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2022.05.27

第34回 今のあなたにピッタリなのは? 柴田ひかりさんのために選んだ一冊とは/木村綾子の『あなたに効く本、処方します。』

さまざまな業界で活躍する「働く女性」に寄り添う一冊を処方するこちらの連載。今回のゲストは、モデルやフォトグラファーなど、肩書きに縛られない活躍を見せる柴田ひかりさん。彼女の人柄が滲み出たような、やさしくゆる~いお喋りにご注目!

今回のゲストは、柴田ひかりさん。

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原宿でのスカウトをきっかけに15歳から芸能活動をスタート。メンズのアイテムをさらりと着こなすファッションセンスが同性から人気。この日は、パーカーにジーンズという、ゆるっとした姿で現れた彼女。撮影の直前まで、メガネをかけるかかけないかで悩んでいた姿が可愛かった…!

まずは気になる、柴田さんの肩書きについて。

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木村綾子(以下、木村)「柴田さんのことは、担当編集から名前が挙がってから、ずっと気になっていたんです。モデルなの? フォトグラファーなの? 肩書きが分からない感じが面白いなと思っていて」
柴田ひかり(以下、柴田)「確かに、何してる人? っていうのは昔からよく聞かれます。肩書きらしい肩書きもないんですよね」
木村「Instagramなどを見ても、プロフィールのところに何も書かれていないじゃないですか。YouTube や写真アカウントのリンクだけが貼られているけど、そっちに飛んでもそこまでの情報にヒットしなくて。あれはあえてやっていることなんですか?」
柴田「いえ、単純に書くことがないんです(笑)」
木村「え!(笑) てっきり狙ってやっていることだと思っていました」
柴田「モデルだって思ってくれたらそれでいいですし、フォトグラファーだって思ってくれたらそれでいいかなって」
木村「なるほど、どうぞ自由に捉えてください! ってスタンスですね。なんだかゆるくて、いいですね。個人的には、柴田さんのお名前でググろうとしたら、検索予測のところに「何者」って出てきたのが面白かったです」
柴田「ジャンルを問わず、色々なことに挑戦していきたいので、人によって何者か解釈が違うのはそれはそれでいいかもですね(笑)」

エピソードその1「“新しい町の日常” を切り取る」

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木村「カメラはどういうきっかけで始めたんですか?」
柴田「高校の友人がカメラをやっていて、『写ルンです』を使って撮り始めたのがきっかけです」
木村「柴田さんの年齢だと、再ブーム世代ですよね。ちなみに私はもちろん初代ブーム世代。再ブーム世代に「現像するまで何が写ってるか分からないのが楽しい!」と聞いたとき、ジェネレーションギャップとはこのことか!と痛感しました(笑)。ちなみに何を撮ってる時が、一番楽しいですか?」
柴田「旅の様子を写すのが好きですね。“新しい町の日常”とでもいうんでしょうか」
木村「旅は、一人で行く派?」
柴田「はい。知らない場所にも、結構一人で行っちゃうんですよ。電車やバスに乗って、知らない駅で降りて、散歩しながら撮るみたいなスタイルです」
木村「観光地ではなくて、自分でそこの良さを探していくイメージですね」
柴田「そうです。ひょっとすると、現地の生活を感じられる場所が好きなのかもしれませんね」
木村「この街へ行こうって決め手になるのは、どんなことですか?」
柴田「海外に行く時も、向こうに着いてからの予定は特段決めずに行くことが多いです。スウェーデンでは面白うな住宅街を見つけて入って行ったんですけど、アジアの女性って若く見られることが多いじゃないですか。「こんなところで女の子がひとり、何をしてるんだ?!」って現地の人から心配されたりして。きっと変な人に思われていたと思います」

処方した本は…『田辺のたのしみ(甲斐みのり)』

ミルブックス出版/2022年4月初版刊行
ミルブックス出版/2022年4月初版刊行
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ミルブックス出版/2022年4月初版刊行
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木村「著者の甲斐さんは暮らしの中から楽しみを見つけるプロだと思っていて。街の魅力や建築、お菓子、雑貨など、ステキなものを自分の足で稼ぐっていう感じに好感が持てるんです。彼女は私と同郷、静岡出身なんですけど、そんな甲斐さんが、“第二の故郷”と呼ぶ和歌山県田辺市にスポットを当てた一冊です」
柴田「田辺ですか。初めて聞いた地名です」
木村「初めて訪れたときからなぜか懐かしさを感じていたと甲斐さんは書いていて、実際紹介される町並みを眺めてみると、「わかる!」って直感で思えたんですよね。静岡の人ってよく、“のん気だねぇ”って言われるんですけど、おおらかに人を受け止めてくれそうな気配が、そこここに漂っているような気がしたんです」
柴田「“パンダの電車” 可愛いですね(笑)これなんですか?」
木村「かわいいですよね! 特急「パンダくろしお号」ですね。新大阪からこれに乗り込んで2時間ほどで田辺に着くんだそうです。個人商店が軒を連ねる街が目の前に現れる描写があるのですが、なんだか彼女の目線で街歩きを追体験できるようで。普通、知らない街の観光案内って、どうやって楽しんだらいいか分からないものですけど、こうやって信頼のおける人の目線があると行ってみたくなるなって。初めて行く街の日常に触れるのが好きな柴田さんには是非読んでいただきたい一冊です」

エピソードその2「何か取っ掛かりが欲しいな」

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木村「私、Instagramで柴田さんのプロフィールのところから飛べる写真のアカウントを見ていて、ああ、好きだなあと思って。決して専門の知識もなければ、写真集や写真展を積極的に見るタイプでないんですけど、感覚的に私いいなって感じたんです」
柴田「わ、嬉しいです。どういうことを意識して撮っていますか?って聞かれることがあるんですけど、正直すごく感覚的に撮ってしまってるところがあるんですよね。だから、そう感覚的に捉えていただけるのが私も嬉しいなって」
木村「好きな写真家はいますか?」
柴田「「ニューカラー世代」と呼ばれる写真家たちが好きですね。モノクロ写真が主流だった時代にカラー写真を撮り始めた先駆者的な人たちなんですが、スティーブン・ショアやウィリアム・エグルストンの作風には、私も無意識に寄せていってるところがあると思います」
木村「柴田さんの撮る写真って、小説のワンシーンみたいにも見えるんです。物語性を感じるというか。小説とかもよく読まれますか?」
柴田「映画を見るのは好きなんですが、小説はあまり読んだことがなくて…。でも、何か取っ掛かりが欲しいなとは思っていました」

処方した本は…『百年と一日(柴崎友香)』

筑摩書房出版/2020年7月初版刊行
筑摩書房出版/2020年7月初版刊行
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筑摩書房出版/2020年7月初版刊行
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木村「著者の柴崎さんは学生時代から写真を撮っている方で、新刊を出すと写真展も開いたりするので、柴田さんにとってまさに取っ掛かりになるような小説家だと思います」
柴田「あ! 映画化された『寝ても覚めても』の方なんですね」
木村「そうです。『きょうのできごと』とかも映画化されているので、映画からもアプローチできますね。他には、パノラマ写真が写す景色の歪みをヒントにした『パノララ』や、場所や時間や写真をモチーフにした『春の庭』などオススメは沢山あるんですが、この本には一編が短い小説が33編入っています」
柴田「入口としてはぴったりですね。写真家の紡ぐ物語、気になってきました…!」
木村「柴田さんのお写真って、断片的に切り取った人や景色が多いじゃないですか。私はその断片に物語を想像したので、柴田さんには、『百年と一年』で切り取られた時間や記憶の断片に、景色を想像していただきたいなと。気負うことなく小説世界に入っていけるとも思いますよ」

エピソードその3「ほんと、何でも食べますよ」

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木村「柴田さんは、お料理はされるんですか?」
柴田「う~ん、オシャレなものとかは自分ではあんまりです。けど、“腹を満たすためのもの”くらいでしたら…!」
木村「(笑)。旅好きとのことでしたが、外食はどうでしょう?」
柴田「外でご飯を食べるのはすごい好きです。非公開ですが、こっそりとグルメアカウントを作ったりしながら楽しんでいます」
木村「グルメアカウントいいですね。何がお好きなんですか?」
柴田「ほんと、何でも食べますよ。カレーも好きだし、中華も好きだし…!あ、最近、ナチュール系のお店を巡るのにもハマっています」

処方した本は…『おいしいもので できている(稲田俊輔)』

リトル・モア出版/2021年3月初版刊行
リトル・モア出版/2021年3月初版刊行
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リトル・モア出版/2021年3月初版刊行
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木村「カレーが好きで、何でも食べるという頼もしい発言から、最後にこの一冊を紹介します。〈ERICK SOUTH〉っていう南インドカレー店のオーナーでもある稲田さんは、どんな食べ物にも喰いついて、「おいしさ」をトコトン暴きだす天才なんです。この本には、ご飯が好きな人がご飯について思うときの偏愛と執着、忙しさや面倒くさい頭の中が描かれているんです」
柴田「頭の中の、面倒くささですか?」
木村「幕の内弁当を食べる時の、手を付ける順番どうしようとか、配分どうしようとか。 それが「幕の内大作戦」というタイトルのもと、熱く、暑苦しいくらいに描かれています。あとは、カツカレーがどうしてみんなに愛されているのかが分からない、とか」
柴田「カツカレーを敵に回す人、初めて聞きました(笑)」
木村「でもね、すごい熱量で訴えてくるから「分かった分かった」ってなっちゃうんですよね(笑)食にまつわる“こじらせエッセイ” って言ったらわかりやすいかな?」
柴田「『孤独のグルメ』の、あの感じですか?」
木村「そう! 頭の中がダダ漏れになってる、あの感じ!」
柴田「ふふふ。「ホワイトアスパラガスの所存」っていうタイトルを見つけました」
木村「ご飯食べてる人の頭の中を覗くという意味では面白いと思います。あと、これを踏まえて、〈ERICK SOUTH〉に行けば、なるほど彼の究極のこだわりはこの味なんだ!と舌で確かめられると思いますよ」

話題は、「今後のやってみたいこと」へ。

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木村「今後はどういったことに挑戦していきたいですか?」
柴田「う〜ん、そうですね。とりあえず、現状の維持を!」
木村「いいですね、すごくいいです(笑)」
柴田「最近、低速化し始めているんですよ。二十歳前後の頃は自分でもアグレッシブだったと思うんですけど、最近はちょっと落ち着きすぎてしまって…(笑)」
木村「25歳でそれを口にする柴田さんは、やっぱり只者じゃないですね。今、私の中での柴田さんに対する高感度が爆上がりしています(笑)」
柴田「あ、でも写真やお洋服作りなど、ものを作ることが好きなので、今やってることはちょっとずつ良くしていければいいなとは思っています。写真展も近々できたらいいなと思っています」
木村「写真展は過去何度開催を?」
柴田「4回です」
木村「ってことは、学生の頃から?!」
柴田「高校生の頃からです」
木村「今日、柴田さんとお話をしてみて、その飾らない感じや等身大の姿勢が人を集める魅力なんだろうなと感じました。たぶん、今までで一番ゆるいお喋りでしたけど、不思議と気持ちはほくほくしています」

対談を終えて。

柴田さん

対談後、『田辺のたのしみ』と『百年と一日』を購入してくれた柴田さん。「普段、自分では探し出せない本を処方していただいて、楽しい時間でした」と話してくれました。YouTubeで公開しているVlog『Peep inside head #29』には、今回の取材の様子もちらりと。是非チェックを~!

YouTube(Peep inside head)

撮影協力:〈二子玉川 蔦屋家電〉

木村綾子
木村綾子 / 文筆業・企画

COTOGOTOBOOKS(コトゴトブックス)という本屋をはじめました。作者と読者のつながる場所を提案していきます。  」

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