花井悠希の朝パン日誌 秋冬総決算!…〈tOki dOki〉と〈おかしとパン MOCHI〉と〈信州 里の菓工房〉 LEARN 2020.03.19

日中、暖かい日がふえて春を感じるようになると、やってくるのがアイツです。そうです、確定申告です。というのは冗談ですが(とも言えない程、毎年ヒーヒー言っていますが)、年度末は1年を振り返り、気持ちの切り替えをする季節ですよね。物も心も記憶も整理整頓するタイミングともいえます。「今年食べたあのパン美味しかったな」「いつ食べたっけ、どこのパンだったかな?」「あれまだちゃんと書いてない!」と、とっ散らかった私の脳内パンリストもアップデートしなければ!近づく春の陽気に、軽やかなお洋服を身に纏いたくなる一方で、あの服まだ着ていない!と、慌てて冬服を引っ張り出す性分なのですが、それはパンにも然り。パン屋さんの中で桜色のパンがセンターを飾るようになってくると、すみっこで肩身が狭そうにしている栗テイストたちを構ってあげたくなる(天邪鬼め)。ということで今回は年度末らしく(!?)、パンリストの整理整頓!秋から冬にかけて食べたパンを振り返ります。

営業日はときどき…〈tOki dOki〉

現在発売中のHanakoの特集「進化する、日本のパン!」にも取り上げられているパン屋さん〈tOki dOki〉。出会いは突然でした。〈アテスウェイ〉に行くため、寄り道多めのお散歩の途中で見つけた小さな看板に踊る「パン屋 tOki dOki」の文字。初めて知るパン屋さんだったけど、店へと続く階段の先に強烈に惹きつけられ、気づけばカンカンと階段を登っていました。そして見つけた、カウンターだけの小さなパン屋さん。調べてみると営業日は「ときどき」らしい!ちょうどその「ときどき」のタイミングに当たったなんて、ラッキー!パンの神さまは私に味方してくれているなと思った瞬間です(単純)。

「バターラムレーズン」
「バターラムレーズン」

キョロキョロと目移りしてうんうんと迷い、決められないうちにお客様がどんどんいらして売れていく。ドナドナドナ…(違)。人気を肌で感じながら、迷いに迷って選んだ1つ。まずはモチモチと引きのある生地を口内でたっぷりと可愛がりましょう(←言い方)。ぎゅっと噛むと、ぬんって返してくれるキャッチボールが楽しい。そうこうしているうちに、真ん中で待ち構えていたレーズンがふ◯っしー宜しく、ぷっしゃー!と勢いよくジューシーさを大放出するではありませんか!媚びを売らないラム酒の強さがぶわんと広がります。ハバナクラブを使っているらしく、香りもアルコールで舌にピリッと来る微弱電流みたいな刺激も(お酒弱いのです)、ちゃんとラム酒のそれ。全くお酒が飲めない方なら少しふわっと来ちゃうんじゃないかと思うほど、なんちゃってラム酒じゃなく、真っ向からラム酒の心意気にリスペクトです。

レーズンぎっしり!
レーズンぎっしり!

いいんですよ、あとは一緒に包まれたバターシュガーたちがなんとかしてくれますから。バターとシュガーがじゅわっとコクと甘みで甘やかしを与えてくれて、うまみ増し増し。甘さ控えめの生地が待っていましたと言わんばかりにしっかりとしたクッションで受け止めるから、余すことなく甘みもバターのコクもお酒もじゅわーと吸い込み完熟したレーズンのイイとこを心ゆくまで楽しめます。この芳醇な味わいって秋冬に食べたくなる!

ポメラニアン食感!?…〈おかしとパン MOCHI〉

〈おかしとパン MOCHI〉さん。まず、「おかしとパン」って字面の破壊力が最強だと思うのは私だけですか?甘やかでめくるめく幸せな世界が自分の妄想の中で羽ばたいて抗えなくなってしまいます。「おかし」も「パン」も好きな私みたいな人はどうしたらいいんだ(入ればいい)!?店の前の看板にも〈おかしとパン MOCHI〉と出ているなんて、ちょっとズルいじゃないか(褒めてます)。立地も店構えも小さな店内の雰囲気も、見つけた!感があって、高揚してしまいますよ。

「栗パン」
「栗パン」

なんですか、この赤ちゃんのほっぺのような食感は。ふかふかでふわふわ。見た目はこんがりと焼けているから、てっきりギュッと詰まった生地なのかな?と思いきや裏切られました。口に持っていく前に、手で持ち上げただけでもこのほっぺのようなふかふかさが分かります。口いらないくらい(いや、いる)。水分を蓄えていながら重さはゼロで、触れるとこ全てを抱きしめるような柔らかさと優しさ、そして丸み。そうだなぁ、もっふもふのポメラニアンを思い出してください。触れれば全人類が、もはぁぁぁと心溶けちゃうアレ。こちら皆を無抵抗にさせちゃうそんなアレ、備えてます(どれ?)。

四谷 MOCHI

危ない危ない、肝心の栗が後回しになるところでした。というのも、ゴマが一面を覆っているのでひたすら香ばしくって、少し栗が後ろに回る感じかな?と思ったのですが、ガブリと栗ゾーンにいくと更なる幸福が待っていたのです。なんとこの栗、栗クリームとかじゃなくて、もはや栗きんとん!もさもさ、さわさわ、ありのままの栗のような舌触りも、一気に口に入れると喉に“んぐっ”って来そうな予感も(ゆっくり食べましょう)まさに秋の味覚、栗きんとんそのもの。甘さも栗の繊細な香りと味わいを生かす自然なものだから、個性ある生地にもずっと前から一緒にいたみたいにしっくり収まっているのが微笑ましい。春近しではありますが、先月末に行ったときには「栗パン」が店頭にあったので、定番商品かもしれないし、今ならあるかもしれません(行かれる際はご確認ください)!

「ミルクパン」
「ミルクパン」

「ミルクパン」は、1つ、2つ、3つ。声をあげながら小さい頃書いた山のように、こんもり3つの山が連なったキャッチーな見た目。それだけでも愛でるには十分なルックスの食パンです。

カリッと焼けた表面以外は、この子も赤ちゃんのほっぺのよう。やわやわでふやふやでふかふかでもふもふ。イコール最強。ミルクパンなので、しみじみとした甘みも届くけど、「う、甘い…」というのではなく角のまあるい甘さが小麦の香りの上をたゆたう感じ。好きだ。兎にも角にも生地の食感が新感覚でこれ、食パン?って聞きたくなります。耳も普通の食パンより柔らかいしふやふやだし、なんか生まれたてみたい。また一つ食パンの奥深さを知りました。好きだ(2回目)。ちなみにこの日はケーキが売り切れていたので、春になったらケーキを買いに行くんだって決めています(謎の宣言)。

栗菓子屋さんが作る栗あんぱん…〈信州 里の菓工房〉

〈信州 里の菓工房〉は、栗きんとんで有名な岐阜県の和菓子屋さん〈恵那川上屋〉の姉妹店。上の「栗パン」はフリだったのかとでも言いたくなるほどの栗きんとん被せであります。でもね、やっていたんですよ。栗菓子の名店でもパンmeets栗きんとんを!

「栗あんぱん」
「栗あんぱん」

手のひらにちょこんとのる小ぶりなサイズ感は、朝パンというよりも和菓子の風格。口付けるとふかふかと返してくれてうふふと頰が緩みます。しっとりと滑らかな舌触りで、カステラのようなこっくりした甘さが懐かしい。ぬくぬくとその親しみ覚える味わいに気持ちを緩ませきっていたら、真ん中部分に差し掛かり雰囲気が一変します。

じろり…。まるで目のよう、顔のよう…。
じろり…。まるで目のよう、顔のよう…。

塩気によって小豆の旨みと甘さが引き出されたキリッと冴え渡る粒あん。そこにお店の真骨頂、栗きんとんが顔を見せます。のっそりと栗のほくほくとした質感から、舌を這うように滑らかに広がっていく栗きんとん。瞳を閉じれば枯山水の庭園が見えてくるような(※イメージ)本格的な和の趣です。パンといってもお饅頭でもあるような上質な逸品なので、贅沢に朝はもちろん、濃いめに入れた玉露のお茶でゆったりと楽しむお茶の時間にもきっと似合う栗あんぱん。〈恵那川上屋〉のホームページからも購入できます。
余談ですが、〈恵那川上屋〉の夏限定発売(4月下旬から9月下旬)の「栗観世」という栗きんとんをわらび餅に包んでいるみたいなお菓子が、この世の物とは思えない美味しさなことも(最上級の褒め言葉)、最後にそっと記しておきます。

桜の開花宣言も出て、街も太陽の光も春のムードに満ちていますが、後出しジャンケンのように最後に秋冬のパンを振り返ってみました。2019〜2020年の秋冬にお別れをして、4月、やっと気持ち新たに春モードにチェンジ出来そうです!

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