ゲストのお悩み、解決するのはこの一冊! 高山都さんのために選んだ一冊とは?/木村綾子の『あなたに効く本、処方します。』 LEARN 2019.05.19

本屋B&Bのスタッフ、木村綾子さんが各回さまざまな業界で活躍する「働く女性」をゲストに、今のその人に寄り添う本を処方していくこちらの連載。記念すべき第1回目は、10代の頃からの付き合いだという高山都さんをゲストに招き、プライベートな話題にまで踏み込んだカウンセリングが繰り広げられました。

今回のゲストは、モデルの高山都さん。

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インスタグラムで紹介される料理やうつわから、フルマラソンも3時間台で完走してしまう本格的なランニングまで。彼女が発信するライフスタイルは、多くの女性の憧れに。昨年秋には、自身2冊目となる著書『高山都の美食姿2「日々のコツコツ」続いてます。』(双葉社)も出版。

久しぶりに会うというふたり。まずはお互いの近況を報告!

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木村綾子(以下、木村)「都ちゃんとは、考えてみたら10代の頃からのお付き合いだから、もう20年近くお互いを知ってることになるんだよね。」

高山都(以下、高山)「そうそう。同じ雑誌の読者モデルをやってて。綾子ちゃんは大学一年生でもう東京にいたんだけど、その頃私はまだ高校生で大阪にいたから。上京して初めて会ったときのことは、すっごく覚えてる!」

木村「でも実は、雑誌に出てた頃ってあんまり接点はなかったよね。こうしてお互いの話をしたり、仕事できちんと関わったりするようになったのって、みやこちゃんが一冊目の本を出した頃からで。」

高山「うん。お互いに昔から知ってたけど、知り合ったって実感はここ数年だね。」

木村「私は20代の前半をモデルとタレントをしながら、大学・大学院で文学の勉強をして過ごして。30代に入る頃からは執筆業や本に関わるお仕事がメインになってきたわけだけど。都ちゃんは、ずーっと、表に出る仕事を続けてるよね。でも、見てきた中で今がいちばん忙しそう!」

高山「そうなの。おかげさまで今は、モデルとしてお洋服やメイクを見せる仕事に加えて、趣味の料理とかランニングとか、お気に入りのモノとか、“自分の生活を見せる”こともたくさんさせてもらえてて。”芸を肥やしにする”じゃないけど、今はプライベートを全部出してるって感じかな。」

高山さんのお悩み、その1。「世の中のイメージが、どんどん素敵に。」

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木村「でもさ、プライベートと仕事がそこまで地続きだと、辛くなるときない?ガラス張りの部屋で生活してるみたいな(笑)」

高山「そのガラス張りの例え、ぴったりかも!二冊目の本を書いた時なんか、当時の彼と別れたことも書いたからさ。あの時は自分のこと、テイラー・スウィフトなんじゃないかと思った。」

木村「テイラー・スウィフト?」

高山「そう、彼女は失恋の度に曲を書いてて、自分の傷を全部作品にしちゃうから。ちょっと大げさだけど、私もそうやって昇華しなきゃなって思えたの。」

木村「ポジティブに捉えられてきたんだね。」

高山「あ、でもね。ブランディングが思いのほか上手くできてしまったせいか、知らないうちに世の中のイメージが、どんどん素敵になっちゃってて。最近はそこのギャップにも悩んでる。」

木村「なになに?自分で自分の首を締めてるってこと?」

高山「そう、不器用とかガサツみたいなイメージが、まだ世間には届いていないみたいなんだよね。」

木村「私、都ちゃんのSNSを好きで見てるんだけど。それこそインスタより前の、ブログの時代から。実はふと、「あれ?なんか、都ちゃん変わった?」って思った時期があったんだ。」

高山「え、どういうこと?」

木村「表情も言葉も等身大っていうか。ちゃんと高山都から発せられてるなって、感じたタイミングがあった。」

高山「たしかに昔は、自分らしさよりも、「見られたい自分」みたいなものに意識が向いちゃってて。他人と比べたり、足りない部分を隠そうとして背伸びしちゃってたりしてた部分があったのかもしれない。」

木村「でも今の都ちゃんって、すごく風通しのいい顔をしてるの。自分だけじゃなくって、相手にも誠実でありたいっていう気持ちさえ伝わってくる感じ。」

高山「それすごく嬉しいな。30代に入ると大概のことは「あははは~」って笑い飛ばせるくらいの余裕ができたから。その頃から、人との付き合い方とかもいい様に変わっていったのかもしれないね。」

それを聞いて、木村さんが処方した本は…『わたしの容れもの(角田光代)』

『わたしの容れもの』(幻冬社文庫)
『わたしの容れもの』(幻冬社文庫)

木村「都ちゃんはこれからもっともっと、自分の言葉で伝えていく仕事が増えていくと思うのね。そういう意味では、角田光代さんの書くものは、都ちゃんの道しるべになってくれるんじゃないかな。」

高山「角田さんの本って、まだ読んだことなかったな。」

木村「この作品は、老いとともに変化していくカラダを、おもしろい!新発見!っていう好奇心とともに綴ったエッセイ集なんだけど。私たちって、いわゆる“アラフォーの衰え”を感じはじめる年頃じゃない?でもさ、劣化する自分も、新しい自分って捉えられたら、ずっと楽しんでいられるって気付かせてくれて。」

高山「その発想は素敵だね。私が料理とかに意識を向け始めたのも少なからず、カラダを気遣う気持ちがあってのことだったのかもしれないな。」

木村「角田さんってね、昔から9時5時で仕事をする人なの。会社員じゃないから時間には自由が効くはずなのに。他にも、ランニングやボクシング、ジム通いも20年近く続けてて。やると決めたことを守り続ける姿勢も素敵なの。」

高山「運動もする方なんだ!私も結構走るから、共感しながら読めそう。」

木村「都ちゃんも、続けるってことを大切に生活してるもんね。きっと、私たちの少し先を生きる先輩の姿として、たくさんヒントをもらえると思うな。」

高山さんのお悩み、その2「一人称って、ころころ変えてたかも。」

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木村「そういえば。都ちゃんって、自分を「私」って呼んだり「みや」って呼んだりするじゃない?あれってどういう感覚で使い分けてるんだろうって、実は気になってたんだよね。」

高山「たしかに。私、一人称って、今までころころ変えてたかも。」

木村「SNSでは“私”とか”ワタシ”とか。昔、“みやれ”って書いてたのも可愛かった。」

高山「うーん、“ワタシ”って書くときは素の自分を出したいときかな。等身大の自分を出す時は”ワタシ”だけど、もうちょっと硬い文章や、丁寧に伝えたいなって時は”私”。」

木村「それおもしろい!響きになれば同じ“わたし”でも、漢字やひらがな、カタカナと変えるだけでニュアンスも変わるし、自分の意識も変わるんだね。」

木村さんが処方した本は…『完璧じゃない、あたしたち(王谷晶)』

『完璧じゃない、あたしたち』(ポプラ社)
『完璧じゃない、あたしたち』(ポプラ社)

木村「これは、友情や憧れ、恋愛まで、いろんな関係性にある女性同士の物語が23個入った短編集。ひとつめの物語は、まさにいま話してた“一人称”がテーマになってるの。対自分、という関係を持て余している悩みを、“どの一人称で自分を呼んでもしっくりこない”っていう切り口で描いているのがおもしろいんだよね」

高山「女同士の関係って複雑だもんね。友だちって言っても、そんな簡単な言葉じゃ説明しきれない、いろんな感情をお互い持った上で成立してる。時期によって親密なときもあれば、喧嘩したわけでもないのに疎遠になったりもする。何かしら不満はあるけど、十分満たされてるようにも思える、っていうか。」

木村「そうなんだよね。タイトルの“完璧じゃない”って言葉がまさにそれを表しててさ。“完璧ではない”っていう否定にも、“完璧じゃない!?”って肯定の意味にもとれる。そういう、もろくて複雑なわたしたちをこそ、愛しくも思えるんだよね。」

高山さんのお悩み、その3。「ひとりで飲んでると、寂しくなっちゃう。」

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木村「都ちゃんといえば、いつも友だちと楽しくご飯食べてるイメージもあるんだけど。ひとりの時はどうやって過ごしてるの?」

高山「SNSを見たりとかかな?でも金曜の夜とかにあんまり他人のことばかり見過ぎると、なんだか寂しくなっちゃうし(笑)」

木村「外に飲みに行ったりとかは?」

高山「外飲みもするよ。仲の良いお店があるから、ひとりでもよく行く。」

木村「適度にかまってくれて、適度にほっといてくれるお店っていいよね。」

高山「あと、帰りとかにふらっと立ち寄れるお店とかも好きかな。やっぱり、家でひとり飲みだと、どうしても悲しくなっちゃうから(笑)」

木村さんが処方した本は…『酔って言いたい夜もある(角田光代)』

『酔って言いたい夜もある』(幻冬社文庫)
『酔って言いたい夜もある』(幻冬社文庫)

木村「また、角田さんの本になっちゃうんだけど。これはね、角田さんと同世代で魅力的な仕事をしている女性——魚喃キリコさん、栗田有起さん、石田千さん、長島有里枝さんとの対談集なんだ。レストランや居酒屋で、テーマも決めずに、ほろ酔いで気ままに交わした会話が楽しめるの。そのゆるい雰囲気が、なんだかとても心地良くて。」

高山「それ楽しそう。酔ってるときの会話って、おもしろいもんね。」

木村「この対談って、角田さんが38歳の時に行われたものなのね。私たちと同じ頃に、彼女たちがどういうことを考えてたのかも知れる。あと女二人で飲めば自然と…って感じで、恋バナも満載なんだけど。本の中から聴こえてくる恋バナだから、いい感じの距離感があるし。そういうところも含めて、晩酌のお供にぴったりだと思うんだよね。」

高山「恋の話ってやっぱりいいよね。ほんと、いくつになっても恋愛の悩みって尽きないなって、最近思うんだ。」

高山さんのお悩み、その4。「まともな恋愛が、いつもできない。」

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高山「私、恋愛に関しては結構こじらせ系なの。まともな恋愛とかは、いつもできない。」

木村「好きになると、どうなっちゃうの?」

高山「肝心なこととかが聞けなくなっちゃう。もっと素直にサラッて聞けたら良いのに。好きになればなるほど、肩にも力入っちゃって、「聞けないー!」ってなるの(笑)」

木村「それは、意外だった。みやこちゃん、何でもさばさばと言えちゃう子だと思ってたから。束縛とかもしちゃう感じ?」

高山「束縛はしないし、されたくもないしなんだけど。好きなタイプが「自分の好きな仕事をしてて、ある程度自我もあって」みたいな人だから。それに私自身、ひとりの時間とかも大事にしたいし。まあそれはこじらせるよね(笑)」

木村さんが処方した本は…『漫画みたいな恋ください(鳥飼茜)』

『漫画みたいな恋ください』(筑摩書房)
『漫画みたいな恋ください』(筑摩書房)

木村「じゃあこんな本はどうかな?これは、漫画家の鳥飼茜さんの日記本なんだけど。付き合って1年ちょっとになる彼とのこれからについてや、前夫との間にできた息子との生活、仕事の悩み、親きょうだいや友人関係…。“ここまで書くか!”ってほど赤裸々に綴られてるの。ほんとすごいんだよ。もうね、体の痛いところを自分でえぐって、その血で書いてるようにすら思えるほど!」

高山「え、読みたい!そういうリアルな恋愛本が今の私には必要なの(笑)」

木村「これはネガティブな話じゃなくてさ。人と人って、圧倒的な“分かり合えなさ”と“伝わらなさ”を抱え持って暮らしてるんだなぁ…、とも改めて思ったんだよね。同じもの見ても感じ方が違うのは当然だし、あのとき言葉ではああ言ったけど本音はこうだった、とかザラだし。でも、だからこそ、それでも一緒に居続けることを諦めたくない相手は貴重っていうか。彼女が綴った、何万字もの不満と不安に、なぜか励まされもしたんだ。」

高山「すごいね、いま映画の予告編みたいだった(笑)恋愛って向き合ってる時は楽しいんだけど。向き合ってるようで向き合えてないし、相手のことなんて分かってるようで、実はまったく分かってないのかもしれないね。」

カウンセリングを終えて…

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高山「最初に勧めてくれたのが、やっぱり綾子ちゃん的イチオシな気がするから、『わたしの容れもの』と『酔って言いたい夜もある』は、買おうと思う!」

木村「わ、角田さん二冊だ! 角田さんは、作品が素晴らしいのはもちろんだけど、私は彼女そのものを尊敬してるの。存在してくれてありがとうございます!ってくらいに(笑)」

高山「それはすごい(笑)。『わたしの容れもの』ってタイトルもいいよね。カラダっていうのは容れものにすぎなくて、何を受け容れるかでその人がつくられる。私が大切にしてる生き方にも通じるなって思った。」

木村「“容”って字は“かたち”とか“ゆるす”とも読むしね。」

高山「そうなんだ! 『酔って言いたい夜もある』は晩酌のお供にするね。」

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木村「そういえばこないだ、友達から「本を選んで欲しい」って連絡が来たの。飲みの席とか、大人数でしか話したことなかったんだけど。今日みたいに、何を勧めようかなって気持ちでその人の話を聞いてたら、短い時間で、すごく深く相手のことを知れた気がした。」

高山「本を選べない人って、案外多いんだろうからね。こういうのって嬉しいと思うよ。」

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木村「本って、世界を見つめる視点を与えてくれるものでしょ。お悩みに対しても、自分の意見だけで答えるより、「こんな本があるよ」って差し出すことができたら視野が広がると思うの。死んじゃった人からもアドバイスをもらえる訳だし。」

高山「これって新しい関係の築き方だよね。今回、私も取り繕った話じゃだめだなって思ったし。セルフブランディングに困ってるなんて話、きっと、お酒飲んだくらいじゃ出てこなかったもの(笑)本が会話を引き出してくれたし、本が関係性を密にしてくれたんだと思うな。」

今回、ご購入いただいたのは…

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『わたしの容れもの(角田光代)』と『酔って言いたい夜もある(角田光代)』、『完璧じゃない、あたしたち(王谷晶)』の三冊をご購入。

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カウンセリングを終えた後、実際にの3冊をご購入いただいた高山さん。「読んだら、感想送りますね!」とにこやかに話してくれました。

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