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2022.02.16

今のあなたにピッタリなのは? 衣装デザイナー・しげたまやこさんのために選んだ一冊とは/木村綾子の『あなたに効く本、処方します。』

さまざまな業界で活躍する「働く女性」に、今のその人に寄り添う一冊を処方していくこちらの連載。今回のゲストは、衣装デザイナーのしげたまやこさん。今を時めくアーティストのステージ衣装から、下北沢の非公認キャラクターにいたるまで。たくさんの作品を手掛ける彼女に、これまでのキャリアやお仕事の進め方などを伺いました。途中、私たちが愛してやまないみうらじゅんさんの話で盛り上がる一幕も。

今回のゲストは、衣装デザイナーのしげたまやこさん。

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しげたまやこ(1984年8月14日)は、日本の衣装デザイナー、着ぐるみ・パペット制作者。京都府東山区出身。本名は非公開。主な作品は、CHAI、私立恵比寿中学のステージ用衣装や、野性爆弾・くっきー!の「皮膚タード」など。尊敬する人物に、みうらじゅんを挙げている。※唐突なWikipedia 形式の紹介文が気になった人は、この記事の「エピソードその1」をご覧ください♡

まずは、しげたさんの自由な創作スタイルについて。

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木村綾子(以下、木村)「しげたさんとは、前回ここに来てくれたCHAIのユウキちゃんと、漫画家のマキヒロチさんと一緒に、焼肉を食べた仲なんですよね」
しげたまやこ(以下、しげた)「あれって2年くらい前でしたっけ? 下北沢でいっぱいお肉を食べましたね(笑)」
木村「あの時は “衣装を作っている” とだけ聞いて、私はてっきりスタイリストさんなのかなと思い込んでいたのですが、実際はもっと職人に近いお仕事をされているということを後から知りました。普段はどんなものを作られているんですか?」
しげた「ひと言でいうと、“モリモリ”としたものが多いですね」
木村「え、モリモリ!? オノマトペで自分の職業を表現する人、初めて会いました(笑)」
しげた「アハハハ!えーっと、着ぐるみやパペットみたいにモリモリしたものをよく作ってます。主に布物全般が守備範囲ですね。美術とかでも「いけそう?」って聞かれて、いけそうだったら「やれ…ます! やります!」みたいな」
木村「いけそうだったらやる(笑)。なんだかすごく頼もしい存在ですね。実は編集さんから聞いたんですが、下北沢の「しもっきー」も、しげたさんが手掛けたんですって!?」
しげた「え、しもっきーご存知なんですか!? あれ、私にとっての “初着ぐるみ” だったんですよ」
木村「すごい!!! もちろん知ってますよ。私がまだ下北沢で働いていた頃、駅前でお披露目会がおこなわれて。その現場にも遭遇してました(笑)。あれはどうやって舞い込んできたお仕事だったんですか?」

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しげた「しもっきーって、下北沢に本社がある音楽レーベル「UK.PROJECT」に所属しているんですけど、社長さんと飲み屋でよくご一緒していたこともあって、それまでも何度かお仕事をいただいていたことがあったんです。「バンドのグッズ、手作りで1,000個つくれる~?」とか、「うちのカフェの椅子、全部貼り替えられる~?」みたいな具合に」
木村「なんだか、愛のある無茶ぶりでいいですね。すごくフリーランスっぽいです」
しげた「そしたら、ある日、別の方から「しげたさん、着ぐるみ作りたくないですか?」って電話がかかってきたんです。「私、作ったことないですよ?」って答えたら、「あれ、お家以外は作れるって聞いたんですけど…」って言われて!」
木村「すごいやりとり(笑)。きっと社長さんが「しげたさんは何でも作れるから」って、社内で宣伝してくれていたんですね」
しげた「そうなんです。私、UKの中でどうなってるの!? とか思いながら、どうにかこうにかカタチにしたのが、“あの子” なんです」
木村「“どうにかこうにか” で完成させてしまうあたりが、聞いていてさすがだなと思いました。ちなみに、着ぐるみって量販店で売ってる材料で作れるんですか?〈オカダヤ〉とかで」
しげた「はい、買えますよ。ただ、当時は今ほど情報がオープンじゃなかった時代なので、なかなか簡単には調べにくくて。「着ぐるみ 業者 制作風景」とかで検索して、WEBサイトの小っちゃい写真を拡大しながら、手探りで見つけ出していましたね。「この容器はあそこの糊っぽい」とか言いながら」
木村「すっごい! 我らがしもっきーは、そんな謎解きみたいな方法で仕上げられた、大作だったわけですね」

エピソードその1「私、〈風とロック〉箭内道彦さんのところで働いていたんですよ」

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木村「しげたさんのお仕事での初制作って、どんな作品だったんですか?」
しげた「たしか「グループ魂」の“台”だったと思います」
木村「グループ魂の台!? また突拍子もないワードが出てきました(笑)」
しげた「港カヲルさんの“ジンギスカンの兜”があったんですよね。「それを美しく飾りたいから、綺麗なものを作って」って言われて。スパンコール生地とかを使いながら装飾したのが、入社して1週間ぐらいの出来事だったかと」
木村「入社? しげたさんって、会社に属されていたこともあるんですか?」
しげた「私、元々は〈風とロック〉って会社で、箭内道彦さんのところで働いていたんですよ」
木村「え! またしてもついていけない展開…」
しげた「新卒で入った〈風とロック〉は、ちょうど会社が初めて新人を取るタイミングだったようで、私は、いわゆる何でも屋さんとして採用されました。雑誌の取材に行ったり、デザインまわりをやったり。当時は、原宿にお店もあったので、そこの店長も兼任していました」
木村「予想外の経歴でした。どういった経緯で受けてみようと思ったんですか!?」
しげた「大学は美大のデザイン科に行ってたんですが、完全に就活に乗り遅れていたんです。大学4年生になっても、やりたいことが見つからなくて…。でもその夏に東京にライブを見に出て来ていて、タワレコでたまたま『月刊 風とロック』を捲っていたら、募集が出ていて。「あ、私、ついに行きたい会社を見つけたかもしれない!」ってひとり盛り上がって。それが初めて書いた履歴書だったんです」
木村「まさに〈風とロック〉との出合いにふさわしいロックなエピソードですね。ちなみに、なんのライブを見に来ていたんですか?」
しげた「ZAZEN BOYSです!」
木村「一貫してる!(笑) ZAZENきっかけで風とロックに入社して、初制作がグループ魂の台って!美しいほどなんにもブレてないです」

処方した本は…『ジャップ・ン・ロール・ヒーロー(鴻池留衣)』

新潮社出版/2019年1月初版刊行
新潮社出版/2019年1月初版刊行
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新潮社出版/2019年1月初版刊行
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木村「バンドの存在が人生を変えるきっかけになってきたしげたさんには、まずこの本を。これは「ダンチュラ・デオ」というバンドの顛末を描いた小説なんですが・・・。しげたさん、最初の数ページを捲ってみてください」
しげた「え!何ですか、これ。ひょっとして、ウィキですか!?」
木村「そうなんです。前代未聞の“Wikipedia 小説”。まず、出身地やジャンル、活動期間、レーベルなどの基本情報が載っていて、続いて「1 来歴」「2 キャラクター設定」「3 音楽性」「4事件」「5 著作権」・・・というように、ウィキペディアの形式に則ってバンドの歴史が語られていくんです」
しげた「面白い! 私、ウィキ読むのめっちゃ好きなんですよ。すっごい長いのとか、虚実入り乱れている感じとか、「あ、作者変わったな!」みたいなことを察しながら読んでくと面白いですよね」
木村「まさにまさに、その感覚も味わえますよ。そもそも〈僕〉たちが組んだダンチュラ・デオってバンド自体、過去に存在していた同名バンドを模倣したという設定なんですが、果たしてそんなバンド本当に存在してたのかってことすら疑わしくなっていくという展開で」
しげた「・・どうしよう本当に好きになっちゃったら。音源も聴けない、写真も見れない。辛くなるかもしれない(笑)」
木村「さらに面白いのは、ダンチュラ・デオのボーカル、つまり語り手が〈僕〉というアーティスト名だというところ。つまり、本来客観的に綴られるはずのウィキペディアが、〈僕〉という一人称で読める。「そのとき僕は〜〜〜」みたいな」
しげた「仕掛けが張り巡らされていますね。こんな小説初めて知りました!ワクワクします」

エピソードその2「CHAI、くっきー!、コムアイ…。衣装製作秘話」

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木村「次は、アーティストの衣装製作が、どのように進んでいくのかをお聞きしてみたいです」
しげた「たとえばCHAIの場合は、直接メンバーと話すんですよ。楽曲はもちろん、CDのジャケットを含めたアートワークまでを自分たちで作っているグループなので、既に頭の中にもイメージがあるんです。「今回はピンクの、濃いやつで!」っていう風に、いっぱいリクエストをしてくれます」
木村「イメージの断片を聞き取ってカタチに起こしていくんですね」
しげた「はい。1聞くと、4返してくれるので、「ちょっと待って〜」とか言いながら必死にメモってます(笑)」
木村「誰かがイメージのラフを描いたりすることもあるんですか?」
しげた「私やユウキが描くこともあるのですが、資料の写真を指差しながら、「丈はこれくらいかな」、「ボリュームはこんなもんかな」って言いながら決まっていくことが多いですね。CHAIはデザインが決まるのがいつもすごく早いですね」
木村「なるほど。他の方はどうですか?」
しげた「例えばくっきー!さんからは、手描きのイラストやイメージ画像がポンッと届いたり、コムちゃんとは初対面の挨拶が「私ね、サナギから蝶になりたいんです。作れますか?」だったり。きゃりーぱみゅぱみゅさんのバックダンサーさんの紅白の衣装を作ったときは、「どんなに激しく踊っても、着ぐるみの羊の執事の頭が飛んでいかないようにお願いします!」でした(笑)。みなさん忘れられない発注の台詞が多くて、最高です」

処方した本は…『伝わるノートマジック(西寺郷太)』

スモール出版出版/2019年7月初版刊行
スモール出版出版/2019年7月初版刊行
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スモール出版出版/2019年7月初版刊行
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木村「アーティストのイメージの断片を、カタチに。その工程にはメモが必須だと思います。この本は、ノーナ・リーヴス西寺郷太さんの頭の中を覗ける一冊。西寺さんはご自身のバンドをはじめ、アーティストへの楽曲提供や、マイケル・ジャクソンやプリンスの研究家としても有名ですが、西寺さんって、アイデアをまとめる時やラジオ出演時に必ずレジュメを作ってるんです。それらが元となっているんですが、これまた中を見てみてください」
しげた「うわ、すごい! 手書きのノートがそのまま載ってるんですね!」
木村「そうなんです。見開き1ページに収まるように、思考が整理されているんです」
しげた「西寺さんのラジオを聴いていると、きっとマメな方なんだろうなとは思っていましたが、あの流暢なおしゃべりの手元にはいつもこれがあったわけですね」
木村「まずはこんな風に愛着を持ってノートを作り、一度身体に染み込ませることで、いざ本番!というときにアイデアを取り出しやすくするそうなんですさらにこの本では、ノート作りのメソッドも記されているので、しげたさんも倣ってみたらいかがですか?」
しげた「ぜひ真似したいですね。私はいつもうにょうにょ文字だから、こんな風に、人に見せられるメモを取れたことがないです(笑)いやほんと、眺めているだけでも見惚れてしまいますね」

エピソードその3「ゆるキャラ生みの親として意識せざるを得ない存在」

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木村「しもっきーというゆるキャラの生みの親として、さらに着ぐるみ製作者として、やっぱり意識せざるを得ない存在、ありますよね…?」
しげた「あ、もしかして・・・みうらじゅんさんですか?」
木村「ですです!(笑)もうお会いしました?」
しげた「まだ、ないんです!! でもみうらさんのことは昔から本当にすごく大好きです。それこそ、〈風とロック〉に入社した時に、先輩のデスクを引き継いだんですけど、引き出しを開けたら、取材で撮ったみうらさんのポラが入っていて・・・。入社以来、それをずっとデスクに飾っていました」
木村「またしてもエモい(笑)。でも間違いなく、しもっきーのことは伝わってますよね」
しげた「ひー! 怖いけど、でも知ってくださっていたら嬉しいですね。実は私、みうらさんの口から「しもっきー」ってフレーズが出るのをずっと待っているんですよ(笑)もし、何かの拍子に奇跡的にご本人とお会いできたとしても、私から名乗り出るんじゃなくて、どうしても、みうらさんに言ってもらいたいんです。「きみのことは知っていましたよ」って(笑)」

処方した本は…『ない仕事の作り方(みうらじゅん)』

文藝春秋出版/2015年11月初版刊行
文藝春秋出版/2015年11月初版刊行
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文藝春秋出版/2015年11月初版刊行
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木村「今日しげたさんと話している時間のなかで、実はみうらじゅんさんのことが頭をよぎる瞬間が何度もあったんです」
しげた「畏れ多いです・・・!」
木村「いや本当に。いちおう肩書きはあるけど、「いったいどうやって生きてきたの!?」と思わせる存在の魅力とか、「あの人なら面白くしてくれそう」と人に思わせる才能とか・・・。その意味では、それこそこの本のように、しげたさんも『ない仕事の作り方』を地でやってきた方だなぁって」
しげた「めちゃくちゃ嬉しいです。確かに、何でも面白がる性格なのと、そういう素質を見抜いてなのか、「なにその仕事!(笑)」っていう仕事をくれた方のおかげで、今の私があるなと思ってます」
木村「私見たいですもん。みうらじゅん展ならぬ、しげたまやこ展。しげたさんの歴代作品を集めたら、最高に面白い展覧会になると思いますよ!」
しげた「実は歴代作品ってほとんどが一点物でお渡ししちゃうので、あちこちに散り散りになってしまっているんです」
木村「絶対やるべきですよ。歴代作品が一堂に会したとき、しげたまやこという存在がどう立ち上がるか・・・」
しげた「怖いもの見たさはありますね(笑)」

対談を終えて。

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対談後、3冊すべてを購入してくれたしげたさん。「今後も仕事をしていく上で教科書になるような2冊と、スーパー最高な小説をありがとうございました。木村さんだいすき♡」と話してくれました。彼女の個性的な作品が並ぶInstagramはこちらから。さっとスワイプするだけで、きっと見たことある何かが目に入るはず!

Instagram(___shigeta___)

撮影協力:〈二子玉川 蔦屋家電〉

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木村綾子 / 文筆業・企画

COTOGOTOBOOKS(コトゴトブックス)という本屋をはじめました。作者と読者のつながる場所を提案していきます。  」

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