Women's Work Style “私らしく”生きる女性たち。#03『体のサイクルを理解し、共有できる社会に。』ayameブランドプロデューサー・髙木麻衣さん SUSTAINABLE 2021.06.20

誰かが生きづらい世界ではいつかきっと、自分もつまずいてしまうだろう。そのことに気がつき、動き始めている3人の姿。今回は、ayameブランドプロデューサー・髙木麻衣さんにお話を聞きました。

生理期間の過ごしやすさに四代にわたって向き合う。

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髙木麻衣さんが手にしているのは、自身が手掛けた「ayame」の吸水ショーツ。ブランド名は、彼女の祖母であり会社の二代目代表だった髙木アヤメさんに由来している。アヤメさんは、日本で初めて〝アンネナプキン〞という紙ナプキンが発売された1960年代に「女性目線で、本当にはき心地の良いショーツを届けたい」とサニタリーショーツの開発を始めた。

麻衣さんは、「孫である私のことも子供扱いせずに対等に向き合うちょっと厳しいおばあちゃんでした。現場の人にはよく声をかけて慕われていて、今思えば先進的なビジネスウーマンでしたね」と思い出を振り返る。「女性の過ごしやすさ」にかける祖母の情熱は、代々受け継がれてきたようだ。麻衣さんは他業種を経て、〈タカギ〉に入社。初めは三代目の父と共に、会社が長年培ってきた素材開発やパターンのノウハウを注ぎ込んだブランド「アロマティック」の立ち上げに携わった。

「メイドインジャパンにこだわった上質な下着を作り上げたけれど、女性にとって1カ月の中で生理期間は7日間近くある。その期間をいかに過ごしやすくできるかという課題からは逃れられません。フェムテックという言葉が少しずつ浸透して、昔と比べて格段に選択肢が増えました。私はただ“楽”なだけではない、きちんと健康面に配慮ができて地球にも優しいもの、そして女性が生き生きと活躍できることを願うブランドを目指したんです。私も祖母が信じていたように、うちの会社なら今の時代に合った良いものが絶対に作れると思った。そうして生まれたのが『ayame』です」

正しい性の知識を、次の世代へと繋げる。

2018年には、地元の小学校で高学年に向けて性教育の講義を行う「ハッピープロジェクト」を立ち上げる。「私自身、女子校に通っていたということもあり、生理についてオープンに話す環境で育ちました。だから夫やそれまでお付き合いしてきた人に自分の生理について話すことに抵抗がなかったんです。でも周りは同じような女性ばかりではなかった。生理や性にまつわる事柄がクローズドな話題である事実に、ある種のカルチャーショックを覚えました」。

生理用品を扱う会社として社会に貢献するために始めたプロジェクトは、女子生徒を対象にスタートしたが、今は男子生徒も対象だ。「女性は自分のホルモンのバランスを理解して、働き方やスケジュールをコントロールすることでより力を発揮できる。そして男性も女性の体のリズムを正しく理解し、オープンに話すことができれば、みんなが働きやすい環境を作っていけると信じています」。最初はクスクス笑いが広がっていたという講義も、回数を重ねて徐々に反応が変わってきたという。

1年目は、講義後のアンケートに「生理や体のことについて相談できる相手がいない」という回答が見られたのが、「次の年には、そう答える人がいなくなったんです。講義をきっかけに、自分の体の悩みや不安を共有していいんだ、と思ってくれたのならうれしい。これからも続けていきたい」と話してくれた。正しい知識を身につけ、課題を社会で共有する。その上で、自分に合ったアイテムを取り入れる。麻衣さんは祖母からバトンを受け取り、次の世代へと繋いでいる。

【Biography】

・2006ー同志社女子大学卒業。大手ホテルに入社し、フロントで勤務。
・2009ーホルモンバランスを崩したことをきっかけにシフト制勤務形態に限界を感じ、大手商社に転職。
・2014ー〈タカギ〉に入社。第一子を出産。
・2017ー第二子を出産。
・2018ーCSR活動として「ハッピープロジェクト」をスタート。
・2019ー〈タカギ〉の代表取締役副社長に就任する。
・2020 「ayame」スタート。
・2021 第三子を出産。

Profile…髙木麻衣(たかぎ・まい)

〈タカギ〉代表取締役。「ハッピープロジェクト」や「ayame」を通して、社内でSDGsを積極的に推進する。

(Hanako1197号掲載/photo : MEGUMI, text : Mariko Uramoto edit : Rio Hirai(FIUME Inc.))

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