My Sustainable Life File#2 【サステナブルな暮らし #2】ニットクリエイター・蓮沼千紘さん『ベランダ菜園とコンポストで食の循環を自由研究。』 SUSTAINABLE 2020.11.03

豊かな未来が続いていくよう、生活に創意工夫を凝らすこと。それは、積み上がっていく効果や新しい循環に喜びを感じられて自分自身も心地いい習慣に。自然体で楽しむ4人の暮らしを覗かせてもらいました。今回ご紹介するのは、ニットクリエイター蓮沼千紘さんです。10月28日(水)発売 Hanako1190号「気持ちいい生活の、選びかた。」よりお届け。

究極の地産地消を自宅にいながら実現。

廃棄される予定の服飾資材を材料にしたり、リサイクルをテーマにした作品を発表したりしてきた、ニットクリエイターの蓮沼千紘さん。循環や再生への意識は、ニットにとどまらず食生活にも向けられていた。

人の行き交う駅前に位置するマンションの階。蓮沼さんが暮らす部屋は、外の世界とは異なる穏やかな空気が漂う。その理由はベランダの鉢に野菜やハーブが生い茂り、蓮沼さんがせっせと土いじりをする姿が、農園をイメージさせるからだろう。「コロナ禍の今年月、ウイルスや菌について調べる中で、微生物のいる土壌に興味を持ちました。ちょうど、生活の中でなぜこんなにゴミが出るんだろう?と思っていたとき。微生物の力で生ゴミを処理できるコンポストに魅力を感じました」

そして住んでいる市の助成金を利用して(自治体により助成があるかは異なる)、生ゴミ減量乾燥機を購入。乾燥させた生ゴミを有機堆肥として土に返し、その土で作物を育てて食べる、循環生活が始まった。むいた野菜の皮や種、傷んでしまい取り除いた部分などのゴミがぐっと減り、捨てるストレスが軽減。ゴミ処理にかかるエネルギーやコストを抑えられている実感も、環境にいいことをしているうれしさにつながった。「食べ物で体は作られているから、完全無農薬のとれたての野菜が食べられることも喜びだし、冷蔵庫の中が野菜でいっぱいにならないこと、買い物へ行けないときのセーフティネットになることなど、メリットはすごく多いと感じています」

1.プランターや鉢でハーブや野菜を自家栽培。

自宅で野菜を栽培、収穫、調理、生ゴミを土へ。おいしくて幸せな循環ベランダに棚を設置し、ハーブゾーン、野菜ゾーンなどと大まかにエリアを分けながら栽培。虫除けになるミントやマリーゴールド、土へ窒素を送り込んで栄養を多く取り込めるクローバーを近くに植えて、環境をさらに良好に。

2.成長した無農薬野菜を、キッチンのすぐ横で収穫。

この日はラディッシュ、ケール、茎ブロッコリーを収穫。珍しい野菜も繰り返し収穫でき、配送コストがかからない点もうれしい。全部使い切らない場合は、根付きのまま水につけて保存袋に入れておくと、新鮮さがキープできる。

3.味濃く育った作物はシンプル調理で十分美味。

蓮沼千紘さん

収穫した野菜は無農薬のため虫がいる可能性もあるので、葉野菜をさっとゆでてからサラダに。いい土のせいか味が濃く、蓮沼さんはシンプル調理が増えたそう。緑に囲まれたベランダランチと安心安全野菜で心も体もクリーンに。

4.調理中に出た生ゴミは乾燥させてコンポストへ。

野菜くずは、〈島産業〉の生ゴミ減量乾燥機「パリパリキューブライトアルファ」へ。約4時間後には乾燥し、においや虫の発生と無縁になる。これを米ぬかと一緒に土へ埋めて2週間おけば、生ゴミが分解され、栄養たっぷりの土が完成。

5.プレゼントをもらったときのリボンなどを編んで雑貨へリメイク。

蓮沼千紘さん

作品発表のほか、“編む”を主体に活動する蓮沼さんは、ひも状の素材さえあれば指で編める手法、「リモワニット」を提案している。家にある素材と指だけでバッグやコースターが作れるのが魅力。蓮沼さんは、作品作りでも、廃棄される予定の服飾資材を引き取って材料にし、ロスを減らすことに貢献している。

6.レジ袋や紙袋もフルーツネットやベジベッドになる。

蓮沼千紘さん

紙や袋、ビニールといった平面的な材料も、帯状にカットすれば、編んで雑貨にできる。カットしたレジ袋を混ぜて作ったフルーツネットは、硬い場所に置いておくと傷みやすいバナナの保存に便利。同じくカットした紙で作ったベジベッドも、保存場所に敷けば野菜の傷み防止に。冷蔵庫の野菜室でも活躍。

Profile…蓮沼千紘(はすぬま・ちひろ)

/ハンドニットブランド〈an/eddy〉を手がける。国内外で個展を行い、独創的な作品は雑誌や広告、アーティストの衣装などに幅広く起用されている。〈UNIQLO TOKYO〉で開催中のサステナブルがテーマの展示も話題に(11月中旬まで開催予定)。

(Hanako1190号掲載/photo : Akiko Baba, Aya Sunahara, Kyosuke Azuma)

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