言いたいコト、書きたいコトバ…混じり気ナシ! 弘中綾香の「純度100%」~第62回~ LEARN 2021.11.12

ひろなかあやか…勤務地、六本木。職業、アナウンサー。テレビという華やかな世界に身を置き、日々働きながら感じる喜怒哀楽の数々を、自分自身の言葉で書き綴る本連載。。

(photo : Yasutomo Sampei styling : Chie Hosonuma hair&make : Shiho Kato[PEACE MONKEY])

「見るもの」「出るもの」

「テレビは見るもんじゃなくて、出るもんだ」昔タモリさんがおっしゃっていた。出た方が面白いという意味なのか、それとも出ることを生業(なりわい)にしているという気概から出た言葉なのか、どちらともなのかどちらでもないのか。真意を聞くのも無粋かと思えて、結局聞けずじまいで今日まで来ている。

成り行きながらテレビに出ることを仕事に選んで、少なからずキャリアを経た今でもカメラの前に立つとまだまだ緊張する。と、同時に気合も入る。やるぞ!という気持ちもあるし、失敗しませんように!上手く行きますように!という願いもある。チームプレーの仕事なので、レギュラー番組や、何度かご一緒したことがある方がいると安心できるのだが、新しい番組や初めましての方がいると、場を掴むまでとても緊張する。とはいえ、スタジオに入ると自分の中で自然とスイッチも切り替わって、普段過ごしているテンションよりもずっと高いハキハキした明るい自分が出てくるし、出演者の皆さんについていこうと頭もフルスピードで回転しているのでアドレナリンも出まくりだ。この後どんな質問をしよう、こう聞かれたらこう言おう、と次の手札を考えながらも、口では別のことを話している。もしかしたらほかの方たちはここまで先の手を考えなくても、瞬間的に面白くて気の利いたことを言えているのかもしれないけれど、私はあいにくそういったタイプではなく、色々と先回りして考えておかなくてはいけない。自分の中にちょっとしたプランがあったとしても誰かの一言で流れが大きく変わることも大いにあるし、予期せぬタイミングで「そこ?」ということを聞かれたりしてドギマギすることも沢山ある。毎日頭の中はてんやわんやだ。

放送されるのは編集の手が入って無駄なものを落とした後だから、小手先ちょいちょいで仕事をしているように見えても(見えているのか?)、収録の後は疲れがドッと押し寄せてくるようなことがある。バラエティの収録は面白いし、楽しいし、収録の最中は疲れを感じるなんてことはなく、時間もあっという間に過ぎていく。「は~い、OKです~!」とフロアのスタッフから声がかかって、スタジオを出て楽屋に帰ってきて衣装から私服に着替えた瞬間にやってくるものがある。番組でご一緒しているような皆さんと比べたら私なんて全然忙しくもないし、まだまだ精神修行が足りないと思うのだけれど。気疲れとはまた違う、頭疲れとでも言えるのかな。

帰宅し、部屋着に着替えて、ソファに座る。至福の時間の始まりだ。テレビをつける。なんとなくザッピングして面白そうな番組を見たり、TVerで見逃し配信を見たり、サブスクのドラマを見たり、自分が出ている番組を見たり。「何を今夜は見ようかな」と考える時間も楽しみである。なんだか考えてみると一日中テレビとは切っても切れない生活を送っている。「見るもの」「出るもの」私にはまだ全然割り切れないけれども、なんだか今日も収録に行くのは楽しみだし、リビングのソファが一番好きな場所なのだ。

【弘中のひとりごと】
喉にささった小骨が抜けません…

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