ハナコラボSDGsレポート 100年の歴史を持つ和紙工房の新たな挑戦。廃棄された野菜や果物から紙を作り上げる〈Food Paper〉 SUSTAINABLE 2021.09.23

ハナコラボ パートナーの中から、SDGsについて知りたい、学びたいと意欲をもった4人が「ハナコラボSDGsレポーターズ」を発足!毎週さまざまなコンテンツをレポートします。第43回は、エディター、ライターとして活躍する大場桃果さんが、廃棄された野菜や果物から紙を作る〈Food Paper〉に取材。伝統工芸士・紙漉き職人の五十嵐匡美さんとブランディングを担当する安田昌平さんに話を聞きました。

息子の自由研究を参考に、野菜や果物を使った紙作りに挑戦。

福井県越前市にある、五十嵐製紙の工房の様子。
福井県越前市にある、五十嵐製紙の工房の様子。

ーー〈Food Paper〉を手がける五十嵐製紙は1919年創業の老舗だと聞きました。長い歴史のある工房がこのように新しい取り組みをすることになった経緯について教えてください。

五十嵐さん:きっかけとなったのは、福井県が主催する経営とブランディングの講座でした。無事に創業100周年を迎えることができたけれど、日本の住環境が変わって襖紙や壁紙の需要が減りつつある中で、何かしらの工夫をしないと続けていけないかも…という危機感があり、講座に参加したんです。そこで現在〈Food Paper〉のディレクションを行っている「TSUGI」の方々と出会いました。

安田さん:前担当の新山が「食べられる紙を作ってみたい」と相談したところ、五十嵐さんが「実は息子が食べものから紙を作る研究をしている」とおっしゃって。“食べられる紙”ではないけれど、面白そうだなと感じて案を進めることになりました。

五十嵐さん:そのプランを二人で発表したところ最優秀MVP賞を獲得し、2020年2月に開催された〈中川政七商店〉さん主催の大見本市に商品を出さないかと誘っていただきました。それから大急ぎで〈Food Paper〉のコンセプトを固めて商品を作っていきましたね。

よく見ると、みかんの皮のような粒が残っているのがわかる。
よく見ると、みかんの皮のような粒が残っているのがわかる。

ーーなるほど。和紙業界では、原材料の不足も課題となっているそうですね。

五十嵐さん:そうなんです。和紙作りには楮(こうぞ)や三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)といった植物が使われるのですが、山地の開発に伴って自生している量が減ってきています。それに加えて、生産農家さんの高齢化も影響しています。最近はクマがよく出没するため、危険を避けて山へ入らないという人も。人の命に関わる問題なので、私たちも「取りに行ってください」と強くお願いすることもできなくて…。

ーーそれは福井県周辺に限らず、全国的にそうなのでしょうか。

五十嵐さん:はい。他の和紙産地も同じ悩みを抱えているようです。

ーーだからこそ、これまでとは違う材料を使った紙づくりがキーとなったわけですね。〈Food Paper〉の商品を作るにあたってハードルになったことはありましたか?

五十嵐さん:どういう商品群に落とし込むかはとても悩みましたね。考えた末に、多くの方に手に取ってもらいやすい紙文具にしようということになりました。

匡美さんと次男の優翔さん。彼が小学生の頃に毎年続けていた自由研究が〈Food Paper〉のアイデアの元となった。
匡美さんと次男の優翔さん。彼が小学生の頃に毎年続けていた自由研究が〈Food Paper〉のアイデアの元となった。

ーー野菜や果物を紙にする工程で難しさを感じたことは?

五十嵐さん:それは意外とすんなりできました。なぜかというと、息子の自由研究があったから。食材ごとの特性や強度は彼が調べてくれていたので、それを参考にしながら商品を作っていきました。

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