言いたいコト、書きたいコトバ…混じり気ナシ! 弘中綾香の「純度100%」~第41回~ LEARN 2020.12.25

ひろなかあやか…勤務地、六本木。職業、アナウンサー。テレビという華やかな世界に身を置き、日々働きながら感じる喜怒哀楽の数々を、自分自身の言葉で書き綴る本連載。今回は2020年ラストの更新。最後に大発表がありますよ!!

「スタートライン」

 テレビ局の年末年始は早い。収録番組はだいたい放送の2週間から1カ月くらい前に撮る。レギュラー番組でも季節を先取りしているが、年末年始の特番ともなるといつもより長尺になったり調整に色々時間がかかったりするので、いつものスケジュール感よりもさらに早めに収録してしまうことが多い。
 だから街がクリスマスモードになるよりもずっと前に晴れ着での収録があったり、年内に新年の挨拶をしれっと言っていたりする。今年はスケジュールの見通しが立てづらいことから例年よりも幾分早いのか、10月の終わりに隣のスタジオで、着物を着たプレゼンターがおせちのお取り寄せの紹介をしていた時はびっくりした。なんてたってまだコートを出す前だったから。自分たちが出る番組の内容を知るのは、ちゃんと企画も台本も出来上がってあとは撮るだけという段階なので、おそらくセットを作る美術さんや小道具さんはもっと前から年末年始特番の準備をしているに違いない。この業界にいると季節感がバグってしまうというのはそういうことなのかも。とにかく年越しに向かって、一段と会社全体がせわしなくなるのが常だ。

 生放送番組を担当していると、より年末に向かってのお祭り感は増してくる。『ミュージックステーション』を担当していた時は、その雰囲気にたまらなくワクワクしたものだった。毎年12月の最後の金曜日に放送するスーパーライブ(もちろん今年もやりますよ!)。いつも収録しているスタジオではなく会場を幕張メッセに移して、その年の音楽シーンを代表する旬のアーティストがこぞって出演する。スーパーライブだからこその大御所アーティストもブッキング出来たりして、準備が間に合うのか?という焦りと緊張と興奮がうずまく独特の雰囲気がいつも流れていた。関わっているスタッフも何百人規模という、まさに年に一度のビッグイベントだった。
 本番2日前から始まるリハーサルに立ち会うため幕張のビジネスホテルに泊まって、朝から晩までスタッフと合宿みたいな生活を送るのも楽しかった。ここでは言えないアクシデントやハプニングも沢山あったけど、ヤバイ!と言いながらどこかそのギリギリ感を楽しんでいるあの雰囲気。私の仕事量なんて周りのスタッフのそれとは比べものにならないほど少ないものだったけど、その一員になれている感覚がうれしかった。この時期になると決まって、あの幕張の空気や舞台裏で待っている時の緊張感、そしてお客さんの熱気を思い出す。

 先日、あるお笑い芸人さんがインタビューの中で「親に、あんたは文化祭みたいなことを毎回やってお金もらって本当に幸せ者ね、と言われるんですよ」と言っているのを聞いた。まさにその通りで、お金もスケールも何倍にもなった文化祭みたいなことを、いい歳をした大人が力を合わせて、必死になって作るのがこの仕事なんだと私は思う。そうして生まれた番組を見て、少しでも多くのひとが笑ったり、感動したり、元気が出たりしてくれたらいいなと願っている。この状況だからこそ、その思いを特に強く感じた一年だった。

 感じることも考えることも変化した2020年が終わろうとしている今、やるべきことの輪郭がぼやっと見えてきた気がする。来年は30歳。ここからまたひとつ、スタートラインに立つことにしよう。

次回:2021年1月8日更新予定

【弘中のひとりごと】重大発表!

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