019.01.21

帰り道。仕事柄いろいろな場所へ行くことが多いのですが、帰り道は決まって明朝のパンの心配が始まります。さて、どこで明日のパンを買おうかな。どんなパンが気分かな。心配というよりこれこそ仕事後のご褒美タイム。パンで頭を満たすお時間です。わざわざ途中下車する元気はなくても(しかも今は寒すぎる…)美味しいパンを食べたい気持ちは毎日。そんなワガママに答えてくれる乗換駅で寄れちゃうパン屋さんに、今日の帰り道も甘えてみましょう!

100%の上を行け!?…〈ジュウニブンベーカリ ー〉

この朝パン日誌にも何度か登場している〈365日〉の杉窪章匡シェフの新店が、昨年京王百貨店にオープン。京王百貨店ということは、そうです。雨にも風にも負けることなく辿り着けるのですよ。優しい!

「ジュウニブン食パン」
「ジュウニブン食パン」

驚かないで聞いてください。なんとこちら、水分量120%の食パンなんです!どういうこと!?100%越えって何!?(まず私が驚いている)自分の常識を超えた食パンに出会える予感たっぷりです。持ち上げるだけで分かる、重力にもたれかかってくる重みとしっとり感。そのままもきっとすごいのだろうと分かりつつも、トースト好きとしては焼かずにはいられませんでした。この子がトーストすると果たしてどうなるのか見たい気持ちを抑えられません。

新宿 ジュウニブンベーカリ ー

パリパリパリリ。シャリシャリリ。なんて繊細なクラストなの。まるでレースを一瞬で凍らせたような繊細さにハッとします。しっとりもっちりとばかり想像していた脳は、このあまりに薄く軽やかな皮の食感についていけません。中のクラムは、気泡が大らかに大粒で、期待に答えるしとしともちもちさ。高加水を余すことなくアピールし口内にぐでーんと伸びていきます。ここが私の家だと言わんばかりにぐでーーんとゆるみきっておりますよ。緊張感ゼロです。よしよし。甘やかしてあげようじゃないの(誰?)。大粒の気泡からは空気の玉が抜けとなって、しとしとぐでーんの中に風穴をあけていきます。なのでこのお餅のようなもちもち感に、ふかふかとした軽やかさも弾むのです。そして生地のいやらしくない甘みが抜けていく。…おそろしい子!

「風船パン」
「風船パン」

ひときわショーケースで目を惹く可愛いパッケージ。「ジュウニブンベーカリースペシャリテ」と書かれたこの子は、有塩バターを抱えたお食事パンです。

新宿 ジュウニブンベーカリ ー

こちらも水分量高めで、生地同士がねちっとくっつきあい、お餅のような弾力のもっちりさがあります。ついこの間のお正月を思い出してしまうテイストというか。

新宿 ジュウニブンベーカリ ー

有塩バターのゾーンに来ると塩気とバターの油分がもたれかかってきました。嫌いじゃないです、このコクの重さ。少しだけトーストすると弾力推しの生地からふわっとした舌あたりが現れます。表面のクラストも薄くパリッと。と思ったら、ちゅるちゅると有塩バターの油分が流れ出しパンの高加水と一体となって、ざばーん。大波となって口内を翻弄します。それはそれはしあわせな波。しばし身を委ねましょう。

「メロンパン」
「メロンパン」

袋の中に収まりきらないその甘く柔らかな香りが食べる前から笑顔を振りまき、辺りを和ませます。表面のクッキー生地は薄くサクッと。内側の生地はしなやかに口に寄り沿い溶けていきます。クッキー生地が消えていくそのタイミングに合わせて、内側も一緒に溶ける。内側のパン生地だけ口内に取り残されがちなメロンパンが、とても軽やかでしなやかな印象を見せ、新しさを感じました。

新宿 ジュウニブンベーカリ ー

こちらは気泡が細かめ。鼻から始まり舌を通して口内へ広がっていく甘さの幸福感といったらたまりません。そこにバニラビーンズの香りのレイヤード。うっとり夢見心地に連れて行ってくれますよ。

通路横の救世主…〈小麦と酵母満〉

こちらは三軒茶屋に本店がある和のベーカリー〈濱田家〉さんの姉妹店。エキュート品川や曙橋にもお店がありますが、私はエキュート日暮里店にお邪魔しました。そうなんです。エキナカです。しかも通路にカウンターが面しています。乗換の5分、いや3分でも(どのパンにするか迷わなければ)ゲット出来ちゃう心強さ。

「あんずショコラ」
「あんずショコラ」

しっかり揚げた春巻きの皮みたいな表面のパリパリが、一口一口弾け飛ぶ。包丁を入れたら、バリンと音を立てまず天井が弾けました。というのも、天井の下に空洞ができているのでこの独特なパリンと固い食感が生まれているんですね。パン生地はしっかりした密度の歯応えで土台を作り、抱え上げるのはたっぷりのチョコレートゾーン。

日暮里 〈小麦と酵母満〉

この断面の美しさにまず惚れ惚れ。少しだけトーストしたので中のチョコチップが溶けて目くるめくチョコレートワールドが広がっています。そこに大ボスの杏がやって来ると、チョコレートに支配された口内の注目を全て奪う味の主張を放ちます。チョコレートに甘やかされた口内は、まずその酸味にガツンとやられます。キュッと口内が喝を入れられたようなムードになった後(どんなムードだ)そこからじわりとじわりと杏の甘みとチョコレートが歩みを揃えて、ナイスタッグを見せてくれます。上のパリパリは下のチョコレートと混ざるとチョコフレークのような親しみのお菓子感を出してくるし、決して背伸びしたパンじゃないのが安心します。

「サンライズ」
「サンライズ」

これはお菓子の世界のメロンパンだ!甘さ十分。私そんなにメロンパンよく買うわけではないのになぜだか今回メロンパン食べ比べみたいになっちゃったことに今気づきました。おそらく勝手に脳内がメロンパンフェアしていたんだろうな…(無意識って恐ろしい)。

日暮里 〈小麦と酵母満〉

こちらのクッキー生地は分厚いタイプ。その分サクサクが力強くて、尚且つたっぷりのお砂糖をまとっているのでクッキー指数が高めです。中に包まれたパン生地は甘さ控えめですが、外側がとびきり甘いのでちょうどよし。このお菓子なメロンパンっぷりは、子供心をくすぐられるというか、懐かしい気持ちにさせられます。「サンライズ」って商品名からしてどこかノスタルジーな響きがありますよね(かの寝台特急の名前にバリバリ影響受けているだけの予感もしますが。笑)。ほんのり黄みがかってぷっくりした見た目からして朝に気持ちのいいメロンパンでした。

クタクタに疲れきった日だってお腹はすくし、明日はやってくる(←どうした)。そんな時に嬉しい駅直結のパン屋さん。今夜の寄り道に早速いかがですか?

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