言いたいコト、書きたいコトバ…混じり気ナシ! 弘中綾香の「純度100%」~第53回~ LEARN 2021.06.25

ひろなかあやか…勤務地、六本木。職業、アナウンサー。テレビという華やかな世界に身を置き、日々働きながら感じる喜怒哀楽の数々を、自分自身の言葉で書き綴る本連載。礼儀作法、気をつけなきゃって思います。

(photo : Yasutomo Sampei styling : Yui Funato hair&make : Akemi Kibe [PEACE MONKEY])

「人の振り見て我が振り直せ」

言われることを嫌がっていた言葉たちが、自分の口から自然と出てきたときに、ハッと我に返って驚くことがある。気付かないうちに刷り込まれていた言葉たち。

私の家は礼儀や行儀に対して厳しかった方だと思う。机に肘をつくのは行儀が悪い、誰かのおうちにお邪魔するときは必ず靴下をはいていきなさい、お茶碗のご飯粒を残したままにしない、お金は渡すときももらうときも両手にしなさいなどと、言い出したらキリがないくらい、細かく立ち居振る舞いを注意されてきた。何かそういった行儀の悪いことをすると、「みっともない」とか「だらしない」がすぐさま飛んできて、正しいとされる形にただちに直さなくてはいけなかった。ただ正直なところ、一応従うものの、いちいちうるさいなあ、と思っていたのが事実である。

そんな風に右から左に受け流してはいたものの、いくらかはいつの間にかしっかり私の中に根付いていて、年齢を重ねるにつれて「思う側」になってきたのだから驚きである。言われる側から、思う側へ。もう一歩で指摘する側に来てしまうかもしれない。自分もまだまだ出来ていない部分が多々あると分かってはいるのだが、社会に出て、周りの人たちのそういった部分を見つけてしまうと、おのずと「あ、残念」と思ってしまうのだ。

実際に仲の良い友達の中にひとり、箸の持ち方が変わっている子がいる。一目見ただけで「おや?」と思ってしまうような持ち方、握り拳でお箸を握っているような持ち方をしている。気の置けない友達なので「その持ち方、直した方がいいよ~」と会話の中で何回か指摘したこともあるし、その子自身、自分が正しくない箸の持ち方をしているのは十分自覚済みだと思う。けれども今まで30年近くもの間この持ち方でやってきてしまったから、今さらわざわざ直すのも面倒くさいらしい。今の今までそのスタイルを貫き通してきた。そんな友達に対して、心の底から「ちょっと頑張って直せばいいだけなのに、もったいないなあ」と思ってしまう。別にその子が間違っているからといって仲間外れにすることもないし陰口を叩くこともないけれど、素直にただ残念、と思うのだ。ほんの少しの努力で他の人からの見る目が変わるのに、と。素敵な子なのに、そこだけ切り取られて「行儀が悪い」なんて言われるのは友達として納得できない。

いや、そもそも箸の使い方ぐらいでゴタゴタ言ったり思ったりするのも、もう古いのかしら? 箸の持ち方だって、多様性の時代なのかしら? なんてことをモヤモヤと思っていたら、家族から「(私から)お祝いでもらったお金のお札の向きがそろっていない。こんなことを外でやったら恥ずかしいから、これから必ず気を付けるように」とお叱りの連絡が入った。急いでいたので、銀行で下ろしたままついそろえずにお祝い袋に入れて、渡してしまった。人のことをとやかく言う前に、自分の身の回りをもっとキチンとしなければ…。「人の振り見て我が振り直せ」とは本当によく言ったことわざだ、と身をもって感じた出来事だった。

 
次回:2021年7月9日更新予定

【弘中のひとりごと】
最近ストレスがすべて買い物欲に向かっていて、たがが外れたように買い物をしています。笑

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