花井悠希の朝パン日誌 vol.22 待ち合わせは水色のパン屋で。〈SHIBUichi BAKERY〉と〈Comète〉 LEARN 2018.05.21

こんな約束をしてみたい!願わくば文通でこんな約束を交わしてみたい!!という私の独断と妄想によって今回のテーマは『水色のパン屋さん』であります。

iPhoneで連絡をとるのが当たり前になった昨今。待ち合わせだって、お店情報を貼り付けてGoogle MAPについて行くだけということがほとんどになりました。でもこんなフレーズを共有して水色のパン屋を目印にそれぞれが相手を探すなんて素敵じゃないか!と思うのです。会えない時間が愛育てるのさって郷ひろみさんも歌ってましたしね。(そこ?)街の景色に馴染みつつ、ハッと目を引く水色のパン屋さんを今回はご紹介します。

レストラン屋のBAKERY…〈SHIBUichi BAKERY〉

こちら雨の渋谷。駅から原宿方面へ歩いて10分ほど行くと、水色の壁を発見しました!

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この日は土砂降り。テラスにベンチがあるので待ち合わせにも最適!と、ザーザー傘を叩く雨に聞こえないフリをして、己の妄想力を働かせ待ち合わせのシーンを妄想します。うん、晴れた日ならきっと素敵だ。

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「クロワッサン」
「クロワッサン」

ぷっくり膨らんだ姿は可愛げのかたまり。クロワッサンって、パリリと他を寄せ付けない程カリスマ性を放つ子もいれば、むっちりワガママボディを惜しげもなく披露してくれる子もいる。これだからクロワッサン定点観測はやめられない。

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1つ足りとも潰したくないと思うほど、形良く整った気泡がたっぷり。見るからにふかふかな断面にたまらず口づけるとジュルリ。バターが流れてきます。決して液状なはずがないのに、そのジューシーさから横へ横へと広がるバターの波を感じずにはいられません。

表面はしっかりパリッと。パリっとが打ち破られるとその見た目を裏切らず繊細な歯触りが通り過ぎます。その一層一層を崩す度にバターの波がザッバーン。バター狂の私も含め全バター好き必食なクロワッサンです。これは。

あなたもバターの海を泳いでみないか?(だまらっしゃい)

「クロワッサンレザン」
「クロワッサンレザン」

同じクロワッサン生地を使ったレザンはリベイクせずに食べるとぎゅっとバターが密集した柔らかな生地。

一口食べればまず、そのたわわに練りこまれたレーズンの豊かさに驚きます。ぷるるんと弾み、にゅっと顔を出す瑞々しい果肉はラムの香りと十分な甘みで口内を彼色に染めあげます(なんとなく私の中でレーズンは"男性"的なんだな)。あの惜しみないバター感もレーズンの存在感にはおされがち。

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ですが温めて食べてみると、バターがほどけ全ては柔和ムードに。アーモンドクリームが柔らかくレーズンを包み込む。バターも甘やかにレーズンを包み込む。まるで主張しっかりのレーズンをたてて一歩ひいているよう。これが郷に入っては郷に従えってやつか!みんな"私が!私が!"だとまとまらないもんね。勉強になりまーす!

「バゲットカンパーニュ」
「バゲットカンパーニュ」

醤油麹を使っているから外側がおせんべいみたいな芳ばしさですよ、というオススメに興味掻き立てられたこちらのバゲットカンパーニュ。トースターの扉を開けた瞬間、出た!しょうゆ!!予想していたけど想像以上に香り、醤油ってます。

そして噛んで舌に触れた瞬間、思いもよらないことが起こりました。砂糖醤油で頂く餅の記憶が脳内を征服してくるではありませんか!私の舌と脳が軽く混乱しています。生地の甘みともちっとした食感に、醤油の香ばしさが掛け算されるとこんな化学反応が起きるとは!

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と、餅の記憶に完全に攻め落とされるかと思いきや一歩手前で、小麦のカンパーニュらしい力強さがグンと立ち上がってきました。ホッ。でも、口内から立ち去る最後の瞬間に手を振ってきたのはまたしても醤油の発酵感。クセが強い!(好きです千鳥さん)

何もつけずそのまま食べて衝撃を受けた私ですが、いつもの流れでバターをのせてからはたと気がついた。これってあの魅惑タッグ、バター醤油ではないか。合わないはずがない!そこでようやく冷静にパンと向き合えました(遅)。
外側はカリッとしつつハードすぎないサクサクさ、内側はもっちりとしつつ歯切れもよい柔らかいタイプ。取り乱してしまい失礼しました。チーズをのせても美味しそうです。

明治通りから一本入った路地にテラス付きのパン屋さんが出来たなんて、宮下公園はなくなっちゃったけど新たな渋谷の息抜きポイントになりそうです。

パリの水色?…〈Comète〉

東京タワーのお膝元、赤羽橋にある〈ブーランジェリー コメット〉さん。鮮やかな水色の壁、ガラスドアから見える店内の白、横にズラリと美しく並んだ麗しきパン達。アットホームな温もりと洗練された印象を与えるお店構えに一目惚れしました。

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入ってみるとパンが並ぶ台も水色。私の妄想で見た水色のパン屋感高し!(聞いてない)店員さんとお話しながら選べるお店のサイズ感も絶妙です。

こちらのパン、部屋に置いておくだけでものすごくいい香りを放ちます。明日の朝まで果たして私は待てるのか?と自分に自信がなくなるほど香りの誘惑がすごかった!

「サクリスタン」ねじりカスタードパイ。
「サクリスタン」ねじりカスタードパイ。

一口食べるとやってくる衝撃。これは言葉がいらない美味しさ!でもここは言葉にしなくてはならない、、、頑張ります(笑)。

パイ生地にしっかりキャラクターがあって、コクがシュルルと立ち上ります。そして間髪入れずカスタードらしい卵のまろやかな甘みが、絶妙なテンポでパイ生地に合いの手をいれてくる。このリズム感の良さは餅つきか、あるいは夫婦漫才レベル!

底は砂糖がキャラメル状に絡まっているので、翌朝に食べているのにまだ生地にカリッと感が残っているというのもまた偉大なり。焼かずに食べると、内側がパイとカスタードそれぞれ個性の違う強い味わいをしっとりと抱えている状態をキープしているのもまた一興。リベイクしたらまた違ったサクサク感を味わえそうだから、二本買ってそれぞれに楽しんでみたいです。

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店名にもなっている看板商品の「コメット」もゲット。しかし撮影失敗して店頭での写真しかありませぬ。すみません。

米ぬかが最後にひょっこり、甘みとなって顔を出すのが面白い。外側のクラストは分厚く、ガリガリと歯が削る度に燻されたような強い芳ばしさが口内から鼻へと通り抜けます。しっかり焼きが入っているので、内側も結構ざらっとしたワイルドな感じかなと思いきや、気泡も豊かにむっちりとした舌触り。そして小麦の香りが華やかで噛みしめる度に芳醇な香りが弾けます。甘さは控えめに作られているので、食事と合わせたらさらにその豊かな小麦の個性が発揮されそう。

パリで修行されていた<Comète>のご主人が作るパンは、日本人の味覚の近くにいながらさらに1エッセンス洗練された雰囲気を纏っていて、ズラリと並ぶパンの棚の美しさにはワクワクすること間違いなしです。

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水色のコートを羽織って、今日も東京の片隅で、そんな素敵な待ち合わせを夢見る花井がお送りしました。

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