伝えたかった、言葉たち。 山崎怜奈の「言葉のおすそわけ」第16回 LEARN 2022.03.18

アイドルとしてはもちろん、ラジオパーソナリティとしても大活躍。乃木坂46の山崎怜奈さんが、心にあたためていた小さな気づきや、覚えておきたいこと、ラジオでは伝えきれなかったエピソードなどを、自由に綴ります。

(photo : Chihiro Tagata styling : Chie Hosonuma hair&make : Yu Kuroda)

「居場所」

嫌なことを考えないような環境に自分を持っていくことができれば、人はかなり生きやすくなると思っている。例えば、暇だと嫌なことに脳が時間を割いてしまうので、鬱になりがちなときほど走りに行った方がいい。脳にどうでも良いことを考える隙を与えないためには、どこに向かうべきか足を動かしながら考えるのだ。
個人的には運動が好きではないので、「お金をかけずにすぐ始められる趣味」の代替案として、クイズをするようにしている。何かを覚えようとしているとき、人は嫌なことを考えている場合ではなくなる。例えば、退屈に気づいた途端に早押しクイズのアプリでAIと対決を始めて、勝てばストレス発散にもなる。問題集を読めば知らなかった知識と出会って脳が活性化されるので、全知全能でない限り半永久的に楽しめる。

それでも、実際に出題される事柄には際限がないので、学び続けるのは辛いなあと思うこともある。クイズ番組に出ているとき、私は自分でも見たことのない顔をしているらしい。プレッシャーに押し潰されそうになると、苦虫を噛み潰したようなヒドい顔になるし、結果を残せずに敗退が決まると、悔しすぎて眼球が一点を見つめたまま動かなくなる。MPとHPの消費が激しすぎて、帰ってもすぐには眠れない。ただ結局、正答率が高く調子がいいと、こみ上げてくる達成感と満足感で、何もかも報われてしまうのだ。あのずるい感覚は魔剤のように私を奮い立たせている。

それともう一つ。クイズがきっかけで出会った人たちに会いたいから、頑張れるのだ。「クイズ仲間」は普段全く違う環境にいるので、共倒れすることがなく、利害関係が生まれにくいので揉めることもない。あまり連絡を取らないし、頻繁に会うこともないけれど、テレビやSNSで頑張っている姿を目にすると励みになる。コロナ下になってからは仕事以外で集まることが難しくなり、人によっては1年に3、4回会う程度になってしまった。だからこそ、その一回一回にかなり救われていて、一緒にクイズ番組に出演するときは、個人戦のライバル同士であったとしても全力で応援してしまう。各々が収録に向けて勉強してきているのを察しているからこそ、一人が全力で取り組めば周りも全力になるし、やさしくしたらやさしくされるし、応援したらみんなに応援される。

私は界隈の中では年少だし、知識も瞬発力も度胸も余裕も到底及ばないくせに「クイズ仲間」なんて偉そうなことを書いてしまったが、恥ずかしがらずに言うと、そのくらいこの人たちのことが好きなのだ。一緒にいると前向きでやさしい感情がふわっと開いていく感じがして、おだやかになれるし、そんな自分のことも好きでいられる。DREAMS COME TRUEの『決戦は金曜日』という曲の中に「あなたといる時の自分が一番好き」という歌詞があるのだが、まさにその感覚なのだ。

人には次々と出会いが訪れるし、その都度いろんな人と仲良くなったり、離れたりを繰り返すので、いい意味でどんどん入れ替わる。特に大人になってできていく友達は、みんな自分の世界で忙しいから、ずっとべったりなんてことはない。でも交わっていく中に、損得では動かない、どちらか一方が辛いときには励まし合える間柄が、ゆるい繋がりの中に生まれることもある。そんな居場所があるということが救いになるし、頑張ってる姿をちゃんと見てくれているかもしれないから、明日もまたコツコツ前進しなくては。

【追伸】
『ザ・タイムショック2022』3月30日放送です、ぜひご覧ください!

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