花井悠希の朝パン日誌 vol.29 晩夏に合う食パンとは?…〈空と麦と〉と〈カフェバッハ〉 LEARN 2018.09.03

あのー、秋の入り口知りませんか?前回、「次回は秋の入り口に差し掛かっているでしょうか。」なんてさらりとまとめたのに、どうしましょう、夏カムバック。一時期涼しくなったせいでその快適さを知ってしまった身体は、舞い戻って来たこの日中の暑さを理解出来ないでいます。とはいっても、夜風は幾分か涼しくなりましたね。今日はそんな行ったり来たりな気候にぴったりな(そうなの?)さっぱり系食パンの回ですよ(強行突破)!食パンと一括りにしても、ビロードのような滑らかな舌触りからシトシト溶けるタイプ、もっちり系などなど、キャラクターも個人の好みもバリエーション豊か。その中で今回は、甘さ控えめであっさりテイストの食パンにクローズアップします!

かっこいい食パン、ここにあります…〈空と麦と〉

小麦を自社農園で栽培までしていらっしゃる、小麦に対する想い溢れるパン屋さん。食パンは3種類あります。どれもこれも魅力的なんです。うんうん頭を悩ませて(相談にのってくださった店員さんありがとうございます)選んだのは「新麦パン・ド・ミ」。こちらノンオイル・ノンシュガーであります。

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「ザクザクザクザク」!!1口目、いや、1音目からハート持っていかれました。表面のこの冴え渡るザクザク音、聞き惚れます!トーストするとザラザラと角が立った無骨な表面は目が荒く、ドライ。なのになのに!軽快な音をたて表面を侵入したらば、ぬちっとお餅のような内側ゾーンが現れました。あまりにも自分の有したあっさり系食パンのイメージと違うそれ、現実のドライな表面と皮のパリッと感とも異次元で、あれ?私ワープでもしたのかなっていう感覚です(マリオか!)。近いものを探すなら焼きもちのような感じでしょうか。手で割きながら断面を見ると、生地が糸をひいていて、モチモチを隠せません(隠す必要は、ない)。モチモチなのだけど、ドライな爽快さがあるのは、空気の余白が抜け感を作っているからでしょうか。

美味しいに理屈はいらないでしょ?そう言われているような余裕を感じます。ノンシュガーなのに、その稀有な食感を口内で楽しんでいると小麦の甘みがじわじわと穏やかに広がってきます。なんとも幸福な余韻。あぁ、お母さん、おかわり!!

食パンだけ買うつもりだったのに、自らの欲を抑制出来ずあと2つもパンをゲットしていました。

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「たっぷりチーズクリーム」
「たっぷりチーズクリーム」

みっしりして歯ごたえのある生地は歯離れがよくもちっと押し返してくる柔軟性もあります。甘さはとても控えめな分小麦の香りはムンムンとしっかりで、これまた無骨な印象です。

そこにチーズクリームがてよーんとちょっかいをかけてきます。パンの骨太さを見て見ぬ振りをしてチーズクリームはマイペースに生きています。甘くて人懐っこくてチーズはまろやかでコク深くて……。あれ?骨太パンさん、気づいたらデレデレじゃないですか!おぉ、男女の駆け引きを垣間見るようだ(そうなの?)…。

「クイニーアマン」
「クイニーアマン」

柔らかく甘いデニッシュ生地に、カリカリとキャラメリゼされた砂糖。サクサクではなく柔らか食感だからこそ、甘やかにバターの風味が優しく花開き、シャリッと砂糖が気をひいて、緩急のバランスがとっても良いです。

と、ここで終わりかと思ったらノンノンノン。なんとこの子すごいもの抱えているんですよ。イチジクの赤ワイン煮を2つ抱えているんです。

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ひょこっ。

イチジクを齧るとぶわっと赤ワインの奥行きのある風味が優しい世界を大人色に染め上げます。普通のクイニーアマンには、甘いでしょと縁遠くなってしまっている大人の皆様にこそ贈りたい。

バッハ大先生のお墨付き?…〈カフェバッハ〉

南千住の有名喫茶店〈カフェバッハ〉の「イギリスパン」。なんせ音楽を小さな頃からやってきているのもあって音楽モチーフにはとことん弱いワタクシ。

まず見よ、このパッケージ。あのバッハ大先生がコーヒーを嗜んでいるではありませんか!コンクールやなんやでバッハの無伴奏作品に目を白目にさせながら取り組んでいたあの頃の私に見せてあげたら少しは気もほぐれたかもしれません。

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そうそう。実は子供の頃は食パンが苦手だったんです(急な大告白)。口に残る甘みが苦手で遠ざけていたのですが、イギリスパンを食べてから食パンを食べられるようになったんです。イギリスパンは普通の食パンより甘さが抑えめで食感も軽やかなものが多いですよね。食パンの苦手だった部分がないイギリスパンは私には救世主のようでした。

さてさてこちらの「イギリスパン」はどうでしょうか?

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そうそう。この面長フェイスね。トーストした時の軽やかな香ばしさと、甘さが前に来ない感じがイギリスパン然としていて安心します。

だけどこちら、内側がクッションのようにふわふわ。ふかふか。目が細かくて、気泡も小さくてとても繊細に出来ています。

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だけどサクッと香ばしい表面を切ったその勢いのまま、ふわふわゾーンもすっと歯が通る。皮も然り。この食感も味わいもあっさり、クール&ドライな感じこそ私の好きな「イギリスパン」なんです。

ちなみにお店でこのトーストをオーダーすると、バターを塗った所に塩、胡椒を振りかける食べ方を案内されるそう。お家でもぱらりと振ってみればよかったな。お供のBGMはバッハの無伴奏チェロ組曲第一番プレリュードでいかがでしょうか?

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一言であっさりテイストの食パンと言っても、やっぱりキャラクターが全く違うから面白い。食パン探しの旅はまだまだまだまだ楽しめそうです♪

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