花井悠希の朝パン日誌 vol.4 夏の大人と子どもたちに捧ぐ…〜〈カフェ マメヒコ〉と〈ピカソル〉〜 LEARN 2017.08.07

パンを愛するヴァイオリニスト花井悠希(はないゆき)がお届けする「朝パン日誌」、第四回。
夏だーー!夏が来たぞーーーー!!8月に入り、夏も歌でいう"大サビ"に差し掛かりました。盛り上がりは最高潮。公園からは、夏休みに入った子供たちの明るい笑い声や掛け声が聞こえてきます。あぁ、すっかり大人になってしまったなぁ…(とうの昔に)。今回は、夏に遊び疲れた子供たちも大人たちも、みんなが笑顔になれちゃうパンをご紹介します。

ズルいビジュアル…〈カフェ マミヒコ〉の「円パン」

ビジュアルがズルいほどかわいい粉もの代表といえばパンケーキですが、それにも負けずとも劣らないビジュアルのパンに出会ってしまいましたよ。

〈マメヒコ〉の「円パン」
〈マメヒコ〉の「円パン」

このビジュアルは、絵本の中のまあるく焼けたケーキに目を奪われたことのあるあなたも、インスタ映えが頭をかすめちゃうあなたも、みんな心惹かれてしまう絵力があります。お店では自家製岩塩バターを載せて提供されるこちらの「円パン」、実は店頭でお持ち帰り販売もしてくれるんです。3個で900円。

せっかくですもの。お店に習って、トーストして、てっぺんにバターを鎮座させてみましょう。えぇいっ!奮発して、エシレバターのせちゃう!

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|バターがよく染み込むように十字の切れ込みを入れて|

なんて美しい佇まいなのでしょう!ここはちょっと、ナイフとフォークで頂くとします。トーストしたので、表面は硬めになっているかな?と思い、ぐっと手に力を込めナイフをいれると、いとも簡単に、すっと抵抗なくナイフが入っていく。その無抵抗な柔らかさにまず驚き。フォークとナイフで頂く、心地よい緊張感と共に、いざゆかん。背筋を伸ばして口へと運びます。

生地はみっちりと密度は高め。その密度を楽しむように味わえば、高級低反発まくらのように押しては返すなだらかな弾力に酔いしれます。生地の甘さや小麦の香り方、柔らかさは、食パンに近い。

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ほわんほわんとしつつ、しゅんと溶ける優しい口溶け。そこに、蜂蜜をたらりと滴らせば、抜群の吸収力をみせてくれます。

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密度高く繊細な生地が、じゅんじゅんとハチミツを吸い込み、口内でじゅんわりと広がっていく。このハチミツのキャッチアンドリリースは、とろけちゃうこと間違いなし!

お持ち帰りの醍醐味=自分だけのアレンジ♪

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次の日は、イングリッシュマフィンのように横半分に切って、バターと餡子で。トースト加減も食パンをトーストするぐらいの焼き色で。少しカリッとした部分をつくると、この生地の柔らかさがさらに引き立ちます。

カリっとからの、極上のビロードを撫でるような、リッチと繊細さが同居する舌触り。このコントラストもまたいいのです。円パン自体はシンプルな味わいになっているから、アレンジは無限大。お店ではサンドイッチもあるみたいです。

お持ち帰りして自分だけのアレンジで「朝円パン」してみませんか?きっと、気持ちいい1日のはじまり、はじまり・・・♪

大人だって子どもに戻りたい時もある…〈Picassol〉の「パンケーキ」と「ピュールマン」

代官山と中目黒の間、槍ヶ崎の交差点にある〈ピカソル〉。

ここの「サヴォア・デ・フェルメ」というソフトクッキーが好きで、この辺りを通ると、かなりの確率でお店に吸い込まれるのですが、今回はそのクッキーではなく、パンテイストのものをご紹介します。

「キャラメルりんごのパンケーキ」
「キャラメルりんごのパンケーキ」

手にしてみると重みもあり、きゅっと詰まった生地のようだったので、温めて頂きました。人の手で1つ1つまとめたんだろうなと感じる、ゴツゴツとした外見は、さながら自然界にあるべき姿のよう。その姿からは素朴さだけじゃなく、無骨なかっこよさすら感じます。
そこに、鋭利なナイフはなんだか違う気がして、手で半分に割ってみました。

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ゴツゴツした岩肌とは裏腹に、いとも容易くほろほろと崩れる生地は、口に含めばしとしとと、なめらかに溶けていきます。その生地のほどけ方はスコーンのそれに少し似ているかな?

ヨーグルトやクリームチーズが入っているからか、生地自体にまろやかなコクがしっかりありつつも、後味は軽やかな印象で、決して重くないのが優しい。そこにキャラメルソースと、シャキッと感が残されたりんごが、美味しいリズムを与えてくれます。私が例え3歳だったとしても(地球がひっくり返ってもありえないけど)きっと大好きだろう、素直に"美味しい"を感じさせてくれるパン。

「ピュールマン(バナナレーズン)」※日替わり
「ピュールマン(バナナレーズン)」※日替わり

|こちらはよりふわふわ食感で、口どけもさらに軽やか。小麦粉じゃなく強力粉が使われていると書いてあったので、てっきりもっと力強いタイプかと思いきや、むしろエアリーな仕上がり!でも表面のゴツゴツした素朴さはこちらにも健在です♪表面はサクッとした薄いヴェールがかけられているよう。そのサクッを抜けると、ほわっとした柔らかな生地に出会えます。

はぁぁぁ、なんてバナナの良い香りなんだ!

そっと抱きしめられるようなあたたかな香り。ほわっとした柔らかな生地に、あたたかなバナナの香りだなんて、優しさを感じずにはいられません。幼い頃こんなの食べたなぁって、脳が幼き日の光景を投写してきます(実際食べたか食べてないか関係なく)。心に沁みるんだよなぁ。

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小さなお子さんにも安心してあげられる材料しかつかっていないから、お母さんも安心。しかもこのピュールマンは、牛乳・卵・バターも使っていません。子供が大人になった時、こうして優しい味わいのパンに出会って、小さな頃こんなの食べた気がするなって、思い出すって素敵だなぁ。そういう、記憶が繋がっていくのっていい。味覚にも記憶は宿るはず。私もいつか子供が生まれたらここのパンを子供と半分こして、美味しいねえって牛乳片手に食べたい。(妄想が過ぎる。笑

ふと手を止めて、すっかり大人になった私たちも、時には〈ピカソル〉のパンやクッキーの優しさに、身を委ねてみてはいかがでしょうか?

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