言いたいコト、書きたいコトバ…混じり気ナシ! 弘中綾香の「純度100%」~第16回~ LEARN 2019.12.13

ひろなかあやか…勤務地、六本木。職業、アナウンサー。テレビという華やかな世界に身を置き、日々働きながら感じる喜怒哀楽の数々を、自分自身の言葉で書き綴る本連載。今回はこの冬の風邪予防法!?について。

「この冬、インドアになる理由」

 最近の私はクラシックづいている。映画、演芸、本、漫画、あらゆるジャンルの「名前は聞いたことあるけど、実際に見たことはない」という「名作」にチャレンジしている最中だ。
 例えば、黒澤映画。この間、アマゾンプライムで人生で初めて黒澤明監督の作品を鑑賞した。『生きる』、素晴らしかった。舞台は戦後まもない日本。けれども今の日本となんら変わらない人間模様がいじらしく、細かなひとつひとつの描写に、ワンシーンも見逃せない。真に迫る演技のなかに、シニカルに笑えるところも沢山あって、台詞のひとつひとつが胸に刺さる。70年近く前の作品とは思えなかった。また別の日には立川談志師匠の高座を映像で見た。こちらも初めて。落語はこれまで滑稽物しか聴いたことがなく人情物は初めてだったのだが、気が付くとホロリときている自分がいた。時間があっという間に過ぎていく感覚。もっと他の演目も聴きたい。本は、向田邦子先生の作品を読み返しているところ。ジャンルを問わず「名作」と呼ばれる作品には現代に生きる私に訴えてくるもの、色褪せない魅力がある。

 そんな名作を見直し始めたきっかけは何だったかというと、一番初めは、共演者の方の会話についていくためだった。深夜のバラエティ番組『お願い!ランキング』内の企画「太田松之丞」でご一緒させていただいている爆笑問題の太田光さん、講談師の神田松之丞さん。本当に幅広いジャンルのエンターテインメントに精通されているお二人。特に落語が(さらに言うと談志師匠が)お好きというのがお二人の共通点で、収録中にしょっちゅうその話が出る。番組の趣旨は、視聴者の方から寄せられた質問に答えるというもの(いつも脱線するのだけれど)だから、派生話ではあるのだが、お二人が話している内容に私は全くついていけなかった。いや、ふむふむ、と聞いてはいられるのだが、感想を伴った意見を言うことができないので、会話に参加できないのだ。せっかくそんな貴重な場にいるのに、とても勿体ない!さらにこれは大人として恥ずかしいぞ、と思った私。少しずつではあるが、お二人の会話に出てきた作品を見るようになった。前文に出てきた作品も全て勧めていただいたものだ。お二人の才能を鑑みれば当然も当然だが、作品の魅力を伝えるのが滅茶苦茶うまい!だから無精な私でも一歩踏み出すことができた。

 一歩踏み出すと、その先が果てしなく続いていることに気づく。まだまだ、にわかもにわか。けれども、名前を知っているだけと自分の感想を持つのでは天と地ほど違う、と気づいた。何事も体験。テレビという日々消費されていくメディアの端くれにいる私にとって、ちょっとしたブレイクスルーであった。毎日流れているものをチェックすることに追われ、より新しいもの、流行っているものを取り込まないと、という今現在にフォーカスした目線に奥行きが加わった感覚。その分、見たいコンテンツが多すぎて、全くもって時間が足りない。この連載の一言コメントで、夏は暑すぎて外に出ない、秋は風邪で家から出ない、などと色々インドアになってしまう理由を並べていたが、この冬は見るものが多くて外に出られなくなりそう。
 風邪予防にもなるし、まぁいいか(笑)。 

photo:moron_non
photo:moron_non

(次回は年内ラスト。12月27日更新予定)

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