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2021.06.14

第99回 Women's Work Style “私らしく”生きる女性たち。#01『知識と想像力で、相手を思いやる社会へ。』インティマシー・ コーディネーター西山ももこさん

誰かが生きづらい世界ではいつかきっと、自分もつまずいてしまうだろう。そのことに気がつき、動き始めている3人の姿。今回は、インティマシー・ コーディネーターの西山ももこさんにお話を聞きました。

制作現場で持った違和感が専門職を目指すきっかけに。

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ヌードやセックス描写などセンシティブなシーンを専門に起用されるインティマシー・コーディネーター。世界でもまだわずかしかいないこの肩書きを持つのが、西山ももこさん。制作現場で、俳優と監督の仲介役として交渉や演技の手助けをしている。「監督の撮影イメージ、やりたいことをヒアリングし、それを俳優に伝え、境界線を確認し、同意を取るのも大事な仕事の一つ。

よく、“女性の俳優の意見だけを聞く人”と思われがちですが、ジェンダーにかかわらず、すべての俳優に寄り添い、監督のやりたいことを近い形で実現できるように調整しています」西山さんはアフリカロケのコーディネーターとして長いキャリアを重ねているが、ある違和感を持ったことが、インティマシー・コーディネーターを目指すきっかけになった。「視聴者の知識や認識はアップデートされているのに、制作に関わっている人たちの中には、昔の感覚のままだな、大丈夫かなと思うことが多々あって。いまだに自分や相手の容姿をいじってウケを取ろうとする人がいたり、センシティブなシーンに対して『体当たり!』『ついに脱いだ!』といった見出しをつけて宣伝したり。それって本当に必要?って。人を傷つけない表現は絶対にあると思ったし、俳優が納得して撮影に挑む環境を作ること、そして視聴者が安心して観られる映像作品に携われたらと思うようになりました」

規定のトレーニングを受けた後、日本をベースにさまざまな作品に参加。ただ、認知度はまだ低い。制作現場では“表現が規制されるのでは?”と懐疑的な声が上がることも。「私は監査役ではないのでクリエイティブに口出しすることはありません。むしろ、監督が描きたいものをどこまで叶えられるか、表現の可能性を広げるために一緒に考えます。アクションや殺た陣てのシーンで専門家の監修が入るのと同じです」実際に西山さんが携わった現場では「演技に集中できる」「モニターチェックの負担が減った」といった前向きな意見が出ているという。

「日本の映像業界はまだまだ男性が多く、女性や新人は声を出しにくい。だから、私が中立の立場で意見を伝える。大事なのは『この表現は問題になりやすいのでこうしたらどうですか?』と専門的な観点で意見していると伝えること。そうすることで耳を傾けてもらいやすくなりました」

知識と想像力で、相手を思いやる社会へ。

映像倫理の世界では、昨日までOKだったことが、今日NGに変わることもある。だから、常に情報のアップデートが大事、と西山さん。「でも、それはこの職業に限った話ではないですよね。ジェンダーやセクシュアリティハラスメントは知識がないために起きてしまう場合が多い。知らなかったではダメなんです」そして、辛い思いをしているのは女性だけじゃない、と続ける。

「男性、LGBTQ、ノンバイナリー、いろんな人がそれぞれの立場で苦しんでいる。だから、もうジェンダーでくくる時代ではないんだと思います。どれだけ正しい知識を持って、相手の立場に立ち、想像力を働かせられるか。そうすることで人は優しくなれる。正直、私はまだそんなに優しくなれてないけど(笑)、いろんな人にとって風通しのいい場所を作ること。それが私の目標です」

【Biography】

・1986ー体を動かすのが好きで、ダンスを習い始める。
・1994ートム・クルーズに恋をして、英語の勉強に励む。
・1996ーアイルランドの高校・カレッジへ留学。アジア人がまだ少なく、マイノリティの立場を強く意識するように。
・2001ーチェコの芸術大学に留学。ダンスを軸に表現活動を学ぶ。
・2008ー日本に帰国。翌年、アフリカ大陸を専門とするコーディネート会社に就職。
・2016ーフリーランスに転向。月1~2回海外ロケに行く日々。
・2020ーインティマシー・コーディネーターの資格を取得。

Profile…西山ももこ(にしやま・ももこ)

テレビや映画などのコーディネートを行う。初のプロデュース作品に映画『であること』(2020年)。

(Hanako1197号掲載/photo : MEGUMI, text : Mariko Uramoto edit : Rio Hirai(FIUME Inc.))

編集部
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