花井悠希の朝パン日誌 池袋の外れで甘えたくなる?〈ロンロネ〉で、心がホッとする焼き菓子をテイクアウト。 LEARN 2021.02.18

さて、2月後半はどんなパンを食べようか。そう考えながら向かった先は、またしても焼き菓子屋さんでした。焼き菓子を朝パンにするのが常日頃好きな私ですが、2月は甘い物に溢れる街のムードになおさらそそのかされてしまうようです。こうなったら“ホットドリンクがおいしい寒い冬の間に”を免罪符に、とことん甘くいってみようじゃないか。

カラダに優しく、心に甘く。

静かな住宅街で視線を感じたら…。
静かな住宅街で視線を感じたら…。

池袋と目白の間。THEターミナルシティな喧騒もどこへやら、池袋から徒歩10分ほど目白方面へ歩くとフランク・ロイド・ライトの建築でも有名な〈自由学園 明日館〉が見え、さらに先へと歩みを進めると、人々の生活のにおいを感じる住宅街へ入っていきます。その中にちょこんと佇む小さなお店が〈ロンロネ〉さん。扉をあけると空間には焼き菓子の幸せな香りが充満していて、マスクの下で目一杯深呼吸してしまったのはここだけの秘密です(バレてないといいな)。

口に触れる全てが柔らかく穏やかに甘い。温めずにいただいたのに、ほかほかと口内が温まってくるようなホームスイートホームな甘み(意味不明)。とにかく優しくて、ウェルカムだよって大きく手を広げ抱きしめてくれるようなそんな味わいなのです。いちごのフルーティーさとまったりとした白あんも、その木漏れ日のような穏やかな温もりの中で一緒にうたた寝。

北海道産小豆とクリームチーズが練り込まれたスコーン。〈ロンロネ〉さんのスコーンは全てバター不使用で、菜種油や有機豆乳などカラダに安心安全な素材で作られているとのこと。スコーンといえばバターたっぷりなイメージなのに、そのバターが入っておらず、ここまでサクサクとホロホロ、そして徐々にしっとりへと移ろうグラデーションが表現されるとは驚いてしまいます。香りもとても良いのです。生地がホロホロと溶けると順々に甘みが滲み出す。クリームチーズは酸味というよりミルキーなコクとなって、なるほど、これがあずきみるくという命名の所以だなと納得です。小豆もゆっくりと腰をあげて落ち着いた甘さでほくっと顔を出しますよ。

生地は同じくサクホロしっとりの3段構え。でもこちらは一口目から見た目以上にパンチがあります。ピーナツバターといったらお馴染みのあのしっかり重量級のコクと甘みが先制パンチを繰り出すと、そこになだれ込むようにして塩気が一気に押し寄せます。ビターチョコからは甘みと奥深い風味が引き出され、ピーナツバターに負けず劣らず冴え渡る。優しいだけだと思ったらケガするぜ(なんか古い)。

サクサクサクと歯に気持ちよい朗らかな生地の甘みを楽しんでいると、マロンの粒たちがあれよあれよとこぼれ出てきます。と思ったら大きな塊も。大小様々に散りばめられたマロンがメープルシロップをたっぷりと抱えこみ微笑むと、そんな甘い世界に一筋の光の如くささやかな塩気が差して全体のほっこり甘いテイストをさりげなく引き締めます。そうすると小麦の味わいもさらにたってくるから、いやはや恐れ入りました!バターなしのスコーンでこんなに奥行きのある味わいに出会えるなんて、また一つ新しい扉を知れた気持ちです。

2020年9月、先の見えないコロナとの共生にみんな元気がなくなっていた頃にオープンしたこちらのお店。元々、本駒込で人気だったカフェ〈ギャリコ〉の店主の方が始められたお店だそう。店名の〈ロンロネ〉とはフランス語で猫が喉を鳴らすゴロゴロ音とのこと。この音が人間にとって癒しの効果があることから、少し疲れた心がほわっとほぐれるようなお菓子でありたい、という想いが込められているのですって。だからお店に優しい空気が流れているのですね。さぁ、2月もラストスパート。お言葉に甘えて、“ロンロネ”とフランス流に喉を鳴らし甘えさせていただきましょう(お菓子に甘えがち)。

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