花井悠希の朝パン日誌 vol.62 そう、出会いは突然に…〈skywalker bakery & cafe〉と〈osanji time.〉 LEARN 2020.01.30

「雑司が谷の手創り市に一緒に行かない?」と、友人からひらりと届いたお誘い(正確にはピコンと届いた通知)。この「手創り市」は、雑司が谷にある〈鬼子母神堂〉と〈大鳥神社〉をメイン会場に、月に一回、朝から開催する手作りのものが集うマーケットです。テーマはその時々によって変わるのですが、私の出身大学が〈鬼子母神堂〉の裏だったこともあり出掛けたことがありました。以前はパン祭り。朝からすごい人で、少し出遅れて11時くらいに行くと完売続出だった記憶があります。今回のテーマは、冬の陶器市。1月だったこともあり、どうやら出店する作家さんの陶器でお雑煮もいただけるらしい。少しのんびりした気持ちで出掛けてきました。

ワークショップ形式でお餅を焼きます。
ワークショップ形式でお餅を焼きます。

好きな器を選び、朝日をたっぷり浴びながらお雑煮。最高ではありませんか。お腹も心も満たされたところで、「手創り市」を散策。陶器市がテーマだったので、陶器ばかりかと思いきや、普段の「手創り市」のように、手作りのものもいろいろ並んでいます。と、そこで見つけてしまったのです、パンコーナー!パンもあったのねー!聞いてないぜーー(ただの予習不足)。

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ゆったりお雑煮食べていたし、結構売れちゃっているのではないか!?少しの焦りを抱きながら、恐る恐るショーケースやテーブルの上をのぞくと、まだパンたちが待っていてくれました(そう見えた)!ほっ。そして、素敵なパン屋さんに出会えたのです。

珠玉のマフィンたち…〈skywalker bakery〉

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素敵なパン屋がたくさん出店されている中、ひと際目を引いたのが〈skywalker bakery〉さん。木枠のショーケースに、ジュエリーのようにキレイに並べられたマフィンたちに目を奪われた瞬間、私の行動は早かった。5mはゆうに離れていたのにも関わらず、ひゅるりとその身を翻し、ショーケースの前に目にも止まらぬ速さでかけつけました(※あくまでもイメージです)。お話を聞くと、静岡県から「手創り市」のためにいらしたそう。見れば見るほど、どの子も主役オーラを放ち、私の優柔不断は翻弄されます。

「焼き芋のマフィン」
「焼き芋のマフィン」

でもやっぱりこの子は外せませんでした。「いま流行りの甘味が高くねっとりとした焼き芋をそのまま入れています」って聞いちゃったら、抗う方が罪ってものです(大袈裟)。ほんのり温めていただきます。生地はふわっとしなやかかつ繊細な口当たり。たんぽぽの綿毛が草原を転がるように、ふわりふわりと弾みます(急にメルヘン)。奥行きのあるコク深い甘さが口どけにのっかるようにじんわりと広がると、あれ…?どこかで食べたことのあるような味わいがしてきました。そうだ、カステラです。そこにねっとり甘い焼き芋がこっくりとした甘い生地に加勢すれば、懐かしいような、でもどこか新しいような(どっちだ!?)。

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生地の間を抜ける空気からもコクのある香りがして、口内でハムハムと何度も何度も何度もバウンドさせたくなります。もれる空気すら美味しいのです。表面の焼けた部分のカリカリした香ばしさまで味方につけたら、もはや向かうところ敵なし。焼き芋に目がないあなたもそうじゃないあなたにもきっと、同じ熱量で“美味しい”を届けてくれるはずです。

「チョコバナナカスタード」
「チョコバナナカスタード」

こちらはチョコ!チョコ!!チョコ!!!(しつこい)。生地のほろっと柔らかな口当たりは、チョコレートが入ることによってさらにしっとり感が増しているように感じます。焼き芋の子がフワフワ系だとしたら、この子はもう少し落ち着いたおしとやか系。繊細な口溶けです。でも人は外見じゃわからないんですよ(パンだけど)。内側に抱え込んだバナナは、おしとやかとは言い難いエネルギーに満ち溢れています。その目覚ましい主張は外側の生地にまで香ってくるほど。まだ表面あたりで、中のバナナゾーンまで少し距離がありそうなのに。バナナの自己主張のエネルギーはあなどれません。

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チョコレートの森の中、バナナの香りを嗅ぎ分けてようやく到達した真ん中には、とろりんとしたカスタードが待っていました。シュークリームの中のようなハラハラするほどとろけるカスタードじゃなくて、わずかにコシを残したというか、ほんの少し重さのあるカスタード。だから舌と生地の間を流れるのではなく、絡みながらしっかりと己の痕跡を残していくんですね。中央には、生地にまで香ってきていたバナナも待っています。しとやかな生地ととろりんカスタードと華やぐバナナの果肉感、異なる3つの質感と香りの違いがあって楽しいマフィンです。

穏やかな香りに包まれて…〈osanji time.〉

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こちらは大宮にある焼き菓子のお店。シフォンケーキやパウンドケーキ、クッキーなど、さまざまな素材を組み合わせて作る焼き菓子たちは、どの子も興味をそそられるものばかり。近づいてじーっと説明書きや名前を見ていたら(恐らく結構な前屈みスタイル)色々と説明してくださり、ますますどの子も美味しそうに見えて迷ってしまいました。

「ラムりんご」
「ラムりんご」

その中から、朝パンにもなりそうなパウンドケーキを。朝から思いっきりお酒が使われているチョイスかーい!と思われそうですが、「生地やりんごのキャラメリゼに、ふんだんとラム酒を使っているけど、結構穏やかな感じなんです」と聞いて、なんかそそられちゃったんですよね。オーブンで焼いている間に、熱でじっくり時間をかけて刺激が飛ぶのかなー?その飛んだアルコールがオーブンの中でモワンと膨らんで、それをまた生地が吸ってまろやかに落ち着いていくのかなー?なんて想像して、じゅるり。
包みを開くとラムの香りがほわり。でも決してお色気ムンムンな強さはなく(勝手に洋酒の香りはそういうイメージ)、穏やかに立ち上がります。あぁいい香りー!って顔をうずめたくなるくらい、柔らかなラムの香りに心が緩んでいくよう。小麦の甘みが広がると、口どけのいい生地がラムを口内にゆっくりと移していくようにしっとり溶けていきます。りんごのシャキッとしたアクセントと、わずかに苦みも感じるキャラメルの甘みがアクセントになって、まろやかなラム酒風味の生地と共に優しい印象を届けてくれるパウンドケーキです。

せっかくなので、母校にも寄り道して1枚撮ってもらいました。
せっかくなので、母校にも寄り道して1枚撮ってもらいました。

お日様の下、のんびり歩いてとても気持ちのいい時間を過ごせた「手創り市」。実際に作ってらっしゃる方と近距離で会話が出来たり、直接オススメしてもらえたり。どうやって作っているかまで聞けちゃうのは作り手さんが直接販売をするマーケットならではですよね。目の前のパン達への想いはさらに膨らんでいくばかり。3割増しで可愛く思えるし、美味しく感じます。次回の「手創り市」は3月15日(日)とのこと。お散歩がてら、一期一会の出会いを探しに出掛けてみませんか?

お知らせ!

バレンタインの2月14日(金)、表参道ヒルズで開催される「地チーズ博」のハナコラボトークショーに出演します。コチラからにて随時更新されるのでチェックしてみてください。

■前回の記事「世界でも珍しい「もち小麦」を知っていますか?…〈manon〉と〈BREAD STORY〉」はコチラから

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