豊かな未来のために、今、みんなで考える。 「親世代に、意見を押し付けられることがストレス。」4人の賢者が答える、未来のための相談室。 SUSTAINABLE 2022.07.25

全ての人が尊重される未来の実現のためには、わたしたちの悩みの解決も大切な一歩なはず。すぐには解決しなくても、どう考えればいいのかだけでも、教えて賢者たち!

Q.1 「親世代に、自立した女性として扱ってもらえないことがモヤモヤ。」

無3題

「女性は結婚すると夫の家庭に入る」「嫁になる」という考えにすごく違和感があります。夫の両親も嫁は家に入り、家業を継ぎ、後継ぎを産む、それが当然だと考えています。私は男女は平等であり、嫁としてではなく一人の自立した女性として扱われるべきだと考えていますが、親の世代の価値観は違うようで、行動を制限されたり意見を押し付けられることがストレスで、早く自由になりたいです。 (chia/27歳)

A.1 鈴木涼美「小鳥のさえずりと思って聞き流しましょう。」

世代を跨ぐ会話は異文化交流であると考えると少し気が楽になります。常識だけでなく制度や法律すら常に変わっていくもの。時代の空気感がたった10年でも大きく違うのは、昔のTVコマーシャルや雑誌を見れば自明です。そして人はどうしても自分が最も吸収力のある時に浴びた文化に愛着を持っています。あなたが親世代の理想を「うわ、不快だしダサい」と思っているのと同じように、親世代にはあなたがエイリアンに見えているかもしれないし、あなたより20歳年下の人にあなたの生き方は「うーん、古いわぁ」と思われるかもしれません。

人を傷つける態度を取ったり、明らかに間違いが指摘されている認識を持っていたりする場合は根気強く話して変わってもらうことも重要ですが、好みや理想に関しては、わかってもらえなくて当然とどこかで思っておくことです。「そういうお考えを持っているんですねぇ、それもまた素敵ですねぇ、ま、私は違いますけど」という心持ちで、前近代を生きる親世代の悪口くらいは、小鳥のさえずりと思って聞き流しましょう。

A.2 太田啓子「自分と次世代に目を向けるのも一案です。」

そんな価値観を押し付けられ、苦痛ですね。「そういう価値観では私は幸せではないので!」とあっさり伝え、「女らしさ」「男らしさ」にとらわれない暮らし方をしている子供世代の暮らしが幸せであることを親に具体的にアピール。それでも理解されず押し付けが続くならあとは距離を置く…ということができれば一番いいですが、できないからお悩みなのでしょうね。

夫さんはどうお考えですか?夫さんから「僕たちのやり方があるんだ、僕たちはこれでいいんだ」と両親に伝えるのは難しいですか。親世代に理解されることに重きを置きすぎないことも大事かと思います。「昔の人の理解には限界があるんだ」と割り切り、親世代にわかってもらおうと消耗するより、自分と次世代に目を向けるのも一案です。

A.3 イシヅカユウ「押し付けから早く自由になること」

このようなつまらない「べき」に付き合わなくてはならないこと、心より同情致します。私もあなたの考えに完全に同意します。具体的にこう対処するのがいいというようなベスト回答が思いつかなくて申し訳ないのですが、あらゆる手を尽くしてこんな押し付けから早く自由になることこそ、そうする「べき」と思います。

Answerers

◆吉村泰典(よしむら・やすのり)/産婦人科医師・慶應義塾大学名誉教授・ウィメンズ・ヘルス・アクション代表。生殖医療の第一人者として、不妊症、分娩など数多くの患者の治療を担当。ウィメンズ・ヘルス・アクションのメディア「わたしたちのヘルシー」(https://watashitachino-healthy.com/)にて、心と体の話を始めるきっかけを発信している。

◆太田啓子(おおた・けいこ)/弁護士。神奈川県弁護士会所属。明日の自由を守る若手弁護士の会(あすわか)メンバーとして、主に離婚、セクシャルハラスメント、性被害などの案件を手がける。近著に『これからの男の子たちへ「 男らしさ」から自由になるためのレッスン』(大月書店)など。

◆イシヅカユウ/モデル・俳優。1991年生まれ。2021年に、文月悠光の詩を原案とした短編映画『片袖の魚』で主演としてスクリーンデビューを果たす。雑誌やCM、ショーなどさまざまな媒体で活躍中。体が男性として生まれながら女性のアイデンティティを持つMtFであると公表している。

◆鈴木涼美(すずき・すずみ)/社会学者・作家。1983年生まれ。慶應義塾大学在学中にAVデビューしたのち、東京大学大学院を修了し、日本経済新聞社記者を経て作家に。書評から恋愛エッセイまで幅広く執筆。近著に『ニッポンのおじさん』(角川書店)、『娼婦の本棚』(中央公論新社)など。

(Hanako1210号掲載/illustration : Suzu Saito text & edit : Rio Hirai, Uno Kawabata (FIUME Inc.))

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