花井悠希の朝パン日誌 1月だけ楽しめるフランスの伝統菓子。おすすめ「ガレット・デ・ロワ」3選! LEARN 2021.01.07

「ガレット・デ・ロワ」は、1月6日のキリスト教の祝日「公現祭」をお祝いして食べるフランスの伝統菓子。切り分けられたピースにフェーブが入っていた人は王冠をかぶり「王様」としてみんなから祝福を受け、その幸運は1年続くと言われています。現在は当日だけでなく、1月の間楽しまれるものとなり、日本でもよく見かけるようになりました。新年最初の「朝パン日誌」はそんなガレット・デ・ロワの総集編!これまでの連載で紹介したものに加えて、新たに今年用にお取り寄せしたお店もご紹介します。

1.白馬の王子さま!?…〈エーグルドゥース〉の「ガレット・デ・ロワ」(朝パン日誌Vol.14より)

花井さん連載 ガレット・デ・ロワ

キリッと端正で、かつ気品溢れるルックスは王子様!ナイフを入れたときのパリパリパリという小気味よい音から、もうおいしいは約束されているようなもの。トップは鏡面のように美しく砂糖コーティングされて照り照り、ツヤツヤとしています。一口食べれば思わず唸ってしまうはず。雑味が一切なく、余分にはみ出るものが一切ありません。パイの一層一層にピンと張りつめた緊張感があって、層の間には静かな空気がシンと閉じ込められています。そこをパリパリと共鳴させながらパイが崩れていくと、バターのコクや旨みをたっぷり感じながらもこのピシッとした口当たりのせいなのかとても清々しいのです。

花井さん連載 ガレット・デ・ロワ

そして内側はまた違うストーリーが始まります。アーモンドクリームは、しっとり甘やかにゆったりと解けて、優しいタッチで描かれた甘美な夢をスローモーションで見ているよう。洋酒はほんのり、香りと奥行きを出していますが、あくまでも甘いストーリーのエッセンスとして。そこにパイがサラサラと効果音を加えて、物語はエンディングへと向かいます。最後に残った外周の部分を大きく頬張れば、わさわさサワサワと口内にバターの甘みと香ばしさが広がって壮大なフィナーレで幕を下ろしました。

スタンダードタイプの他にも、表面が真冬の湖のようなルックスの塩バターキャラメル味や、香り高いマロン味なども。安心してください、どの味でも気高い王子様感は健在です!

2.スターの貫禄…の「ガレット・デ・ロワ」(朝パン日誌Vol.37より)

花井さん連載 ガレット・デ・ロワ

エーグルドゥースが王子様なら、こちらは王様。「ガレット・デ・ロワ(王様のケーキ)」の名前に相応しい風格です。2層になっていて、下がスタンダードのパイで上がチョコレートのパイ。下の層のパイが舌に着地するや否やバターが舌の上を滑り出し、バターの吐息をあちらこちらに吹きかけます。薄く繊細に伸ばされた幾重にも重なるパイがシャクシャクと割れる狭間から、隠しきれないバターのコクがダダ漏れです(褒め言葉)。パイに姿を変えているだけでこの子、実はバターそのものなんじゃないかと疑ってしまいそうなほどリッチなバター感。

花井さん連載 ガレット・デ・ロワ

一方で、上の層のチョコレートパイは落ち着き払ってコホンと咳払い。苦味をキリッと光らせます。そんなパイたちに挟まれたアーモンドクリームは、しとっと柔らかい口溶け。たっぷりと混ぜ込まれたチョコレートがカリカリと違った食感でアプローチしてくるかと思いきや、アーモンドクリームと馴染みスッととろけていきます。甘さは控えつつチョコレートの持つ味わいとキャラクターはハッキリと際立っていて、さすがジャン=ポール・エヴァンさん!

3.日本一のガレット・デ・ロワ…〈ウルーウール〉

最後は、この2021年のお正月にいただいたばかりのガレット・デ・ロワを紹介したいと思います。いつかきっと食べてみたい!と思っていたお店のものをお取り寄せしてみました。それが滋賀県にある〈ウルーウール〉さん。なんとこちらのお店、「ガレット・デ・ロワ コンテスト」で日本一に輝いたお店なのです!届いてフタをあけてみると、あまりの芸術作品のような精巧な美しさに危うく卒倒しそうになりました。ま、まぶしい…後光が見えるようです…(※イメージ)。

これはすぐにいただきましょう。温めずともサクサクな予感がしたので、まずはそのままガブリ。大正解です!サクリと容易に歯が入ると、さわさわさわーサラサラサラーと木の葉が揺れるような風を口内に吹かせてパイがほどけていきます。一層一層が空気を帯同させて軽やかで、それが幾重にも重なりシャラリシャラリと繊細に響きます。ほどける瞬間毎に、バターはすっきりとポーカーフェイスのまま雑味のないまろやかなコクとなって上品に広がっていきます。それらをまとめて口内に収め、溶ける心地といったら!快感以外のなにものでもありません。

そして内側のアーモンドクリームは、外のシャラリシャラリと空気を含んだ軽やかなパイの第二章。ストーリーは続いています。ふんわりと柔らかく、こちらもまた繊細。ほわりほわりとソフトタッチのまま緩むと、アーモンドの、ラム酒の、あのガレット・デ・ロワらしい味わいがまあるく穏やかに広がり染み渡ります。決して個性を高らかに歌うタイプではなく、こちらにどこまでも寄り添って温かく耳元で応援歌を歌ってくれるような親密さ。説明書通りに温めたら、次の日以降も同じようにおいしくいただけました。

花井さん連載 ガレット・デ・ロワ

ガレット・デ・ロワといったら、お楽しみのフェーブ!こちらのフェーブは滋賀県らしく、信楽焼の前川幸市さんの作品です。表情も動きも景色が見えてきそうなほど可愛らしいアヒル!ちなみに当てたのは私ではありません。見事にハズレました…ぐぬぬ。大人気のお店ゆえ、フェーブ入りのガレット・デ・ロワの予約は既に昨年中に終了していますが、フェーブの入らないタイプは毎朝焼き上げていて店頭で販売されるそうです。通販もやっていますし、この優しい気持ちを届けてくれる日本一のガレット・デ・ロワ、ぜひご賞味あれ。

今年のお正月は、帰省や旅行、お出かけをセーブした方も多かったはず。いつもの新年より季節感に触れる機会も少ないように思います。本日1月7日は胃を休めるためとも言われている七草がゆの日であり、そこからバターたっぷりなガレットをオススメする流れはけしからんとお叱りの声が聞こえてきそうではありますが(笑)、おうちで楽しめる新年のイベントとして「ガレット・デ・ロワ」もぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか?

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